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妖精に育てられた魔法使い  作者: こ~りん
三章:魔導院入学試験
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魔導院入学試験・実技試験二段階目

「(……余った)」


 太陽が沈み、魔法の光が修練場を照らす。

 修練場の中央では、一ペアずつ結界内で戦闘を行い、それを試験官と他の受験者が観戦している。


 そしてリアムは余っていた。一段階目の試験でとびっきりの魔法を使った結果、他の受験者から避けられているのだ。

 なので、知り合いであるフローディアとペアを組もうとしたが、彼女は女性の魔法使いとペアを組んですでに二段階目の試験を終えた。


 余ったと判明した時の、試験官のにやけ顔がリアムの脳裏から離れない。


「ではやりましょうか……」


 リアム以外のペアが全て終わり、眠気に襲われ掛けている頃になって、ようやくリアムの番となる。

 二段階目の試験……リアムの相手は試験官である。結界を広めに張り直して二人は対峙する。


「いつでも初めて構いませんよ……」

「では――」


 姿勢を落とす。十手を抜くと同時に飛び出し、その十手を触媒に剣を作りだす。

 水を芯に、風を刃に見立てた妖精の魔法だ。


「〈爆発(フラルゴ)〉」

『「させないわ!」』

「妖精ですか……いいですね……」


 牽制として発動した魔法はリギルが吹き飛ばして無効化した。リアムはその隙に接近し、長剣を胴目掛けて振り抜く。

 しかし、その剣は空中で甲高い音を立てて折れてしまう。


「吹き飛べ!」


 試験官が何かしようとする前に、リアムは豪風を吹かせて距離を取ろうとする。

 だが、試験官はその場から微動だにせず、その指先で空中に文字を書いて魔法を発動させた。


「ぅぐ……っ!」

「判断の早さ、発動の早さ、いいですね……。防御も早い……」

『「ぶっ飛びなさいっ!」』

「――ですが甘い……」


 またもや通じない魔法。試験官は一歩も動かない。


『「私の魔法が通じないの!?」』

「妖精の魔法は強力です……人間の知恵では辿り着けないほどに……ですが、工夫し防ぐことは可能なんですよ……」

「……結界ですか」

「ええ、まあ、そうです……」


 試験官は恐らく、結界を張って攻撃を無効化しているのだとリアムは判断する。

 試験ということもあり、手加減はしているのだろうが、それでも基礎の実力と経験の差のせいでリアムは攻めあぐねている。


 リアムは魔法使いとしてはかなり珍しい、前衛近接型。後方で固定砲台としての役割を求められやすく、そしてそうしたがる魔法使いが多い中で、彼の戦い方は前衛的と言える。

 妖精の協力もあり、こうして様々な魔法を防ぐのにも苦労する。


「(足りないのは地力ですかね……あの“無尽卿”の推薦ですから、能力面は問題ないでしょう……。覚悟も気迫もありますから、実戦経験もありそうですね……)ほら、この程度ですか……?」


 試験官は、わざと結界を可視化させる。空中に浮かんでいるその結界は、正方形の板に成形されている。


「工夫すると便利ですよ……」


 そう言うと彼は、その結界を回転させてリアムの方に放った。

 結界魔法は防御に使うという常識を投げ捨てた、殺意マシマシの攻撃だ。当たれば致命傷は免れないだろう。


「――横からならっ!」


 それをリアムは飛んで回避する。

 そしてすぐに大気中の水を集め、氷へと凝結させその結界に撃ち込んだ。


 ガラスが割れる音に似た音が連続して鳴り響き、その結界は粉々に砕け散った。

 物理主体の魔法なら、横から攻撃して破壊できるようである。


「ふむ……ではこうゆうのはどうでしょう……」

『「私が防ぐわ」』

『「私もー!」』


 今度は槍型だ。小さいが数が多く、投擲槍のような速度でリアムに向かってくる。

 リギルとルーがそれを防ぎ、リアムはその後ろで魔法を発動する。


 竜巻だ。槍を防ぎ終えた二人は横へ回避し、その間を竜巻が通る。

 地面を抉りながら竜巻は進む。土と砂を巻き上げて、結界すら巻き上げんと風速を上げて。


「これならっ」

「はい、とてもよい魔法です……威力も十分です……」


 試験官は笑みを浮かべると、詠唱を始めた。


「《大いなる影、太陽の姉妹神たる月女神に捧ぐ》〈死の鎌(ファルクス・モルス)〉」


 その魔法の効果はすぐに現れた。

 彼を中心として巨大な魔法陣が展開し、黒煙が燻ると、命を刈り取るような形をした鎌へと変化する。

 それはゆっくりと振り上げられ――


「――これが人を殺す魔法です。〈人を殺す魔法(インテルフィケレ)〉」

「ッ!」

『「危ない!」』


 それを囮として同時に詠唱していた別の魔法がリアムに迫る。

 真っ白な光線だ。どの属性にも偏らない、人間がその歴史の中で作り上げた無属性魔法。


 人を人道的に殺すためだけに開発された、戦争用の魔法。それが〈人を殺す魔法(インテルフィケレ)〉だ。

 心臓に当たれば心臓を、頭に当たれば頭を一瞬で破壊し尽くす魔法が、リアムに迫る。


 それを間一髪で回避し、しかし囮でありながら二の矢でもあった〈死の鎌(ファルクス・モラス)〉が頭上から振り下ろされる。


「(この距離なら加速して……!)はあっ!」


 しかし、リアムと試験官の間はそう遠くない。風を背中に受け一瞬で距離を詰めたリアムは、回避中に再度発動した長剣を構え、その勢いのまま突く。


「――若いっていいですよね……無茶が出来るのは羨ましいですよ……」


 長剣は結界を突き破った。結界を突き破る際に刀身は折れて消えてしまったが、十手は金属製の本物。

 試験官の腹にドスッと刺さると、鈍い痛みを彼に与えた。


「はい、二段階目は終わりです……では三段階目があるので、そっちに移りましょうか……」


 が、そこは魔導院所属の研究員。この程度の痛みは苦でもないらしく、淡々と二段階目が終了したと告げたのだった。

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