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モノローグ・バイエルン5

 我輩の名前はレスタ・フォン・バイエルン。伝統ある誉れ高き子爵家貴族の一人だ。



 今ではきちんと自分の名前を認識できるようになるまで回復することができた。


 人前に出るとまだ少し手が震えるが、だんだんと症状は良くなってきているように思う。



 昼間の散歩もできるようになった。



 メルティちゃん(馬)と触れ合えるのが、我輩にとって何より心のよりどころになっていた。



 我輩は、人の心の痛みがどのようなものなのかを身をもって理解することができた。



 これまで人の心を踏みにじってきた、傲慢な自分を殴ってやりたい。


 なんと罪深いことをしてきたのかと、心底身震いしてたまらなくなる。


 息子のハインリッヒが我輩に代わって町議会に出ているが、かなり無茶をやっているらしい。


 この間、シュラクに泣きつかれてしまった。



 ハインリッヒは良くできた息子だと思っていたが、統治者としては失格なのかもしれない。


 息子を放任してきた我輩にも責任がある。このまま知らぬ存ぜぬでは筋が通らないのではないか。


 大勢の視線に晒されるのは怖い。症状が悪化するかもしれないと思うと心が揺れる。



 しかしこうも思う。


 プレッシャーを感じずに傲慢に振舞っていた過去の自分と、プレッシャーに押しつぶされそうになりながらも真摯に町の運営に取り組む自分。



 町の人々にとっては、今の自分は良い領主となり得るのではないか。


 我輩には、過去の自分に対する責任がある。



 部屋にこもってしまうのは簡単だが、それでは貴族の義務、ノブレス・オブリージュを果たしたことにはならない。



 心に何度も傷を負うかもしれない。


 それでもなけなしの勇気を振りしぼって。


 義務感という鎧を身にまとって町議会の場に立とう。



 我輩はそう心に誓ったのだった。

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