尾行作戦
翌日。
靴箱の前で上履きに履き替えていると、横から話しかけられた。
「おはよう!香織ちゃん!」
「おはよう、藍ちゃん。」
にっこり笑いながら、藍ちゃんが近づいてくる。
「それで、昨日はどうでしたか?」
藍が興味津々で聞いてきた。
私はため息をつきながら答える。
「ちゃんと、普通に遊んで暗くなる前に解散しました。」
「ならよし!」
ニコニコ顔で藍は満足そうに頷いた。
そのあとはいつも通りの会話をしながら教室に向かった。
教室につき、それぞれにほどきをしていると藍ちゃんの方から声が聞こえてきた。
「おはよう、藍。」
「おはよう、隼人!」
どうやら、幼馴染の高橋 隼人君と話しているようだった。
今度の土曜日どこに出かけて何をするか、詳しく話しているようだった。
私はなるべく気配を消し、本を読んだ。
今日もメンバーと図書館に集まり、話をする。
「そういえば今度の土曜日、藍ちゃん、高橋君とデートに行くんだって。」
「おっ、安パイを選んだかー。まあ、幼いころのあのセリフは心に残るよねー!」
「そうなんだ。」
私は、グループメンバーに今日聞いた出来事を話していた。
実は、彼らも転生者で、女子は私と同じくこの学校が舞台となっている乙女ゲームをしていたらしく、主人公である藍ちゃんが誰を攻略するか気になっているみたいだった。
男子は知らなかったみたいだけど、ゲームの世界だと知ると興味が出てきて、話は聞きたいと言っていたため、今日の集まりで報告したのだ。
「さて、今日も街へ繰り出しますか。」
「またゲーセン行こうよ!」
「おっ、いいな賛成!」
「またか、まあ、生徒会長に目を付けられないようにいつも通り夜になる前には解散するけど、それでもいい?」
「いいよー!」
「もちろん。」
「っし、行くか。」
そうして私たちは街へ向かった。
「ねえ、ちょっと思ったんだけど。」
「どうしたの、あかね」
「主人公ちゃんが買い物行くの見てみたくない?」
「えっ、それはだめでしょ、さすがに。」
「そうだよ、人の恋路を邪魔する奴は刺されるぞー。」
「違うよ!後ろからこっそりつけてくの。バレないように!」
みんなはあかねの発言に驚いていたが、やっぱり気になるのか口ごもってしまう。
「ね、みんなは気にならないの?」
「気にならないかといわれると、気になるけど…。」
「でも、ねぇ?」
「気になる人、手ーあげて!」
あかねがそういった瞬間、全員が手を黙ってあげた。
気になると言われたら、私も気になってはいたのだ。
攻略がどのくらい進んでいるか知りたい。
「ほら、みんな気になるなら、尾行することけってーい!」
「はぁ、じゃあ、今度の土曜日みんなで尾行するけど、気づかれないようにね。」
「「了解!」」
私は藍ちゃんに心の中で謝りながら、ワクワクしていた。