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3枚におろしたトゥカリュスの刺身は丁度皿に盛った状態で2皿ほど出来上がったばかりだった。
俺がやれやれと料理をもって銀縁眼鏡とマルゴの間に割って入ろうとした丁度その時、バイエルン様が兵士のドニーを伴って、馬に乗って颯爽と登場した。
「○××!!!▲■●◆○!!!」
ビシッ! と銀縁眼鏡を指差し、物申すバイエルン様。
バイエルン様がランカスタ語で銀縁眼鏡に何かを諭し始めた。今度は銀縁眼鏡の顔色が悪くなっていった。
マルゴが明らかにホッとした表情になっていった。
俺は丁度良いタイミングかなと思い、バイエルンさんと銀縁眼鏡におろしたてのトゥカリュスの刺身を2皿手渡してあげた。
すりおろしニンニクと塩でご賞味あれ。エールもご一緒にどうぞ。
それを木で作ったフォークで食べる二人。
固まる二人。見慣れた表情だ。
次の瞬間、二人は同時に硬直状態から脱し、木のコップに入ったエールを一瞬で飲み干したのだった。
マルゴの説明によると二人は親子なのだそうだ。つまり銀縁眼鏡も貴族なのか。まあ、町に住まない俺には関係のない話だ。
ハインリッヒ様という名前らしい。
折角なので、バイエルン様とハインリッヒ様、そしてお供の兵士さんも結婚式に誘ってみることにした。
料理に釣られてなのか、貴族二人は首を立てにブンブンと振って俺に握手を求めてきた。
三人で握手を交わす。ほらあれだ。政治家がよくやっているヤツ。三人で同時に握手。
貴族も政治家なのだからあながち間違いではないだろう。
そして俺たちは結婚式の準備を再び始めたのだった。兵士たちの手も借りられたので大助かりだった。
貴族二人は、ブルーシートの上でくつろいでいた。
本来であれば働かざる者食うべからずと注意したところだが、彼らの部下が働いているので、目を瞑ることにした。
風呂も沸かして、レディファーストで入ってもらう。
花嫁衣裳の準備はエルザさんの担当だ。
貴族二人のうち、バイエルン様だけが風呂に入った。風呂あがりの一杯の味を捨てるなんてなんともったいない。
15:00
さて、料理も身支度も準備は整った。俺はマルゴの正装姿という、貴重なものを目の当たりにしている。
サラサの月と同じ蒼色のドレスが美しい。妙に落ち着いた気分にさせてくれる色合いだ。
これがこの世界の結婚式の光景か。
俺は感慨深げにその光景を見ていた。