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妖精に育てられた魔法使い  作者: こ~りん
一章:西の辺境の魔法使い
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閑話:ある男の手記

【○月△日】


 遂に憧れの魔導院に入ることが出来た。あの偉大なる“隠匿卿”のように、世界に名を轟かせる魔導師になれるよう精進するつもりだ。


【○月△日】


 適性検査、というのがあるようだ。なんでも、どの属性の魔法が扱えるかを調べるらしい。私は土属性しか使えないが、もしかしたらそれ以外にも使える属性があるかもしれない。


【○月△日】


 私の適性は土と闇の二種類だけだった……魔法使いとしては一般の範疇らしい……

 しかし、まだ可能性は残されている。無魔法(ニヒル)に分類される魔法ならば、適性に関係なく扱えるはずだ。


【○月△日】


 今日は実践授業だった。どうやら私の土魔法は他よりも洗練されているらしい。とはいえ、やはり未熟な魔法使いにしては、という枕詞が付くのだろうな。


【○月△日】


 私を憐れんだらしい研究員から、ゴーレムを造る魔法を教わった。正確にはその魔法の理論であり、まだまだ空論の域を超えないが……それでも何も知らないよりマシだ。それに、この理論が確かならば私でも……もしかしたら完成にこぎつけるかもしれない。


――――――


【○月△日】


 遂に理論が完成した! ここまで半年以上掛かったが、ようやく人型のゴーレムを造ることが出来たのだ!

 全てを一気に造るのではなく、人体を参考にパーツ毎に成型し、闇属性の魔法の理論を応用して神経を再現、それらを組み合わせることで動くゴーレムが完成したのだ!

 まあ、まだ術者の命令が無ければ動かないし、耐久性にも難があるが……それでも大きな一歩だ。


――――――


【○月△日】


 人間とほぼ同じサイズのゴーレムを造れるようになった。耐久性も向上し、簡単な作業なら一々命令しなくてもこなせるゴーレムだ。これは素晴らしい進歩だ。

 論文にして提出すれば、魔導師には届かなくとも研究員の地位は与えられるかもしれない。


【○月△日】


 …………緊張した。何せ、魔導師と研究員の前で発表するのだから。しかし私の論文は概ね好評だった。

 それに、「まだ研究員の地位を与えるには功績が少ないが、これをより進歩させることが出来たなら与えよう」という言質も頂いた!

 よぅし! 頑張るぞ!


――――――


【○月△日】


 私にこの魔法の理論を教えてくださった研究員と再開した。この理論は、他にやることがありすぎて手が回らなくなった結果泣く泣く諦めた理論だそうだ。私の成果を聞いて、まるで我がことのように喜んでいた。


【○月△日】


 昨日再開した彼からの助言を試してみることにする。

 ゴーレムに魔法を使わせることは出来ないか? というものだ。これまで以上に大変だろうが、努力し続ければ必ず実を結ぶはずだ。


――――――


【○月△日】


 まさか一年近く掛かるとは……しかし、術者と同じ属性ならゴーレム経由で発動できるようになった。当初の方向性とは微妙にズレているが、寧ろこっちの方が有用性が高いと私は考える。

 戦場寄りの考えだが、接近戦が苦手な傾向にある魔法使いからすれば垂涎もののはずだ。


【○月△日】


 論文にして提出した。二回目とはいえ、やはり緊張する。しかし、前回よりも好評で、特に戦闘経験のある者達からは素晴らしいと賞賛された。

 そして遂に……遂に研究員の地位が与えられた! 研究費用が出るようになったのだ! これで更なる研究が出来る!


【○月△日】


 研究員には専用の部屋が与えられる。いわゆる工房だ。私の要望もちゃんと通っていて、巨大なモノの搬出入が可能な入り口が別に付いている。


――――――


【○月△日】


 ふと、私は闇属性の魔法をどの程度使えるのか気になった。

 基礎の魔法を含め色々試してみた結果、こちらもかなり得意なようだった。適性は二種類のみだが、その質はかなり高いものだったらしい。


【○月△日】


 先日の結果を踏まえて、ゴーレムの疑似神経を改良することにした。それと私自身の強化も。


【○月△日】


 改良は全く進まないが、私自身の強化は驚くほどすんなり進んでいる。

 闇属性の魔法は精神に作用するものが多いため効果はあまり実感出来ないが、これだ! という感覚が増した気がする。……魔物相手に試してみるか。


――――――


【○月△日】


 様々な魔物相手に私の魔法を試してみた。低位の魔法は思考を乱したり意識に空白を挟む程度だが、その効果はかなり顕著に現れた。

 それと、派生である死属性の上位魔法も、私はかなり上手く扱えるようだ。元々試すつもりの無かった魔法だが、この結果ならこちらの研究も進めていいだろう。


――――――


【○月△日】


 私が死属性の魔法を上手く扱えると知ってから三年が経った。

 ゴーレムの改良は進み、これが完成版だと胸を張って言えると自負している。土と闇に適性のある魔法使いに教えよう。


――――――


【○月△日】


 驚くべきことが発覚した。闇属性の派生である死属性には、なんと不死者化するための秘術があるということだ! これが扱えたならば、時間も老いも気にしなくてよくなるだろう。

 しかも、これを応用して属性の適性を付け足すことも出来るという。

 ……研究しない訳にはいかないだろう。


――――――


【○月△日】


 論文を提出した。死属性の応用による適性の追加、だ。

 これは死者の肉体を取り込み、本来は適性が無いはずの属性も扱えようにするという理論だ。些か飛躍しすぎた感はあるが、思考実験は数えきれぬほど行い、魔物での実験は三〇回も行った。

 ……しかし不評だった。こんなものは必要無いとバッサリ切り捨てられた……。なぜだ……どこが悪かったというのか……


――――――


【○月△日】


 ……魔導院を追放された。何とか認めてもらおうと試行錯誤を繰り返したが、日に日に悪化していくだけだった。

 これまでの成果も、工房も、何もかも取り上げられた。


――――――


【○月△日】


 一年掛けて私の工房に相応しい土地を発見した。思わず近くにいた冒険者を殺してしまったが、実験の材料が手に入ったと思えばいい。

 それよりも、まさかリンフォード王国の領土内に“アーティファクト”があったとは……


【○月△日】


 この“アーティファクト”の仕組みは大体理解した。これは周囲から死を吸い上げて、それを内部に蓄積し純化するものだ。魔力源が妖精というのが少し怖いが……助け出されていないということは、妖精達にとってこの妖精はどうでもいいのだろう。

 それよりも、これをどう活用するか考えねば……


――――――


【○月△日】


 遂に理論が完成した! 死者を取り込むことで扱える属性が増えたのだ!

 効率を求めて腕を取り込むことにしたが……ううむ、慣れないな。しばらくは訓練だな。……そうだな、冒険者を殺すついでに行うとしよう。

 …………そういえば、あの妖精はどこへ行ったのか……まあいいか。


――――――


【○月△日】


 新しい腕にも大分慣れた。更に二本ほど腕が増えたが、これで全ての属性が使えるようになったのだから僥倖だろう。

 しかし新たな魔導師か……“無尽卿”と呼ばれているらしいが、一体どのような魔法を完成させたのだろう……


――――――


【○月△日】


 最近はめっきり冒険者が訪れなくなったが、ついさっき森に入る二人組を感知した。ゴブリンに掛けた視界共有の魔法を解除しようと考えた矢先の出来事だ。

 “アーティファクト”への蓄積もあと少しで完了する……この場で殺せばきっといい贄となってくれるだろうな。


【○月△日】


 ここまで目と鼻の先にまで二人組の冒険者がやってきたらしい。崩落の準備を整えておくとしよう。

 あの二人組の死を“アーティファクト”に捧げれば、私が完全な不死者となるためのエネルギーとして使えるようになるだろう。ああ、楽しみだ。実に楽しみで仕方ない。


 ……はて、私は何を求めていたのだったか………………

 …………ああそうだ、魔導師だ。

 ……………………魔導師になって、魔導院の愚者共を見返すのだった。

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