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妖精に育てられた魔法使い  作者: こ~りん
三章:魔導院入学試験
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王都リンフォード その二

 翌日の朝。リアムは妖精達を連れて王都へと繰り出した。

 魔導院に向かうつもりはあるが、それはそれとして一先ず王都の観光をしたいと思ったのだ。もちろん、冒険者らしくまずは組合に向かってからだが。


「依頼は……採取か。昨日とあまり変わらないみたいだね」


 掲示板に張られている依頼は昨日と同じものばかりだった。少し採取の依頼が増えているかな……? と感じる程度で、これといって受けたいと思うものは無い。

 今すぐお金が! と叫ぶほどお金に困っていないのもある。強くなっていけば自ずと上がっていくから、昇級もリアムにとっては二の次だ。あまり優先度は高くない。


『「ねえ、もっと色々見て回りましょう? こんなに大きい人の街は初めてだもの」』

「そうだね」


 ぐいぐいと腕を引っ張るリギルに連れられるように、リアムは組合を出て観光を始めた。

 組合の建物があるこの噴水広場でも王都の中央からは離れていて、門からここまでの倍近い距離を歩いてやっと貴族街に着くほど、王都というものは巨大だ。王都は中央の豪華絢爛な王城を中心として円形状に建てられており、城に近い側が貴族街となっている。

 組合の建物は東西南北の四ヶ所にあり、実はこの噴水広場は西に偏った位置に造られているのだ。


 周囲の風景を眺めながら、リアム達はより中央へと足を進める。

 少し歩けばすぐに商会やら個人運営の店が増え始める。一般人向けの品々を売る雑貨屋から、冒険者向けの道具屋、貴族などの富裕層向けである宝飾店……数えても数え切れないほど沢山の店が並ぶ。


『「わ、綺麗……」』


 こぢんまりとした宝石店の前を通ると、リギルがそう零した。彼女の視線の先にはガラスケースに陳列された小さな宝石類がある。

 小粒の宝石だが、目を輝かせているリギルの顔が映り込むほど丁寧にカットされている。


 値段は……安いもので銀貨二〇枚、高いものだと金貨一〇枚もする。だが、今のリアムの懐具合では三人に買ってやることが出来る。


「気になりますか?」

「あ、っと、俺じゃなくてこの子達が……」

「あら……」


 その一言で妖精に気付いた店員は、少し考えてリアム達を店内に誘った。


「商品はこちらにもありますので、気になったものがあればどうぞ、手に取って見てくださいね。少しですが値引きしますよ」

「あの……いいんですか?」

「はい。妖精に気に入っていただけたなら宣伝にもなりますから」


 店員はそう言うと笑顔を浮かべ、店内の商品を一つ一つ紹介し始める。ネックレスや指輪、髪留めなど、どれもが一点もののように見えるのに、店員はリギル達に試着を勧めている。


『「これがいいわ! 綺麗で可愛くて、気に入ったのよ」』

「…………綺麗」


 長時間悩んだ末にリギルが選んだのは、昼と夜とで色合いが変化する宝石の髪留めだ。

 昼間はエメラルドのように輝き、暗い夜になると透き通った水のように変化する。これが大変気に入ったようで、リギルは何度も鏡の前でポーズを決めてはにへらぁ……と笑顔になる。

 リアムが似合っているよと褒めると、リギルはだらしない顔になるほどの笑みを浮かべた。


 メルディとルーも髪留めを選んだが、メルディのは銀細工の土台にアメジストが載せられている。薔薇のような装飾と合わさって、まるで一輪の花が咲いたように見える。

 ルーが選んだ方は、可愛らしい小動物の形に加工された宝石がそのまま髪留めとして機能している。半分液体のようなルーがどうやって身に付けているのかは本人以外分からないし、リアムもそこは慣れているため気にしていない。


「お会計は金貨一枚ちょうどです」


 値引き額は銀貨二〇枚のようだ。かなりの値引きである。

 城塞都市で得た収入があるため問題なく払えるが、それでも痛い出費だ。なにせ、金貨は一枚あれば一ヶ月も暮らせるのだから。

 しかし後悔はしない。妖精達が喜んでいるのは、リアムにとっても喜ばしいことだからだ。彼女達の幸せはリアムにとっての幸せになる。


 店を後にしてからも、リアム達は観光を続けた。まだ西側の一部しか訪れていないのだから、もっと見て回りたいと思うのは当たり前の願望である。

 美味しそうな匂いに釣られて屋台で食事を摂ったり、広場で催されている演劇を楽しみ、暗くなれば宿に戻って夜を明かす。


 三日目も同様に観光に繰り出し、今度は衣服を扱う店や小物を売っている商店に訪れた。

 が、趣味が合わなかったため衣服は買わず、小物類も今は買わなくてもいいやと後にした。


『「……あー、楽しかった!」』

『「そうね、楽しかったわ」』

「…………また今度来たい」


 その日の夜。ぼふんとベッドに飛び込んだ妖精達は、あの店が良かった、あれが楽しかったと語り始める。

 王都での観光を楽しめたようだ。


「それじゃ、明日は魔導院に向かうつもりだけど、いいよね?」

『「ええ、いいわよ。面白いものが沢山ありそうだもの」』


 リギルにとって――いや妖精達にとって、人の作るものは驚きに満ちている。それは魔法も例外ではなく、魔導院がどういった場所なのか、彼女達は密かに楽しみにしていた。


 魔導院には魔導師と呼ばれる者達が在籍している。《腐敗の扉》を破壊するために行動を共にした類稀なる“無尽卿”は、魔導師と呼ばれるうちの一人であり、リアムは自分もあの領域に辿り着くのだと意気込んでいる。


 妖精から教わった幻想魔法(パンタシア)を扱えるとはいえ、人間の魔法使いとしてリアムは未熟も未熟だ。

 スフィア・ノルンのように、巧みに魔法を振るえるようになりたいと、リアムは思う。強くなって、もっともっと世界を見て回りたいのだ。


「(……どれくらい修練すれば、あんなに卓越した魔法を使えるようになれるんだろうな)」

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