不安定な精神
「お待たせしました〜。」
「どうでしたか?」
「大丈夫そうでしたよ!」
「なら良かったです!…ところで後ろの方はどうしたのですか?」
「ああ、魔力量といい称号といい色々ありましてね。」
「はぁ。」
「うぅ、なんでいつも俺だけ。(ガリガリ、ビリッ!)」
幽鬼の手からは、おびただしい程の量の血が、流れ出ていた。
「おい!」
「どうしたんですか!?」
「こいつ、自分の嫌な事、ストレスが溜まり過ぎたりすると、自分の指とかの皮を千切り始めるんです!今回のトリガーは恐らく過剰な程の恐怖、そして知らない場所へ放り出された未来への不安、そして女性が関わり過ぎましたね。
こいつのトラウマの中にも確かそんな事があったはずですから。」
「えっ。」
「普段クールに気取ってたり、強く見せたりしてもこいつの根っこの部分は脆すぎる。それをただ強い言葉で隠しているだけなんです。元々は優しくて良い奴だったんですが。ある“きっかけ”によって幽鬼の性格は変わりました。幽鬼は女性に対して本気で恐怖を抱いてる。」
「“きっかけ”?」
「それは本人から聞いて下さい。きっといつか話してくれます。僕がそんな簡単に言える案件では無いんです。これは。」
そう言った彼の手は、小刻みに震えていた。心なしか顔が青ざめて見える。辺りを沈黙が埋め尽くす。
「「…………。」」「うぅぅ。(カリカリカリカリ)」
その沈黙を破ったのは受付嬢のカリンさんだった。
「ソータさーん、ユーキさーん!書き終わりましたよ〜。」
一瞬、幽鬼は肩をビクッとさせた。
「はーい!今行きます!じゃあ行きましょうか、アメリアさん。」
「っ、はい。」
爽太は幽鬼の頭を引っ張りながらカウンターの方へ行った。それを心配しながらアメリアも付いて行った。床には綺麗に木目に沿って綺麗に血痕が残っている。
「「「「「「「「「「…………………。」」」」」」」」」」
それを見て周りの冒険者達は顔色を悪くしている。
「ソータさん、ユーキさ…ん?どうしました?なんだか凄く雰囲気が怖く……ヒッ!?」
カリンは幽鬼の怪我を見て恐怖を覚えた。だが仕方の無い事だった。それを、「あははー、僕もそんな反応してたー。」という顔でカリンを見守る爽太。
「どうしたんですか!?」
「こいついつもの癖が出ちゃって、すみません。後で片付け頼んでも良いですか?」
「こっ、これをですか!?でもこんな事私したくないですし…どうしましょう。」
そうこうしているとアメリアが何かを思いついたようだ。何かを耳打ちしているようだ。何かは分から無いが。
「なるほど、一理ありますね。ならお二方が向こうに着いた時に対処しますのでご安心を。依頼料はいりません。こちらに利益しかなくなります。」
「はぁ良かった。これで依頼料でてたら発狂してましたよ。」
と、心底安心したようにしている。よほど金を使いたくなかったのだろう。
「では、学園へのご案内をします。こちらへどうぞ。」