モノローグ・ハインリッヒ2
「どうなっている!!」
私は思わず報告書を書斎の机に叩きつけた。
それから私は銀縁眼鏡をはずして机の上に置き、右手人差し指と親指で目を揉んだ。
ジルからの報告書を見て頭が痛くなったのだ。
タイラントにケイゴオクダが滞在しているとの情報を得て、ジルの部隊を急行させたが宿はもぬけの殻だった。
運の良いヤツだ。
タイラントのハゲ散らかした強欲貴族が生真面目にも情報をよこしてきた。
やはりハゲ治療薬のことを仄めかしたのが効いたらしい。モテは貴族社会にとってかなり重要だからな。モテる男の方が出世する。
つまり不摂生な貴族にとって、部位欠損ポーションは喉から手が出るほど欲しい代物なのだ。
それなのに……、ヤツを取り逃がしてしまった。
これでは、私の面目が丸つぶれではないか!!
私は再び頭に血が上り、拳を机を叩きつけた。
「誰かいないか!」
私は大声で使用人を呼ぶ。
ランカスタの各都市に手配書を回すためだ。ジルの部隊も増強する必要がある。
奴の立ち入りそうな町に網を張り、情報があり次第ジルの部隊を急行させるつもりだ。
その間にも数名の斥候部隊に追跡させているのだが、中々尻尾をつかませない。
やはり、ケイゴオクダは只者ではないのかもしれない。
ヤツを賞金首にでもして、賞金稼ぎに狙わせるか? 生け捕りを条件に。
いやいや。
何かの事故で死んでしまってはつまらない。
あまり派手にやりすぎると、別の強欲貴族に部位欠損ポーションのネタがバレる恐れもある。
やはりここは秘密裏に動くべきだ。私が貴族社会で天下を取るにはケイゴオクダが必要不可欠なのだからな。
……少し頭を冷やそう。私は信仰している神ゼラリオンを象ったペンダントを握りしめ、呼吸を整えることにした。
ふう。
いついかなる時も、冷静さを欠いてはいけない。あくまで冷ややかに、強かにあらねば。
他に有効な手立てがないかを考えよう。
重要なのはケイゴオクダの情報を得てからの機動力。
ジルの部隊の機動力上昇のため全兵士に馬を与えるとしよう。
ジルの部隊に拷問部隊を組み込ませ恋人であると報告のあったユリナを拷問。そうすればケイゴオクダも素直に言うことを聞くことだろう。
ゴライアス神父のところにいる、あの狂った小娘などは適任であろう。
フフフ……。我ながらナイスアイデアだ。
私は銀縁眼鏡を再びかけて、右中指で位置を直した。
ククク……。
ケイゴオクダ……、私に煮え湯を飲ませてくれたことを後悔させてやる。絶望に打ちひしがれるがいい!!
私は控えていた配下の者に、機動力確保と拷問部隊の設置を指示したのだった。




