モノローグ・バイエルン6
我輩の名前はレスタ・フォン・バイエルン。伝統ある誉れ高き子爵家貴族の一人である。
良かった、どうやら自分の名前が認識できている。我輩はまだ大丈夫なようだ。
冒険者ギルドマスターのシュラクが我輩のところへ謝りに来た。彼の心の内を聞いた。本当に真摯に我輩に訴えかけてきた。
我輩の息子ハインリッヒがどうやら増税で得た収入をモンスター討伐の資金に回すように指示したらしい。
それならばと、シュラクが我輩の復権については待ってほしいと願い出てきた。
シュラクが我輩と皆の間に立たされ、どれだけ辛い思いをしたのかも知った。
シュラクに頭を下げさせるなどとんでもないことである。我輩は、すぐに頭を上げてくれと言った。
心の痛みを知った今だからこそ、彼が受けた苦痛が理解できる。気がつけば我輩の方からシュラクに頭を下げていた。
シュラクが慌てていたが、そんなことは関係なかった。
我輩は人として間違ったことをしていたのであれば、頭を下げるのは当然だと思えるようになった。
我輩はシュラクに今まで苦労をかけたことを、素直な気持ちで謝罪したのだった。
思えば我輩は、ずいぶんと謝らなければならない人間が多いようだな……。
冒険者たちに対してもそうだし、あのケイゴオクダに対してもそうだ。ずいぶんと酷いことをしてしまったと思う。
他にも町の方々に迷惑をかけている。数え出したらきりがない。
そうだな……。そろそろ家の敷地外にも出てみよう。
それが出来たら町の皆に謝罪し、可能であるならば交流を深めよう。
……ただ一つ、今回の件で引っかかることがある。息子の考えていることが良く解らないということだ。
このことはシュラクにも伝えてある。
増税したかと思えば、急に冒険者ギルドのため町の安全のためだと言う。
我輩が言えたことではないのだが、本当に皆のことを考えてのことなのかが疑問が残る。
自分の息子のことながらよく解らない。息子のことも理解していないとは、本当に親として失格であるな……。
もしも息子がかつての自分のように横暴に振る舞い、皆に迷惑がかかるような事態になるようであれば、親として子をいさめなければならぬであろう。
そのことだけは、このレスタ・フォン・バイエルンの名に誓って。否、そうではないか。父として、子のやらかしたことの責任をとらねばなるまい。




