表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妖精に育てられた魔法使い  作者: こ~りん
二章:首狩りバンデッド
22/38

殺し合い、戦場にて その二

「――くそっ、くそっ!」


 狩りのはずだった。少なくともそう思っていた。弱者を嬲るのは気持ちが良く、自分の力を過信する冒険者を殺すのも気持ちが良かった。

 そして何よりも、それによって絶望する女が良い。恐怖に震えて涙を流す姿に、男は興奮する質であった。


「(どうして……どこで間違えた!? 下準備は出来ていた。街を落とすのも時間の問題だったはずだ……! 帝国からこっち、他の盗賊も呑み込んで俺の組織は強くなったはずなのに……なぜ!?)」


 しかし現実はどうだ? また獲物が現れたと油断して狩りを始めた結果がこれだ。

 魔法使いの一人や二人、敵ではなかったはずなのに……首は狩れず、下っ端も大勢倒された。戦力激減だ。こんなのでは街を占領しようにも数が不足してしまう。


「(せっかくよお! 俺のための理想の街が手に入ると思ったのによ! 女どもが俺にひれ伏して奉仕する夢見てぇな理想が叶うと思ったのに……どうして失敗したんだよ!)」

「頭ぁ! やつら追いかけて来ますぜ!」


 “首狩りバンデッド”の頭であるその男は、背後から追いついてきた部下の報告で更に頭を悩ませる。

 使える部下は二〇と少し。他の下っ端は残しても飯が無駄になるため、せいぜい足止めとして使い捨てるしか思いつかない。念のため林の中に残した数名の騎馬がいるが……それもどこまで通用するか。


「詳細は!?」

「あの妙な魔法を使う魔法使いとアウトロー共が数人馬に乗って! あと見えないナニカですぜ!」

「見えないナニカだあ!?」

「突然竜巻が起きたり、局所的な豪雨で足を掬われたり――」

「ああもういい! 見えないならほっとけ!」

「了解でさあ!」


 それから林を抜け、更に別の林の中へ駆けていく“首狩りバンデッド”達。元々の勢力で言えばこの二〇と少しの集団だが、帝国から逃げる道中で併呑した他の盗賊がいなくなるのはかなりの痛手だ。なんとかして数を揃えねばならない。


 一方、リアムは空を駆け彼らの背後を追い続けていた。アルデバランを含む“月下狼”の一部とイルムルンリガルドが馬に乗り、ヴォールは自らの脚でそれに併走する。


「ヴォールさん、イルムさんは右に……アルさん達は左に旋回しながら進んでください! もうすぐぶつかります!」

「心得たのだ!」

「おう!」


 集団が二つに分かれて林へと侵入する。

 城塞都市に近い右側に実力のある二人を配置し、残りを左側に回すことで賊が逃げにくくなるよう誘導したのだ。


『「あっちのは大体殺したわよ。あとはこっちだけね」』


 ぶわっと風に乗ってリアムの元に戻ってきたリギルが、バラバラに逃げていた集団を殺し終えたと告げる。生き残っていたとしてもあちら側に残った味方が片付けるだろう。

 わざわざ生き残りを探し出してトドメを刺すだけなのはつまらないので、それならまだ楽しそうなこっちに来たというわけだ。ルーとメルディもいる。


「……――見つけました! 十時の方向!」


 林の中という環境では視認性が落ちるが、それでも空を飛べるのは情報面で有利を取れる。頭を戦闘に十時方向に逃げる集団をリアムは発見した。

 声送りの魔法を併用して伝えると、アルデバラン達は即座に武器を抜いてその集団へと襲い掛かる。


「そら!」

「ちぃっ!」


 頭同士の対決となったみたいで、武器がぶつかり合った衝撃で落馬しそうになった二人は自ら馬を降りて再び攻撃し合う。

 それ以外の者達は馬に乗って駆ける“首狩りバンデッド”を追い、林の中を右へ左へと走る。


「――しまった罠だ!」

「っ……馬上槍か!」


 が、突如脇から飛び出してきた重装備の馬に撥ねられる。重装備の馬の上に乗る者はその手に馬上槍を握っており、そして重装備の鎧を身に着けている。

 金属鎧なのを見るに、“首狩りバンデッド”の中でも選りすぐりの集団なのだろうか。悪路をものともせず器用に駆け回っている。


 対して“月下狼”は一人が引っ掛けられて重傷、一人が撥ね飛ばされて即死。片方は銀等級相当の者だったが、不意打ちに対処しきれなかったようだ。


「いたぞぉ! 野郎共、矢を射掛けろ!」

「さすがに見つかるか……『■■(ルー)』、豪雨を降らせて妨害を。『■■■(リギル)』は竜巻を起こしてくれるかい?」

『「分かったの!」』

『「そのくらい簡単よ」』


 反転した一部の賊達は頭上のリアムに気付き矢を射掛けるが、彼は舞うように身を捻って躱すと妖精に指示を出した。

 水の妖精であるルーは、その名の通り()()()()()()()()()()を自由に扱える妖精のため、彼女が振らせる豪雨は嵐のような力強さを内包している。

 そしてリギルの生み出す竜巻は、狂風の名の通り抗いようのない暴力であり災害に等しい。


「(アルデバランは多分大丈夫だから……)先に騎馬を倒そう。“月下狼”の人達が苦戦してる」


 赤子の手を捻るよりも簡単に蹴散らすと、今度は騎馬に襲われている場所へ急行する。

 よほど訓練されているのか、“首狩りバンデッド”の騎馬隊は騎士顔負けの練度を有していた。整備されていない林の中であれだけ駆け回れるのなら盗賊なぞする必要無いだろうにとリアムは思う。

 しかし、思うだけで手加減も容赦もしない。敵対し一度は命を狙われたのだから殺すのは道理である。


「……! リアムさん、助かりましたぜ!」


 一旦上空に浮上し、林の中からではとても見えにくい頭上から騎馬隊の一人を一刀両断する。

 さすがの判断と褒めるべきか、後続の賊共はすぐに分散してリアムを囲うように動く。しかし、妖精達が魔法で編んだ網にほぼ全員が引っ掛かり、メルディの魔法によって命が尽きていく。

 残った一名も投石紐で投擲した石で仕留める。魔法で速度を上げていても殺しきるには不足だったが、落馬した勢いで首が折れ曲がったため生きてはいないだろう。


「負傷者は何人いますか?」

「三人が死亡、二人が大怪我、二人は軽傷ってとこだ」

「……東側に逃げたのはヴォールさんとイルムさんが片付けると思うので、皆さんは負傷者と遺体を運んで撤退してください。残りはそう多くないはずです」


 “月下狼”が撤退したのを見届け、リアムはアルデバランの元に向かう。急がないのは彼の力を信じているのもあるが、リギルが逐一伝えてくる様子から心配要らないと確信しているからだ。


 そして西側、林から抜けてすぐの場所でアルデバランは“月下狼”の頭を見事打ち倒していた。死体の損傷具合とアルデバランの装備の破損を見るに、相当の激戦が繰り広げられたのだろう。

 彼は契約を交わしたときのような笑みを浮かべると、「依頼完了だな」とリアムに告げた。


「……ええ、そうですね」


 死んでいるのを確認し、リアムはその言葉に同意した。“首狩りバンデッド”が討伐された瞬間である。あとは生き残りを捕縛、もしくは仕留めるだけであり、城塞都市クロフォードを巡る騒動は幕を引くだろう。

 少し呆気ない終わり方な気もするが、人の世界とはそうゆうものだ。なにもかもが劇的というわけではなく、終わるときは非常に呆気ないのが常なのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ