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妖精に育てられた魔法使い  作者: こ~りん
二章:首狩りバンデッド
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殺し合い、戦場にて その一

 朝日が昇る。綺麗な朝日だ。


「全員集まりましたか?」


 西の門の内側で、リアムは全員集まっているか確認する。

 いよいよ“首狩りバンデッド”を討伐するのだ。銀等級相当が一〇名以上……失敗出来ない人数である。負けたら城塞都市に未来は無い。


「アルさん、衛兵達には?」

「おう、伝えておいたぜ。俺らが注意を引いている内に、少数で近くの街に救援を依頼するってよ」

「分かりました(……保険はこれぐらいしか出来ないけど。あとは上手くいくかどうか)」


 武器を構える。各々が、各々の武器を。

 その中でもリアムは異質である。魔法使いだが杖を持たず、その手に構える武器も護身用の十手。正面から戦うには些か以上に劣る装備だが、そんなことを心配する余裕は無い。

 門が開く。外に出ればいつ襲われるかも分からない状況で、いまさら準備不足だと唱えるわけには行かない。


 まずはリアムが一人、街道を駆ける。徐々に加速していくその姿は、もはや大地を駆ると表現しても良いぐらいだ。


「…………来たね」


 街から一定以上離れると、わらわらと賊が姿を現す。穴を掘って身を隠していた者、窪みに潜んでいた者、林の影に隠れていた者……そして丘向こうから馬に乗って駆けてくる者。まるで誰かから合図を受けたかのように、タイミングが合っている。

 装備は以前見たときと変わらない。馬の数が増えたか……? と感じる程度である。


「その首貰ったー!」

「――頼むよ、三人とも」


 凶刃が迫る。革製の防具を着込んだ賊がその長剣を振りかざす。鋭利な刃だ。よく手入れされているのが分かるし、それが末端まで行き届いているのは脅威である。

 ……しかし、無駄だった。


「……は?」

「はあ!」


 よく手入れされていたはずの長剣は、リアムに届く前にボロボロに朽ちて風化した。直前まで存在していた剣が消えたことにより男は体勢を崩し、リアムがその男の胴を風で刎ねる。

 以前ゴブリン相手に使ったことのある魔法……水を芯に、風を刃に見立てることで十手を長剣に変貌させる妖精魔法だ。


 鮮血が飛び散るが、リアムがそれを被ることのない様に妖精達が守る。


「囲め囲め!」

「数で押せー!」


 だが、賊達は味方が死のうとお構いなしだ。仲間だった死体を平気で踏み、リアムを殺そうと襲い掛かる。

 リアムは少しずつ後退しながら機を窺う。まだ遠い、もう少し。


「妙な魔法を使う! 近接気を付けろ!」

「死ねえ!」

「死にませんし、殺されるつもりもありませんよ!」


 軽快な動きで凶刃を躱し、敵陣の真っ只中でリアムは舞う。


「くそっ! 当たれ当たれぇええ!」

「おい、弓を乱射するな!」


 放たれる矢は掠め取って敵に撃ち返し、攻撃を躱すと同時に剣を振るう。

 次々と賊が死ぬ。しかしリアムも楽ではない。複数のことを同時に行うのだから脳への負担が強くなり、時間が経つと苦しくなるのだ。


「よぉし、殺――」


 遂に躱しきれない凶刃が現れる。その刃はリアムの首へと吸い込まれるように動き……そしてその後方から放たれた矢で腕ごと刃が逸らされる。


「今です!」

「「「「うぉおおおおお!」」」」

「我の出番だな!」

「なっ、いつの間に!?」


 リアムが集団の中にいたこと、そしてその首に執着しすぎていたこと。原因はいくらでもあるが、これがリアムの作戦である。

 自分が囮となり“首狩りバンデッド”を可能な限り街の近くへ誘き寄せる。その間に他のメンバーは広く陣取り、リアムを囲う賊共をその周りから更に囲うのだ。


「さあ我こそはイルムルンリガルド! いざ勝負ー!」


 その中でもイルムルンリガルドやヴォールなど、個人で優れた実力を持つ者は集団に突っ込むことで撹乱し混乱を促す。

 イルムルンリガルドの魔剣は巨大であり、集団の中で振り回されればひとたまりもないだろう。現に、彼女が一回振るうごとに二、三人の賊が真っ二つとなるのだから。


「ちぃっ! 退くぞ!」

「させっかよ!」


 金属鎧を着た内の一人が撤退しようと賊を動かすが、アルデバランがそれを強襲して動きを乱す。

 見事な身の躱しようで、彼が攻撃を避けると同時に鎖鎌、投げナイフ、ボーラなど様々な武器や道具を活用して予測不可能な一撃を与え続けている。しかも攻撃しなければ積極的に隊長首を狙い、攻撃しようにもちょこまかと動くせいで狙いづらい。


 他にも、呪術師であるホロウが賊同士の繋がりを利用して呪いを送り込んだり援護している。呪術は魔法と違い触媒は対象が必須となるが、彼女は更に縁を利用した呪いである呪法まで会得しているらしい。


「道空けろ!」

「うっせえお前が何としろ――ぎゃあ!」


 戦場の一角で激しい爆発が起こる。


「ふはははは! 魔剣シュルシャガナの力とくと見るがいい!」


 イルムルンリガルドが魔剣の力を解き放ったらしい。彼女の魔剣は漆黒の刀身に雷のような紋様が深紅色で浮かび上がっており、目に見えて分かるほどの熱を発している。


「食らえ!」


 そして彼女が魔剣に大量の魔力を注ぐと、ただでさえ大きい魔剣が更に巨大な炎の刃を纏ったではないか。

 その炎はオレンジ色に白く輝き、地面に向けて力一杯振り下ろすと辺り一面を爆破させる。威力は地形を変えるほどであり、大量の土砂が空中に舞い上がった。


「ふはははは! まだまだ行けるぞ!」


 続いて三撃、四撃と爆破を重ねる。その爆発の熱量と威力の前では、ただの金属鎧は邪魔な鉄塊に生まれ変わる。

 彼女の周囲は熱すぎて、賊共の装備が溶け始めたのだ。


「ちょっ、こっちまで被害来るんだけど!?」


 ……味方にまで被害が及び始めたが、すぐに離れたため大事にはならなかったようだ。


「《燃ゆる塊、炎塊よ》〈燃焼(フラムモー)〉!」

「そぉらっ!」


 彼ら以外のメンバーももちろん着々と成果を上げる。

 シュナイダー兄弟は弟の魔法使いが敵を怯ませ、兄の戦士がそこを大剣で突くことで賊を打ち倒す。


「次!」

「はいよっ!」


 エーリカは即効性のある毒物をその場で調合し、一人一人確実に葬る。材料は部下から次々と渡されるため、枯渇しない限り戦えるだろう。


「お、アタシ狙いっすか? でも残念、これでも強いんすよ!」


 ホロウは意外にも格闘が出来るらしく……いや、獣人種なのだから出来て当然と言える。呪術師だから接近すれば殺せると舐めて掛かった賊は、首をへし折られて死んだ。

 しかも、その死体を材料に呪術を発動させ、近くにいた他の賊にも死を伝播させる。


『「一方的ね! これなら勝てるんじゃない?」』


 無論リアム達だって働いている。囮の役目は終わっても戦闘が終わったわけではないのだから、遊撃のような立ち回りで賊の数を減らしている。

 リギル達妖精も場の空気に当てられたのか、嬉々として賊の命を絶っている。首を刎ねられ即死した者や血を沸騰させられて死んだ者はまだ運がいいだろう。


「……死んで」

「ひぎゃああああ!?」


 メルディは腐敗、劣化、風化など……とにかく死を誘因する力を有しており、彼女が魔法を使うと装備はボロボロに崩れ、人体はミイラのように干からびたりグジュグジュに溶け落ちたりと、とにかく悲惨な死に方をする。

 未だに何を司っているかは不明だが、死に関係するのは確かだろう。もしくは、《腐敗の扉》に影響されたか。


「――とにかく逃げろ! 林に駆け込めぇ!」


 戦闘開始から一時間近く経った頃、味方側にも負傷者が出始めた。負傷者が出たことで生じた包囲の穴を突くように“首狩りバンデッド”は撤退し始める。


「逃がすな! 追うぞ!」

「馬に乗れるやつは動ける馬奪って追え! リアムさん頼みます!」

「任されました。『■■■(リギル)』、二手に別れて妨害しよう」

『「分かったわ!」』

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