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【書籍化・コミカライズ化】商社マンの異世界サバイバル ~絶対人とはつるまねえ~  作者: 餡乃雲(あんのうん)


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k-140

 朝早く川へ行き、その場で釣った魚をさばいてみると、たらこに似た味の卵がぎっしりと詰まっていた。



 食中毒対策に魚は一度アイスの魔法で冷凍にして持ち帰った。


 (毒耐性には食中毒の耐性も含まれるので大丈夫だと思うけど、念のため)



 魚を解凍した後、タラコに似たその魚卵は塩漬けに。


 魚肉は刺身で食べる分以外は干物にでもしよう。




 魚の処理をしていると、不意にコートを着た美しいお姉さんが三人、小屋の門前にやって来た。



 何かを訴えているようだが、ランカスタ語がわからない。



 なぜか、アッシュがウーっと唸っている。



 俺はとりあえず近くに行き、ジェスチャーで「何の用ですか?」と聞く。



 お姉さんたちは手を組んで、「助けて!」とジェスチャーをしてきた。



 寒空の中、コートを着ているとはいえ、女性をこのような場所に立たせておくべきではない。



 俺は、暖かい暖炉のある小屋の中に三人を招き入れることにした。



 魚の処理を切り上げ、手を冷たい水でよく洗った俺は小屋の中に入る。



 するとコートを脱いだ薄着のお姉さんたちが暖炉前の切り株イスから立ち上がり、ランカスタ語で「アリガトウ」と言いながら手を握ってきた。



 甘く良い香りがする。



 思わず俺は鼻の下がのびそうになるが自制。全く、目の毒にも程がある。


 俺は、彼女たちを切り株イスに座るよう促す。



 体が冷えているであろう彼女たちのために、俺は暖炉でお湯を沸かし、マーブル草のハーブティをいれた。


 何があったのか聞いたが、どうやら何かから追われて逃げてきたようだ。


 格好からして、歓楽街で何かトラブルにでも巻き込まれたのだろうか。


 鍛冶小屋も空いている。俺は鍛冶小屋の方を指差して、好きなだけ泊まって行って良いとジェスチャーで伝える。



 彼女たちからは、再び「アリガトウ」と言われた。



 いつの間にか、アッシュはおとなしくなっていた。



 19:00

 今日は久しぶりに他人に気を使って疲れたので、俺は早めに眠ることにした。


 外では、彼女たちのために風呂を沸かした。


 俺は先に眠る旨ジェスチャーで伝え、布団の中に入った。


 ふー、落ち着く。俺はこの瞬間が何より好きだ。



 ◇◇◇



 布団に入ると、すぐに眠りに落ちた俺ではあった。


 しかし、唐突に目が覚めた。お姉さん三人が、肌着姿で俺の寝所に入ってきたのである。


 ドアがパタリと閉められる。妖艶な笑みを浮かべ、にじり寄る美女三人。


「ちょ、ちょっと待って……。待ってください!」


 思わず日本語で叫ぶ俺。アッシュは呆れたように鼻を鳴らし、再び布団の上で丸くなる。


 俺と三人が、ギリギリのコントのような攻防を続けていると、急にアッシュが唸りだした。


 ドンドンドン!


 小屋のドアが激しく叩かれる。なんだ?


 俺は、ヘルファイアソードを片手に、ドアを開ける。


 とそこには、モヒカン頭のヤンキーみたいな男がいた。


 モヒカン野郎はスラリと剣を抜き、お姉さんたちを指差し、何かを言いながら俺にガンを飛ばしてくる。


 「俺の女に、よくも手を出してくれたな」という感じだろうか。


 あー。これは、いわゆる美人局ってやつか?


 モヒカン野郎は持っていたポーションビンを前に出してから、これをよこせと言った。


 その時点で、誰の差し金かを察した。


 バイエルン様の、右腕の部位欠損を直したポーションのことを言っていると思われる。だとすれば……。


 俺は一旦外に出て、モヒカン野郎から距離をとる。


 ヘルファイアソードを一閃。火球を飛ばしモヒカン頭に火をつけた。


 悲鳴を上げ、転げまわるモヒカン野郎。


 それからモヒカン野郎は、桶にたまった水に勢いよく頭を突っ込んだ。



 シュー……。



 ――モヒカン野郎はアフロ野郎になっていた。



 アフロ野郎は立ち上がり、「おぼえてろ~!」的な捨てゼリフを吐きつつ逃げていった。


 お姉さんたちを見ると、顔が青ざめていた。


 美人局か……。理解はしているが、どうしたものだろう。


 寒空の中、女性を外に叩き出すのは俺の主義に反する。基本的に俺は女に甘いので、厳しい対応がとれない。



 しばらく途方に暮れていると、馬車に乗ってマルゴたちが現れた。


 マルゴと一緒に乗っていた人物を見て、俺は思わず目を見開いた。

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