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帰り道

ショッピングモールでみんなと別れて帰路についた。


駅から家までの道のりの中で歩きながら昔のことを思い出していたら、またナビゲーターの声がスマホから流れた。


『対戦相手が現れました。対戦を承認しますか?』


ダンスマカブルゲーム、通称DMゲームは昔は私の目の前に毎回げナビゲーターが姿を現し、対戦の通知を行っていたけど、現在ではスマホのアプリに集約されている。

ゲームの通知、現在のポイント獲得ランキング、現在のポイントで願いをかなえられるかどうかもチェックできる。

ただし、願いのチェックだけは「まだ足りないよ!」とか「あとちょっと、がんばれ!」とかざっくりしたものだけど。


私はスマホを取り出し、承認をする。

すると、先ほどと同じように周りを歩いていた人たちがいなくなり、残されたのは私と私を囲む大勢の人たちだけになった。

……多いな、これは久々に大型ギルドとの対戦か。


1人が私のほうに歩いて向かってきた。

ある程度近づいたところで止まると、ナビゲーターが現れる。


「対戦者は口上を述べてください。」


「私、『カラミティ』のギルドリーダーは願いをかなえるために、命を懸けて戦うことをここに宣言する。」

「私、死神は願いをかなえるために、命を懸けて戦うことをここに宣言する。」



1対1、もしくは1対多数の場合は、ギルド名ではなく与えられた能力名を口上でいうことになっている。

なんでか知らないが、個人情報は一応保護されている。

…まあ、私の場合は有名になりすぎて場所がばれているから意味ないけど。



「口上を確認しました。それでは戦闘を開始します。」



おっと、戦いが始まる合図の10カウントが数えられる。

私はいつものように死神の鎌を召喚し、構えた。


相手も戦闘態勢になる。


ギルド『カラミティ』

確か、64人で構成される大型ギルドだ。

所属している全員が、自然災害によって被害を受けた者たちで構成されている。

地震、津波、洪水、台風等様々な災害にあった者たちが集まり、『カラミティ』となったのだ。


皮肉にも彼らの能力は、彼らがそれぞれ被害にあった災害が元となっていた。

だからこそ単純に強い力でもあるが、ただそれだけともいえた。



『…3…2…1、スタート!』



合図の瞬間、まずは津波の力を持つ人たちが一斉に津波を私に向けて放ってきた。

はぁ、なんてお粗末な。


私は飛び上がり空中で止まり、すかさず空を蹴り驚いて隙ができた相手の首を刈る

近くにいた者たちの首をどんどん刈っていると、竜巻がこちらに複数襲い掛かってくる。

よく見るとその後ろから、津波がまたこちらに向かってきているのも見える。



「それで囲ったつもり?なめられたものね。」



私は鎌を縦に振り、私を囲っていた一部の竜巻とその後ろの津波を切り裂いた。

そしてその斬撃は止まらず斬撃が飛ぶ直線上にいた相手も縦に切り裂かれる。

同時に、その相手が乗っていた家も縦に切れてしまったが、そんなのはどうでもいい。


今の一撃でできた通り道を通って包囲網を抜け出し、近くの相手を切り裂いていると、複数人がまたこちらに手を向けている。

ちっ、位置がばらばらだ。

一気に刈り取れないが、仕方ない。



「「死ね!」」



その言葉が合図になり、今度は何かと思ったら、体に強い衝撃が走り私は吹き飛ばされ家に激突した。



「かはっ……。」



強い衝撃に息が漏れると同時に、激突した家の壁が私を中心とした円状に窪んだ。

そんな衝撃を受けても私の体は壊れることなく、ピンピンしている。

能力を得て、身体能力も上がっているから、この程度の攻撃はどうってことないが、なんで衝撃波なんて……


私は急いで体勢を立て直し、また飛んできた台風を切り裂き、衝撃波を飛ばした相手を切っていく。


相手も衝撃波が効いたことで、息を吹き返したのか攻撃に勢いがついてきた。



私は攻撃をさばきながら、なるべく衝撃波が当たらないよう縦横無尽に動き回りながら先ほどの衝撃波のことを考えた。


…『カラミティ』、…災害が元になっている、…津波、洪水、台風、『地震』!

そうか、地震だ!

揺れを衝撃波として飛ばしているのか!

だから当たる範囲も広くて、威力も強いのか!

地面を揺らすしか能がないと思っていたが、ちゃんと応用できるほど彼らは戦闘経験を積んでいるということか。

面白い。



「面白い!面白いぞ!久々に私もこの力を使おう!」



私は切り裂いた相手に触れて回った。

相手は私の行動が意味が分からなかったようだが、何かあると必死に攻撃を仕掛けてきた。

近くに私が来たとき、衝撃波を手にまとい殴りかかってきたものもいたが、もう遅い。



「さあ、動け!私は『死』を操る死神だ!」



私がそう叫んだ瞬間、触れて回った者たちが起き上がり、生前と同じように手を構えた。

……仲間に向かって。



「まさか……。」



敵の一人がつぶやいたその瞬間、津波、地震、台風が仲間に向かって飛んでいく。

残った敵たちが一斉に逃げ惑う。

今まで自分たちの敵に向かっていた攻撃が、自分たちに向かってくる。

知り尽くした能力だとしても、自分たちで対処するのは慣れていない。

それを現すかのように、どんどん相手の連携が、私を取り囲んでいた包囲網が崩れていき、最後に残ったのはリーダーだけになった。



「くそっ、くそっ、こんな力を持ってるなんて聞いてない!衝撃波でも崩れなかった上に、死体を操るなんてっ……!」



彼女は膝をついたまま、こちらを睨んできた。


私はそれも意に介さず、彼女に歩み寄る。

一定の距離まで近づいた瞬間、彼女がアッパーを衝撃波をのせてこちらには放ってきた。

私はすかさずそれをよけ、鎌を振り下ろす。

彼女も鎌をよけ、衝撃波をのせた手ではじく。


強い衝撃が手に伝わるが私はそれを利用して、回転した勢いで横なぎに鎌を振る。

手がしびれるが、どうってことない。



「えっ!?」



その勢いに反応できず、彼女の首ははねられた。

すると、ナビゲーターが現れ、私に向けて手を向けた。



「Your Win!死神の勝利です。報酬を受け取ってください!」



にっこり笑っているナビゲーターの顔がうざいが、私はスマホを取り出しポイントを確認した。

私の願いのアイコンをタップしようとしたとき、ナビゲーターが近づいてきた。



「まだまだだよ!君の願いには彼らの持ってるポイントじゃあまだ足りない。」



私の顔を覗き込みながら、ナビゲーターはそう言った。



「じゃあ、あとどのくらい勝てばいいの、これまでも結構勝ってきたと思うんだけど?」

「しょうがないじゃないか。君の徳は前世からの引継ぎがあるからね。今も徳をちょっとずつでも積んでいるから、願いに見合うには足りないのさ。」

「いつもそういうわね。」

「そうかなぁ?」

「そうよ。」

「ふふふ、君は戦闘するといつもその口調になるよね。」

「その口調?」

「いつものラフな口調じゃなくて、女王っぽいしゃべり方。」

「そんなつもりはないのだけれど。」

「いいよいいよ、君はこのゲームの女王だ!これからも頑張って1位で居続けて、僕たちを楽しませてね?」



そういって、ナビゲーターは消え去っていった。



町の喧騒が戻る。

私は、家に向かって歩き始めた。


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