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妖精に育てられた魔法使い  作者: こ~りん
二章:首狩りバンデッド
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“首狩りバンデッド”討伐作戦会議

 集まったメンバーはリアムを含め一五名ほど。ほぼ全員が銀等級相当の実力を持っておりらその内“月下狼”の構成員は九人ほどになる。


「よし、んじゃ先に名乗らせてもらうぜ。俺は“月下狼”の頭をやってる……アルとでも呼んでくれ。今回はそこの魔法使いに雇われて動いてる。それから――」

「同じく“月下狼”のミカ。普段は参謀として動いています。他のメンバーは省略させて頂きますね」


 “月下狼”からは頭のアルデバランと参謀のミカ(エーリカ)が代表して名乗り出た。


 アルデバランは細身だが引き締まった肉体の持ち主で、得意とくる武器は特に無いらしい。どんな武器でも扱う我流の武術があるそうで、むしろ癖のある武器の方が使いやすいとのこと。

 エーリカは一言で述べるのなら美人の魔法使いだ。適性は闇属性らしく、弱体化魔法や毒性のある魔法薬を作れるとのこと。


「“月下狼”って言えば、かなりグレー寄りな傭兵組織だろ? よく動かせたな雇い主さんよ」

「そこは、伝手とお金ですね。……順番的には俺ですか。今回皆さんに協力を募らせて頂きました、冒険者のリアムです。鉄等級の魔法使いですが、妖精達の協力もあるので戦力として役に立つと思います」


 全員の視線が集まっていたのでリアムが自己紹介をする。

 等級には“月下狼”とヴォール以外が驚いたが、そもそも肩書きだけで判断する浅慮な者達ではない。複数の妖精と契約しているのなら戦力として期待できると、等級とは別の部分で判断する。

 それに、“首狩りバンデッド”討伐作戦において、リアムは彼らにとって雇い主だ。報酬を前金で貰っている以上不平不満を垂れるつもりは無い。


「……ヴォールだ。冒険者をやっている。等級は銀等級だ」

「お、あんたが傭兵界隈でそこそこ有名なヴォールか。なんだ、今は冒険者やってんのか」

「……ああ。潰れたからな」

「あー、傭兵やってっとよく聞くんだが、ヴォールんとこも潰れちまったか」


 どうやらアルデバランはヴォールのことを、名前だけだが知っていたらしい。

 曰く、傭兵時代は戦斧を振り回して敵陣に突っ込み、そうでなくても見事な判断力と決断力で戦果を挙げていたようだ。


 ちなみに、傭兵用語で潰れるとは、傭兵としてやっていけなくなったり盗賊に堕ちた場合に使われるそうだ。


「んじゃアタシっすね。アタシはホロウ・ルナールって言うっす。冒険者もやってるっすけど、本業は流れの呪術師っすね。頼むっすよアルさん?」

「おう、今回の件が解決したら向かい入れてやるさ」


 ホロウ・ルナール。見ての通り狐の獣人種であり、魔法ではなく呪術を用いた援護が得意とのこと。また、呪術なので戦闘以外にも色々と出来るそうだ。

 快活な雰囲気とは裏腹に、かなりエグい行為もオッケーとのことで……。アルデバラン達は裏側の仕事が捗るだろう。


「最後は我だな! 我こそはイルムルンリガルド! 長いからイルムでいいぞ! そして我の魔剣の銘はシュルシャガナ! 強いのだぞ!」


 最後に名乗ったのは魔人種の少女だ。側頭部から後頭部にかけて三対の捻れた角が生えており、身の丈と同じぐらいの大きさの大剣を背負っている。

 魔人種は魔剣と共に生まれ育つと言われており、彼女のシュルシャガナもその類だろう。


「――では作戦会議に移りましょう」


 全員の自己紹介が終わり、リアムが会議を始める。


「んじゃ、まず奴らの情報からだな。“首狩りバンデッド”について、俺らで調べた情報がある」


 エーリカが机の上に地図を広げる。それは一般に流通している地図の中で最も精度が高い高級品だった。


「奴らは元々は帝国領土で活動していた盗賊だ。だが、帝国が騎士団制度を施行して盗賊狩りを始めたからか、奴らは王国に逃げて来た。で、この城塞都市に辿り着いて今に至る」

「単純に疑問なんすけど、何で逃げて来たんすか? 街一つ追い詰められるならわざわざ王国に来る必要なんて……」

「違う逆だ。逃げて来たから追い詰める戦力を得たんだ奴らは。騎士団が取りこぼした残党、同じく帝国から逃げた盗賊、その他諸々を取り込んで纏め上げたんだろう」

「つまり、元々はバラバラの集団だったってことっすか」

「そうだ」


 アルデバランの説明にホロウが納得する。そしてそれは、有益とまではいかないが少しの希望を持つには十分な情報でもあった。

 元々バラバラな集団だったのなら、少しずつ崩すことが出来るのでは? と考え始めたのだ。


「作戦はどうしますか? 私達“月下狼”を主軸として一点突破するか、分散するか……」

「一点突破!」

「分散か……」

「兄貴、リスクが高ぇ。分散よりは固まった方がいい」

「遠くからチクチク攻撃して数減らすってのはダメなんすか?」


 それぞれがそれぞれの意見を出し、議論百出の様相を呈する。

 大まかに、固まって一点突破するか分散して各個撃破するかで意見は別れている。


「……まず、目標を再確認しましょう。俺達は“首狩りバンデッド”の討伐が目的です。そして彼らには数の力がある。そうですね?」

「ええ。数で言えばあちらが上でしょう。その分こちらの質は高いですが……」

「――いえ、相手が勝っている可能性も考えましょう。そうすると、分散すれば逆に不利になり、各個撃破されやすくなります」


 リアムの指摘に“月下狼”とヴォール以外の面々が静かになった。“首狩りバンデッド”に城塞都市を追い詰める力があっても、流石に自分達が上回っていると半ば確信しきっていたらしい。

 しかし、指摘された内容を踏まえて考えると迂闊な行動は出来ない。返り討ちにされればされるほど、城塞都市クロフォードは追い詰められるのだから。


 それからも会議は続いた。結果として、一箇所に集まって戦うのは決まったのだが、今度は誰がどの位置で戦うかで揉めだした。

 具体的には……


 先頭に立ってデカい一撃をぶちかましたいとイルムルンリガルド。

 いやいや、俺達がまず一撃を与えて……とシュナイダー兄弟。

 いっそ“月下狼”全員で突撃するか? とアルデバラン。

 俺が突っ込んで連携を崩す方法もあるが……とヴォール。


「……では俺がやりましょう。囮を兼ねて賊を引き寄せます。離脱する際に魔法を放てば動揺させれるでしょうから」


 収まるどころか白熱する会議に、ならば俺がやるとリアムが発言する。


「いやいや、言っちゃ悪いが魔法使いが単独で囮になってもやられるだけだ。ここは俺達シュナイダー兄弟に――」

「いえ、私達“月下狼”は賛成です。ここは彼に任せるべきかと」

「なぬ!? 我の出番は無いのか!?」

「いえあります」

「ならよし!」


 シュナイダー兄弟は魔法使いが単独でいることの危険性を説いたが、他のメンバーはむしろリアムならば任せられると納得して引き下がっている。

 イルムルンリガルドのみ、自分の出番があるならそれでいいやと楽観的な思考だが、“月下狼”やヴォール、そして何故かホロウもリアムの意見に賛成している。


「だが、仮に一撃当たえられるとして、どうやって離脱する? 相手は馬を持っているんだぞ?」

「そこは大丈夫です。どれだけ足が速くても、空には届かないでしょう?」


 なお引き下がる様子を見せないシュナイダー兄弟に、リアムは口で言うより直接見せた方が早いと、その場で浮かんで離脱の仕方を実践してやる。

 これにはさすがに反論できないようで、追いつかれずに逃げる方法があるなら仕方ないと、ついに彼らもリアムの意見に賛成を示した。


「…………こんなところか。よし、決行は明日だ! 全員明日に備えて休めよ!」

「おう!」

「分かったぜ!」

「了解っすー」

「分かったのだ!」

「……うむ」


 最後にそれぞれの役割を決定し、アルデバランが会議の終わりを告げる。陽が落ち切る前に全員が臥所に戻り、翌日の戦いに向けて気力を蓄えるのだ。


 ――ちなみに、作戦会議が終わった後で魔法を使える者達がこぞって方法を聞きに来たが、リアムが妖精に……と口にした時点で諦めた。

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