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妖精に育てられた魔法使い  作者: こ~りん
三章:魔導院入学試験
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三章エピローグ

遅くなり大変申し訳ありません。体調を崩したり他の小説を書いたりしていましたが更新を諦めたわけでは無いので、時間は掛かると思いますがこれからも更新を続けようと思っています。

今回は少し短めです。

「まずはおめでとうと言っておくよ」


 届いた試験結果を見て彼女は言った。


「試験結果は及第点……特にフローディアはギリギリだったそうだ」

「うぅ……すみません」

「いや、欠点が浮き彫りになったと思えばいい。君はやはり、魔法を生きている人間相手には使えないみたいだね。それは魔法使いからすれば欠点だが、人間としては美徳とも言える」


 フローディアは落ち込んでいる。フォローはあったが、それでも魔法使いとして致命的な欠点を抱えているからだ。

 スフィアはそれを美徳と言っているが、それは理想論が成り立つ世の中でなければ通用しない。現実では身を守るためにも、魔法使いは他者を害せなければならないのだ。


「リアムはまず、人の魔法を覚えようか。地力は十分、判断力にも長けている。……まあ、その前に適正検査だけどね」


 対して、リアムはそれ以前の問題であった。

 分かっていたことではあるが、魔導院は人の魔法を学び研究する場であって、妖精の魔法を修得する場ではないのだ。

 物珍しさからの評価はされるが、人間の魔法使いとしては論外とも言える。


「それでも、やはり保有する神秘は桁違いだ。神秘が多いということは、世界への干渉力も相応に強まるということだからね」


 試験結果から分かる反省を済ませ、スフィアは二人に席を立つよう促した。


「とにかく、これで二人は正式に私の弟子となった。入学祝いとしてローブの一つでも送るところだが、リアムのローブ以上の品は用意できないから……共通する別の物を考えておくよ。それと、お金を渡すから魔導院で必要になる道具類は自分達で揃えなさい。講義に出るのは準備が終わってからだ」


 元々用意していたのだろう。スフィアはそれ単体でも価値がありそうな布袋を二人に渡す。中には金貨が詰まっている。

 ともすれば白金貨にも届きそうな金額を渡された二人は驚き戸惑うが、魔法に関する道具類は高価なものが多いため、師匠が金を用意せねば準備すら満足に出来ないこともあるのだと言う。


 そう言われれば断ることなど出来ない。

 それに、白金貨数枚程度、貴族と魔導師を兼ねているスフィア・ノルンにとっては端金のようなものらしい。

 リアムは、金銭感覚が麻痺してしまわないよう気をつけないとな、と考える。




『「ねえリアム。魔導院って楽しいと思う?」』


 就寝間近の時間帯になると、リギルがベッドで添い寝しながらそう呟く。

 彼女は人間に瓜二つの姿だが、その精神性は人間とはかけ離れている。しかし、誕生してから人間と共に過ごし、人間の生活を理解できなくとも学んだ彼女は少しだけ不安を覚えたのだ。


 人間同士の上下関係。他人事として見るのならばくだらなく、そしてとてもつまらないもの。永遠に生き続けることが出来る妖精にとって、人間と同じ感覚で体験するつまらない出来事は死にそうなほど退屈に感じるのだ。


「……今はまだ分からないかな。でも、みんなと一緒に過ごす時間は楽しいよ」

『「そう。じゃあきっと楽しいのね」』


 すでに寝入っているスーとメルディを優しく抱きしめながらリアムは答えた。重さはあるのに圧迫感を感じない彼女達の温もりを感じながら、若干眠たげなリギルを抱きしめるように左腕を回す。

 リギルはその腕に全てを委ねるように体を預けると、すぐに寝息を立てた。


「(……俺も早く寝よう。明日から忙しくなるかもしれないし)」


 昼にスフィアから言われたとおり、翌日からは講義に出るための準備をする必要がある。具体的に何が必要か分からないが、フローディアと相談しながら店を回る予定だ。


――――――


 同時刻、とある場所にて。


「……変わった魔法使いだな。妖精を三人も引き連れているとは」


 蝋燭の光に照らされている古びた本を閉じ、老人はそう呟く。その眼に映るのは老朽化した灰色の壁と年季の入った本棚ばかり。

 今しがた閉じた本をその本棚の空いているスペースに仕舞うが、本棚は微塵も埋まらない。その代わりに、古びた本が新しく現れる。


「…………この辺りでいいか。あまり干渉しては私が目を付けられる」


 それから暫く本の記述を書き換えた彼はそう言うと、その本も閉じてから本棚に仕舞った。

 三人の妖精に慕われている魔法使いに興味はあるが、長い生の中ですぐに過ぎ去る出来事一つ一つに干渉していては身が持たない。どれだけ無尽蔵な魔力があっても、世界そのものに手を加えるのは神の如き所業だからだ。


 それをほんの僅かな時間とはいえ為せるのは、魔法使いの頂点に立つ者だからこそ。

 そうして椅子に身を預けると、どこからか儚い声が響いた。


『――珍しいですね。貴方が興味を持つとは』

「身を隠した神々が注目するような人物だ……少しぐらいの期待はいいだろう」

『試練神でしょうか。それとも魔法神が?』

「さてな。そこまでは私でも分からんよ」


 どちらにせよ厄介な神だがなと付け加え、老人は蝋燭の灯火を消す。活動できる限界が訪れたのだ。

 次に火が灯される時が来れば再び目を覚ますが、今回ので消耗したためそれはかなり先になるだろう。

 

 闇に包まれた空間は次第に実体を失い、世界の狭間へ沈んでいく。観測の出来ない狭間は、観測者が現れない限り浮上することは無いだろう。

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