k-130
帰宅した俺は、一人布団の中で考える。
人生はウエイトトレーニングのようなものなのかもしれない。
学業もそう。仕事もそう。経験を積むごとに、より重たい荷物を背負い込み、より高レベルな成果をあげることができる。
それと同時に、引き返すこともまた難しくなる。
勤務3年目よりも勤務20年の方が、自ら会社を辞めるのが難しくなるという事象に例えると分かりやすいかもしれない。
この点、恋愛に関してはどうなのだろうか?
恋愛は自由だし、恋愛感情は不意にやってくる。
そして、基本的に年齢は関係がない。いつだって新鮮で、出会いも別れも一つとして同じものなどない。
もっとも、経験を追うごとに自分も相手も傷つかないように。
上手だと自分勝手に思い込んでいるだけの恋愛をするようになっているのも事実だ。
それが果たして、恋愛だと定義してよいものなのかも分からずに。俺はこの年齢になっても未だにその答えを持ち合わせていなかった。
「どんだけ恋愛下手なんだよ……」
俺は自分自身を客観的に醒めた目で見ることができる。頭の中でぐるぐると考えすぎるところも含めて自分なんだということを受け入れている。
こと恋愛においてはストレートに実直に素直に愛情を伝えることが一番相手の心に刺さることが多いこともわかってる。
頭では理屈ではわかっているはずなのに、それができない自分。変なプライドはとっくの昔に捨てた。むしろ根拠のない自信のようなもので闇雲に突っ走るほうがまだ可愛げがある。
そう、ただ臆病なだけなんだ。
俺は自嘲せずにはいられなかった。




