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k-142

 俺とユリナさんは手をつないで、しばらくの間ひらひらと舞い落ちる雪の結晶を眺めていた。



 白く輝く吐息は外気温の低さを物語っているが、不思議と全く寒さを感じない。


 むしろ暖炉にあたっているかのように、心が温かい。


 だが、寒さで彼女が体調を崩してもいけない。


 そろそろ小屋に戻ろうかと思っていると、急に小屋の壁際に積んだ酒樽が豪快な音を立てて崩れ落ちた。


 と同時に、アッシュがこちらに全速力で駆けてきて俺に飛びついた。


 俺はアッシュを受け止め、しりもちをついた。


 アッシュが俺の顔をペロペロと舐める。


 崩れた酒樽の方を見るとマルゴ、ジュノ、サラサ、エルザがいた。


 どうやら、抱っこされていたアッシュが我慢できずに俺の元にふっとんできたようだ。


 バツの悪い顔をしながら、親友たちが近づいてくる。


 アッシュを雪化粧が施された地面に解放すると、まるで俺とユリナさんを祝福するかのように、ぐるぐると駆けまわった。


  近づいてきた親友たちが、俺たちに「オメデトウ」と口々にひやかしの声をかける。


 ジュノとマルゴに至ってはピューピューと指笛まで吹いている。こいつら……、いつから見ていやがった。



 ◇◇◇



 その後、俺とユリナさんの恋バナを酒の肴にドンチャン騒ぎになった。


 こんなに幸せな夜が訪れるとは夢にも思わなかった。


 俺は冷やかされたお返しとばかりに、ムレーヌ解毒草のスープを作らなかった。こんな夜は、二日酔いになるまで飲み明かそう。


 チーズ明太卵焼きが大好評だったので、俺はもう一度作ってテーブルに出す。


 この調子では、鍛冶小屋で眠る女性三人をレスタの町に送り届けるのはどうやら昼を過ぎることになりそうだ。


 俺はヤレヤレと思いながら、暖炉でパチパチと音を立てて爆ぜる薪の炎を見ながら、グイと蒸留酒をロックであおる。


 横に座るユリナさんを見ると、俺の心情を察してくれたのか、彼女も肩をすくめてクスリと笑った。


 ユリナさんがうつらうつらしてきたので、彼女を俺のベッドに寝かせ、温かいレッドグリズリーの掛け布団をかけてあげた。


 するとすぐに彼女は可愛い寝息を立て始める。


 俺もいい加減眠くなってきたので、もうひとつのレッドグリズリーの掛け布団にくるまり暖炉近くで雑魚寝。


 するとアッシュが俺の足元にぴたりとくっついてきた。


 俺は、可愛いアッシュを抱っこして一緒に布団にくるまった。


 なお、マルゴたちの掛け布団はいつも使っている毛皮製のものがある。


 サラサが俺の家に勝手に持ち込んだものである。



 そうして俺は、マルゴたちの陽気な歌声をBGMにいつの間にか意識を手放していた。

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