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妖精に育てられた魔法使い  作者: こ~りん
三章:魔導院入学試験
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王都への道中











『学べ。知恵無き者に深淵を覗く資格無し』


 魔導院が掲げる言葉の一つである。

 どれだけ優れていようとも、他者から学ぶ姿勢を示さない者に魔導院は門を開かない。そして、学ぶ意欲がある者こそを魔導院は歓迎する。

 たとえそれが魑魅魍魎の類だとしても、魔導院は平気で呑み込むだろう。なぜなら、魔導院とは魑魅魍魎すら恐れ戦く狂人の巣窟でもあるのだから。


 ――さあ、そんな魔境を前にして……「それでも私は」と覚悟を決めた者だけが門を叩くといい。


――――――


「――こうやって歩くのは久しぶりだね」

『「そうね、とても楽しいわ」』

『「たのしー!」』


 城塞都市クロフォードでの盗賊退治から一週間。数日の間あの街に留まったが、冒険者組合からの報酬を受け取った後は領主に呼び出されたり、戦う術を持たない住人から持て囃されたりと、中々に濃い体験をした。


 その中でも領主からの呼び出しは、リアム達にとって苦い思い出となる。


『「ねえリアム、今からでも遅くないのよ? あの人間の城、吹き飛ばしちゃいましょう?」』

『「そうだそうだー!」』

「吹き飛ばしたら、もっと面倒なことになるんじゃないかな……?」

『「……そうだそうだー」』


 とはいえ、リアムも本心はリギルに賛同している。なにせ、『この街にいるということは私の兵も同然! その手柄は私のものだ! お前を私の騎士としてやってもいい――いやなれ!』と出会い頭に告げられたのだから。

 断ろうとしても、『貴族に逆らうのかぁ? 子爵である私に逆らうということは、即死罪ですら生ぬるい判決が下るぞぉ?』と脅迫する始末。


 そもそもの話として、濡れ衣を着せて冤罪にするのは一国の王ですら許されないのだが……

 しかし、どれだけリアムが断ろうと、かの領主は同意する必要の無い契約を無理やりに迫り、妖精達がザワザワと怒っていることにすら気付かない阿呆であった。


 ――尤も、類稀なる“無尽卿”と名高きスフィア・ノルン()()が直筆した魔導院への推薦状(在学中は資金面での支援もする旨を添えて)を無視できるほど馬鹿ではなかったが。


「っと、魔物……だね」


 そうこう話していると、前方に魔物がいることに気が付くリアム。

 呑気に草を食むその魔物は、ホーンラビットと呼ばれる小さな魔物だ。一部では一角兎とも呼ばれており、飼い鳴らせば比較的大人しくなる魔物としても知られている。


 野生のホーンラビットは被捕食者の立場にいるからか、よく草を食んでいる姿が目撃されるが、雑食であるため弱っている動物や人間も食べる。

 ちなみに、その肉はさっぱりとしていて栄養豊富だそうな……


『「……焼けば美味しいかしら」』

「たしか、角が銅貨五枚で売れるんだっけ……二匹だから銅貨十枚か」


 ホーンラビットはゴブリンのように敵対的な魔物ではないが、食用としても薬の素材としても重宝されているため、討伐する場合は保存容器に詰めることが推奨されている。

 “首狩りバンデッド”から鹵獲した馬を売ったお金で、こういった道具類をリアムは揃えている。あまり容量は大きくないが、二匹分であれば十分に足りる。


 ちょっとしたお金にもなり食料にもなるため、狩らない選択肢は無かった。


『「――いただきまーす!」』

『「美味しいわリアム!」』

「……美味しい」


 三者三様の反応を見せる妖精達。

 木の枝を削って作った串に刺して塩をまぶしただけだが、食事そのものが娯楽である彼女達にとって、どれだけ質素でもリアムの手作り料理ならば極上の贅沢である。


 これだけ喜んでもらえると、リアムもつい頬が綻んでしまう。

 食べ終わった後は、臓器や骨などの可食不可能な部位は纏めて地面に埋め、角や毛皮は可能な限り綺麗にして瓶に詰める。


「さ、行こうか」


 リアム達が向かっている先は王都。リンフォードの王都リンフォードであり、魔導院に向かうついでに王都の冒険者組合に寄ってみようと考えている。

 城塞都市クロフォードでは“首狩りバンデッド”を倒した冒険者として有名になりつつあるが、それ以外の街ではリアムはただの冒険者である。そして、冒険者の仕事は組合が斡旋する依頼をこなすことだ。

 組合に張り出されている依頼次第では、しばらく王都で活動してもいいかなと、リアムは思っているのだ。


「あの丘を越えたらもうすぐ王都らしいね。……少し飛ぼうか」


 少し大きな丘の頂上まで飛ぶ。街道が敷かれているため丘の先には人通りがあるが、丘のこちら側にはリアム達以外に人影は見当たらない。

 丘を越えた先には東西南北に延びる街道と、その上を移動する馬車や人の姿が見受けられた。徒歩なのはリアムと同じ冒険者だろうか。それとも旅人? どんどん想像が膨らんでいく。


 逸る気持ちを抑えてリアムは丘を降る。まるで、都会に憧れて田舎から出てきた少年の様。

 端から見ればワクワクが隠せていないようで、すれ違う冒険者や商人に微笑ましい目で見られながらリアムは王都の検問の列に並んだ。

 門を通り抜ければ王都である。人と物と政治が集まるリンフォードの中心地に足を踏み入れるのだ。

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