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妖精に育てられた魔法使い  作者: こ~りん
三章:魔導院入学試験
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魔導院入学試験・実技試験三段階目

「三段階目はとても簡単なので、全員が工夫すればすぐに終わるはずです……」


 そう言って受験者達が連れてこられたのは、魔導院の中のある一室だった。部屋はまあまあ広く、地下への階段以外には何も無い。

 その部屋の中で、試験官は全員に素材を保存するための容器であるガラス瓶と、探索に必要となる様々な道具類を渡した。


「皆さんには今から迷宮に潜ってもらいます……。探索範囲は一層のみ、これだと思った素材を取ってきてください……ただし、鉱石や薬草は対象外です……」

「ペアは組むんでしょうか?」

「お好きにどうぞ……何人が一緒でも構いませんよ……」


 どうやら、三段階目は実際に戦って素材を取ってこなければならないようだ。

 二段階目が対人なら、この三段階目は対魔物だろう。どの魔物を相手にして素材を手に入れるか……そして、どの程度協力出来るかが試されそうである。




 迷宮に潜るタイミング、潜っている時間は自由だそうで、意を決した人からそれぞれ潜り始めた。


「足元気をつけて。でこぼこしてる」

「あ、はい……」


 リアムとフローディアはペアを組んで潜ることにした。

 この迷宮の一層は大した危険はないと二人はスフィアから聞いているため、相対する魔物に関してはそこまで危機感を抱いていない。

 だが同時に、油断もしていない。人間は突然死ぬからだ。簡単に人は死ぬ。


『「うー、なんで風通しが悪いのよ〜……」』

『「じめじめ〜」』

「楽しそうだね『■■(ルー)』」


 リギルが脱力している一方、湿り気が多いからかルーは普段より楽しそうである。


「……私も楽しい。暗いのはいい」


 メルディは洞窟という空間そのものが気に入っているようだ。

 どことなく笑顔な彼女は、リアムとフローディアの後ろをそわそわしながら着いてきている。


「リアムさん、目標は何にしましょう?」

「あんまり手頃だと評価は低くなりそうだけど、探索していいのは一層だけだからな……」

「なら、見つけにくい魔物を目標にしましょうか。ミミクリー系の魔物が出るそうですよ」


 ミミクリーというのは、擬態する魔物に着けられる名前だ。この迷宮の場合だと、岩肌や小石に擬態しているだろう。

 確かに、擬態系は見つけづらく、素材としても一定の需要がある。彼らは魔力で自身の色彩を変化させるため、素材として扱いやすいのだそうだ。


「なら、それにしようか」


 目標を定めた二人は、なるべく他の魔物との先頭を避けるように移動する。

 それほど強い魔物が跋扈しているわけではないが、戦闘を避けて消耗を抑えることは悪いことではない。


「っと、ミニゴーレムか……迂回しよう」


 ミニゴーレム――体が岩で出来ている魔物である。分類的には魔法生物のため、魔力の扱いに長けたものなら支配し従えることも可能である。

 体が岩で出来ているため、倒すなら打撃が有効である。


 二人は打撃で攻撃する手段を持ち合わせていないため、迂回して避けることにした。まさか、魔法使いが棍棒や戦鎚を持っているはずがなく、これは当然の判断と言える。


「一層の地図を見るに、入り組んでいる場所もあるんだよね」

「はい。こことここと……この辺りでしょうか。魔物に囲まれる危険があるので避けたいですね」

「うん。だからこっちか、こっち方面を進もう」


 分岐路に差し掛かれば地図を確認し、進行方向を決める。

 素材の保存容器である瓶と一緒に渡された地図は、簡易ではあるが地形が書き込まれているため、これを参考にしながら二人は進む。


 ミミクリー系の魔物はまだ見つからない。

 道中で先に潜った受験者の出会ったが、彼らもミミクリー系を狙っているらしく、まだ成果ゼロと肩を竦めていた。




 そんなこんなで二時間ほど歩いた二人は、そろそろ休憩しようと少し開けた場所で座り込んだ。


「つ、疲れますね……全然見つかりませんし……」

「本当はこの子に頼めればよかったんだけど、閉鎖的な場所だとあまり力が発揮できないみたいで」

『「嫌よ〜……もっと広い場所がいいわ〜……」』

「……ぐったりしてますね」


 リギルにとっては辛い空間だろう。洞窟なので狭く、風の通りも悪い。狂風の妖精である彼女にとって、風の無い場所は人間にとっての牢屋のようなものだ。

 少し申し訳ない気持ちになりながら、しかしリアムは実技試験中なので外に出るわけにはいかない。


 逆に、ルーとメルディは元気である。ルーは水の妖精なので場所に囚われるようなことはなく、どこでも元気であり、湿気があればその分更に元気になる。

 メルディは暗い場所を好んでいるようで、いつもよりもほんわかした様子だ。


「――少し、魔眼を使いますね」


 フローディアが目隠しを外す。

 彼女の目隠しは魔眼を封じるための魔導具だということは、試験の日を待つ間に彼女から教えられている。


 目隠しの下、瞼の裏側に隠れていた彼女の瞳は、喩えるのなら宝石のよう。

 白く輝く宝石みたいだと、リアムは心の中で思った。魔眼そのものに付けられる価値も高いため、宝石という表現はあながち間違っていないだろう。


「………………ふぅ」


 周囲を見渡してから、彼女は再び目隠しを着用する。

 まだ完全に制御できているわけではないので、長時間は使用できないらしい。息を整えてから、彼女は魔眼で視た様子をリアムに伝える。


「近くにはあまり魔物がいませんでした。範囲内にいたのはミニゴーレムばかりで、三十分の間に範囲に入ってくる魔物もいませんでした」

「分かった。となると、この道を抜けてこっち側……入口に戻る方向に行こう。それでも見つからなかったら……ここ」

「入り組んだ場所ですね。見つかるといいのですが……」


 迷子になるとマズイため、入り組んだ場所に向かうのは最後となる。

 更に十分ほど休憩して、二人は探索を再開する。


「――っと、二層への道か。奥は……見えないな」

「あれ、ここって二層への道なんだ……教えてくれてありがとうね」


 二層への道はゆっくりと下っていく穴だ。一目では判断しづらく、ちょうど降りようとしていた男が礼を言って離れていった。

 潜り始めてたらかれこれ数時間……体力的にも気力的にもキツくなってくる時間だ。しかも、二段階目で行った戦闘による疲労もある。


 少し急がないと、迷宮内で倒れてしまうかもしれない。リアムはそう感じ、フローディアにも同様のことを伝える。




「――見つけた!」


 それから、二人が目標である魔物を見つけたのは、入口側にほど近い場所だった。

 蛇のような魔物で、背中側が岩のようにでこぼこしている。ミミクリー系に分類される魔物である。


「名前は――」

「ミミクリーサーペントです! 牙に毒があるので気をつけて!」

「うわっ!」


 飛びかかってきたミミクリーサーペントを十手で防ぐと、フローディアから注意が飛んでくる。

 ミミクリーサーペントは十手に絡みつくと、その手に噛み付こうとした。(すんで)のところで十手を手放したため噛み付かれることは無かったが、フローディアの注意が遅かったらどうなっていたやら。


「紫黒の君、頼む! 『■■(ルー)』も頼んだよ!」

「……!」

『「分かったー!」』


 リアムは二人に協力してもらい、ミミクリーサーペントにダメージを与えていく。

 水で浸し、凝結させることで動きを抑える。その隙にメルディが影を操ってミミクリーサーペントの口を縛る。これで牙は使えない。


「《迸る烈火、稲妻のように》〈爆発の矢(サギッタ・フラルゴ)〉!」

「開けて!」


 そして、フローディアの詠唱が完了すると、影で縛った口を無理やりこじ開ける。

 フローディアの魔法はその口腔へと吸い込まれていき、一瞬ののち爆発を起こす。


 ボンッとミミクリーサーペントの体が破裂し、内臓や血が飛び散った。それが自分達にかからないようにリアムが風で保護する。


「――た、倒せましたね」

「結構派手にやっちゃったけど、素材は鱗だったよね……?」

「はい……あ」


 どうやら、素材の回収が大変になったと気がついたようである。

 体内から爆裂四散させれば、そりゃあこうなるだろう。フローディアは使う魔法を間違えたと後悔し、リアムもリアムで首を切り落とすなり方法はあったよな……と後悔する。


 が、後悔していても仕方ない。二人は飛び散った中から回収できる素材を探し始める。回収出来なければ、また探す羽目になるだろう。

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