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乗るか、乗らないか

オフィスに入って、まだネオがまだいることにびっくりした。帰ったんじゃなかったのか。

思わずネオに話しかけているケイ先輩に声をかけた。

「ケイ先輩、お疲れさまです。何かあったんですか?」

答えの感じからするに、なんのことはない。これ、単にケイ先輩はネオに話しかけたかっただけだな。最近、ケイ先輩はネオがお気に入りで、理由をつけてはからんでいる(ように俺からは見える)。その証拠に俺が話しかけたら、さっと引いて去っていくんだから、たいした用事じゃないってことだろう。


「なあ、お前、なんで電話でなかったの?」

話しかけて、よくよくネオを見ると、明らかに顔色が悪い。ああ、体調悪いのはウソではなかったか。ケイ先輩の前では普通にふるまっていたように見えたけど、無理をして仕事モードだったということか。


さすがにこれ以上はもう無理だろうと、一緒に帰ろうと声をかけた。明日までに暗記するという資料をしまうネオ。仕事熱心なのはいいが、少しは自分の体を考えろと言いたい。さっきまでネオに仕事を押し付けられて、ぶーぶー言っていた俺がいえる話ではないのだが。


車できたというネオについて、駐車場に向かう。明らかにネオの足取りがおかしい。

「おい。大丈夫か」

「ん? ああ」

まあ、大丈夫じゃないよな。 そのまま黙って歩いた。ネオの青い愛車、助手席のドアの前。運転席のドアをあけようとしたネオを見て、

「俺が運転しようか?」

そう思い切って言ったのに。ネオの表情がさらに暗くなった。

「ウソでしょ? 殺す気? ターの運転する車にのるくらいなら、目をつぶって自分で運転する方がましだよ!?」

まったく相手にされなかった。自分でも運転が下手すぎる自覚がある。俺が自分で運転することはほとんどない。一度、会社の敷地内で社用車を移動させたことがあるが、それを見た誰もがもう運転させてくれなくなった。ネオも含めて。いや、でも俺だって免許はもってるんだぞ。違法じゃないし! 


さっさと運転席に乗ったネオを見て、あきらめて助手席のドアを開けて乗り込んだ。

ふーとため息をついたネオを見て、自分の不甲斐なさに心が沈んでいく。

「ごめん。俺が運転うまかったら代われたのに。お前の家まで一緒にいったら、自分で帰るからさ。途中でお前に何かあったら、怖いし。だから…」

「あ、ごめん。自分の車に乗ったら気が抜けただけ。ターの家、近いし送るくらいできるよ?」

「いや、いい。明日までに資料おぼえるんだろ。俺に気を使うより自分のこと考えろ」

「んー。じゃあ、お言葉に甘えて。ひとまず自分の家に帰る」

「そうしろ」


運転が好きなネオ。今日もいつも通りの安心安全なドライビングなのだが、ついちらちらとネオの様子を見てしまう。

「何? イケメンなぼくに惚れた?」

まったくこっちを見ず、笑みも浮かべずに憎まれ口を叩くネオ。それもいつも通りなのだけど、でもたぶん、心配している俺に気をつかってるんだろうな……。俺は本当に何をしてるんだか。体調悪いやつに気をつかわせて。

「ああ、イケメン。惚れそうで怖いから、曲かけていい?」

そう許可をとって、Bluetoothでスマホとスピーカーをつないだ。今話題の曲をランダムにかけ流す。ネオがしゃべらなくてもいいように。俺に気をつかわないですむように。俺はやっぱりちらちらとネオの様子を見てしまうけれど、ネオは流れる曲を口ずさみながら、とくに何も言わなかった。

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