私の友達
今回は藍視点のお話です。
私は、鳥羽池高等学校に通う三好 藍。
現在2年生だ。
周りからは文武両道、成績優秀な人気者だといわれているが、実際はただのオタクだ。
そんな私にとって、大事なオタク友達がいる。
隣の席の加藤 香織ちゃん。
よくいる端っこでよく本を読んでいる子だ。
地味だけど、鞄につけているキーホルダーとか、もろにアニメのキャラクターのもので親近感がわく。
私はあんまりそういうのはまだ気恥ずかしくて堂々と付けれないから、キャラクターモチーフのアクセサリーをつけたりしている。
今日も隣の席に座った香織ちゃんと他愛のない話をする。
中学の頃はオタク友達ができなくて、こんな話できなかったから今が楽しくて仕方ない。
ん?香織ちゃんがじっと私を見てきた。
なんだろう。
「どうしたの?そんなにじろじろ見て、私の顔に何かついてる?」
「いや、まつ毛長いなって。」
「そう?メイクとか何もしてないんだけど、そういってもらえるなんてなんか嬉しいな。」
何気ない会話だけど、最初はこうじゃなかった。
たまたま隣の席になって、彼女が「神しあ」の小説を読んでいたから、思わず話しかけたのだ。
「それ、「神しあ」だよね!好きなの?」
突然話しかけられたから、香織ちゃんは驚いてたけど、でもちゃんと返事をしてくれた。
「うん、好きだけど…それが何か?」
「私も好きなの!よかったら、「神しあ」について話さない?」
「え……、いいけど……」
話をしようといったとき、なんかめんどくさそうな雰囲気を出してたけど、私は無視して話しかけた。
香織ちゃんは最初、私のことをただ適当なことを言って話をすることで、クラスの隅っこにいた香織ちゃんのことを一人にしないようにいい子ちゃんぶるつもりだったんじゃないかと思っていたみたい……。
でも、私の話を聞いて、本当に好きだということが伝わってからは心を開いてくれてたくさん話してくれるようになった。
その時のことは、今でもすぐ思い出せる。
うれしくて仕方なかった。
大切な思い出だ。
今日もいつも通り図書館に向かう。
私は、部活には所属せず、生徒会で書記をしている。
だから、放課後はいつも香織ちゃんと勉強をして、アニメや漫画の話もしているが、今日はちょっと違う。
「あのね、昨日分かれた後、隼人と会ってね、今度の土曜日に遊びに行く約束しちゃったの!」
「おお、よかったじゃん。」
そう、今日は私の恋バナを聞いてもらうのだ。
私の好きな人は、幼馴染の高橋 隼人だ。
小さい頃から仲が良くて一緒によく遊んでいたけど、お父さんの仕事の都合で小学校4年生から中学の間引っ越して会えなかったけど、高校生になってからこっちに戻ってきたのだ。
久しぶりに会った隼人は、すごくかっこよくなっていて、小学生の頃あえなくなった時悲しかった気持ちの名前がわからなかったが、再開してそれが恋だということが分かった。
仲良くなってから、私は香織ちゃんに隼人とのことをよく話していた。
いろんな話をしていくうちに、最初はなんでそんな話私にするんだって顔から、はいはい、今日もいつも通り高橋君の話ね、という反応になっていった。
だから、今日も私は香織ちゃんに話すのだ。
「ねえ、どんな服着ていったらいいかな?」
「いや、私高橋君じゃないからわからないって。」
「そこを何とかアドバイスをください!」
「いや、えぇ…?まあ、かわいい感じの服でも着ていけばいいんじゃない?」
「そうかな。」
「たぶんね。」
「じゃあ、新しい服買いに行こうかなぁ。」
「いや、今度の土曜日でしょ。持ってる服で行きなよ。」
「いいのあるかな。」
「いやだから、私にそんなこと聞かれても……。藍ちゃんの持ってる服私が全部把握してるわけじゃないんだから。」
「コーデで迷いそう。」
「……はぁ。じゃあ、迷ったら私に迷ったコーデの写真送ってよ。アドバイスはできなくてもどっちがいいか選んでは上げられるから。」
「ほんと!?」
「ほんとほんと。これで不安なくなった?」
「うん!ありがとう。やっぱり頼りになるのは香織ちゃんだけだよー!!」
「いや、何もしてないって。」
こんな相談を香織ちゃんは聞き流すことなくちゃんと聞いてくれる。
やっぱり、香織ちゃんは優しいいい子だ。
私は、幼いころ不安でいっぱいだった。
なぜなら、私はこの世界に転生したからだ。
この世界と言えるのは、私が乙女ゲーム「君との日々、恋する私は。」の主人公になっていると気づいたからだ。
幼いころに、幼馴染の隼人と担任の先生の結婚式に出席したことがある。
「きれいだね、先生。」
「うん!私もあんな服着てみたい!」
「じゃあ、僕が着せてあげる。」
「ほんと?約束だよ!」
幼いころの何気ない約束。
だけど、この会話が私に前世の記憶を呼び起こした。
病気で病室にこもりっきりだった私に、姉が持ってきたゲーム。
今の約束は、前世でやっていたゲームの一場面であること。
病状が悪くなり苦しみながら最期を遂げたこと。
多いようであっさりとした記憶が私の中に駆け巡った。
幼い私はその場に立ち尽くし、顔を青ざめさせた。
その様子を見ていた隼人に心配され、少し正気を取り戻したが、家に帰るまで私は無言だった。
それからしばらくの間、私は記憶に翻弄され、挙動不審だった。
でも、家族も隼人も私のことを見捨てることなく、親身になって私を励ましてくれた。
そのおかげで、何とか現状を飲み込んだ私は、この世界の住人として生きていくことができるようになった。
高校生になってから、やはりゲームの通り、攻略対象との出会いもあった。
でも、やっぱり、私は隼人が好きなんだ。
ゲームのキャラとしてではなく、1人の人間として。
ちなみに、よくある好感度確認とかアドバイスをくれる友人枠の子とも仲良くしているが、その子とは別に前世から大好きなゲームやアニメの話ができる友達として香織ちゃんにもたわいのない話として、こうやって隼人の話をしたくなるのだ。
もちろん、友人枠の子、小林 恵美ちゃんとも仲良くしている。
でもたまに、こうやってはいはいって流される感じの対応を求めていたりする。
まさに友達って感じがして、私は香織ちゃんとの会話も大好きなのだ。
「ふふふっ。」
「どうしたの、急に笑い出して。怖いよ?」
「ひどいなぁ。…ただ、香織ちゃんと友達になれてよかったって思ってただけだよ。」
「なにそれ、恥ずかしいなぁ。」
「香織ちゃんは?どう思ってるの?」
「そんなこと直接聞く?」
「聞きたくなったんですー。」
「……私も友達になってよかったって思ってるよ。」
「ほんと!?嬉しい!!」
こうやって、嬉しい言葉をくれる香織ちゃんが大好きだ。
……大好きだからこそ、彼女がたまにしている、私も前世で病気が治らないとわかってからのあの目、絶望しているような目を何とかなくしたくて、今日も彼女に話しかける。