モノローグ・ザック2
俺はレスタの町でしがない冒険者稼業をしているザックという。
俺はバイエルンのアホ野郎の仕打ちに耐えかねて、拠点をレスタから北のタイラントという街に移していた。
ある時冒険者ギルドのフロントでクエストの掲示板を見ていると、ふいに後ろから声をかけられた。
振り返り、俺は戦慄した。
背後にあのアホ貴族のバイエルンがいやがったのだ。こいつは俺を執念深く追いかけてここまで来たのだ。きっと俺をさらに酷い目にあわせるに違いない。やめてくれ!!
俺は頭から血の気が引いていくのを感じた。
しかしどういうことだろう。いきなりバイエルンは頭を下げてきた。
そして、今までの行いに対する謝罪とともに金貨の詰まった袋を差し出してきた。
困惑する俺。何かの罠かと最初は疑った。だがそういうわけでもないらしい。このアホ貴族に何があったというのだ。
聞けばバイエルンの息子のハインリッヒが仕事を継ぎ、自分は引退したとのこと。自分の今までの行いを見つめなおし、迷惑をかけた者に謝罪をしているところなのだそうだ。
また、ハインリッヒは冒険者ギルドでの冒険者の待遇充実にも力を入れているので、良ければ是非またレスタに立ち寄ってくれないか? と頼まれた。
人ってこんなに変われるものなんだなぁ、と俺はしみじみ思った。
賠償もして謝罪もしてくれたので、渋々だが俺はバイエルンを許すことにした。
レスタの町にはそれなりに思い入れもある。
ダンやカイ師匠。世話になった医者のキシュウ先生。歓楽街のお姉さんたちにもずいぶんと世話になったからな。
武器屋のマルゴから受けた恩もある。
そうだな。少しタイラントでの生活を整理したらレスタの町に戻るとしよう。