閑話:実技試験の裏側で
実技試験は試験官によって難易度が変わる。すぐに終わる場合もあれば、時間が掛かる場合もある。
男の場合は後者だ。とても時間が掛かる難しい実技試験となる。
「――私がですか……」
入学試験が始まる前日、男は実技試験を担当して欲しいと頼まれていた。特に差し迫った用事も無いため、男は渋々それを受け入れたのだった。
「(面倒ですね……ですが後輩のため、適当にやるわけにはいきませんし……)」
「お、フェスじゃないか。実技試験の試験官やるんだってな」
「ああ、成り行きで……」
「相変わらず面倒くさそうな態度だな」
「面倒なのは事実ですから……」
フェスと呼ばれた男は、実技試験の準備のため訪れた施設で知り合いと出会った。ちなみに、フェスというのはあだ名である。
「あなたはたしか……」
「一次面接の担当だな。ま、適任だろうよ」
「ですね……」
準備を終えて当日、フェスは実技試験を受ける受験者達の用紙を眺めていた。
受験者の中には推薦状を提出している者もいるが、フェスはその中でもある二人に注目していた。
「(“無尽卿”からの推薦状……幻想魔法を扱えるリアムと……複合魔眼を持つフローディアですか……)」
類稀なる“無尽卿”と称される魔導師からの推薦状で受験したこの二人に、フェスは興味が沸いたのだ。
しかも、どちらも珍しいものを持っている。
人には扱えないはずの幻想魔法を扱える魔法使いは、恐らくこのリアムが史上初だろう。
フローディアの持つ複合魔眼も、空間視と未来視の二つの効果を併せ持っている。
「(面白くなりそうですね……)」
そして試験の時がやってきた。
もちろん審査は公平に行う。だが、公平に行った上での結果、リアムとフローディアが飛び抜けて高くなった。
彼ら以外にも有望そうな魔法使いはいるが、やはりこの二人は別格だとフェスは感じる。
二段階目の対人試験では、つい手加減を緩めてしまった。〈死の鎌〉という上位の魔法と、〈人を殺す魔法〉という戦争用の魔法を放ったのだ。
リアムは見事それを躱し、しかもフェスに一撃を与えた。
手加減していたとはいえ、これは素晴らしいことである。魔導院の中で研鑽を積み、研究員の地位を与えられたフェスに一撃を与えたのだから。
三段階目の試験はまだ途中だが、あの二人なら問題なく突破できるだろうとフェスは思う。
「――はい、確認しました……。では結果が出るまでお待ちください……」
しかし同時に、ミニゴーレムやキラーマウスなどの、特に狩りやすい魔物の素材を取ってきた受験者達を確認しつつ、フェスは早く終わってくれないかなと思い始めた。
道具は渡したが、それを使わずとも手軽に狩る方法はあるのだから。
「(まあ、方法はどうでもいいんですけどね……あと五人ですか……)」
開始して数時間、探索を終えて戻ってきた受験者はかなり増え、残りはリアムとフローディアを含む五人となった。
一体どんな素材を持ってくるか……楽しみにしつつ、やはり面倒だとも感じて待ち続けるフェスであった。




