試験したかっただけなのに
「あれ?展開早くね?」
「はやくはやく〜。」
「うん。分かった。まあ行ってみようよ。突っ立ってても意味ないし。」
「おkおk。まかセロリ!」
「(まかセロリ?俺も今度使おっかな)」
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「着いたー!」
後ろには肩で息をするザックの姿が…。
「お前ら、ハー、ハー、早すぎんだろ、ハー、ハー。」
「お前見た目のわりに体力無いのな。」
「ああ!?お前らが異常なだけだろ!どうなってんだよその体!」
(注)幽鬼:シャトルラン132回、爽太:1500m走、4分47秒。
「「いや、爽太(幽鬼)ほど凄くは無えよ(無いよ)。俺は(僕は)。」」
「「ん?」」
「いや、お前の方が…いや、やめておこう。こないだ後悔したばっかだからな。」
「そうだね、今回の件は後日ゆっくりと、だね。」
「だな。」
なぜか遠い目をして二人は言った。
「息ピッタリですね!お二方!」
「まあ、幼馴染みですし?ねぇ、幽鬼。」
「伊達に12年一緒に居たわけじゃ無いしな。」
「じゃあ入ろうか、学園長室へ!」
そう言ってメイルがドアを開けようとした瞬間、
「きゃああああああああああああ!!!!」
という声が聞こえた。
「ああ!?」「どうしました!?」「学園長!?」「姉御!?」「!?」
此処にきて初めて感情を露わにしたセーラ。というか姉御てなんぞ!?
ドアを開けるとそこには、
「ザックたち!?逃げろ!こやつの動き、儂でも反応できんかった!只者では無い事は確かじゃ!少しは時間を稼ぐ!」
首に日本刀(で合っているはず)の剣をかざされているロリb、ゔっゔん、少女?と、その少女に剣をかざしている玖魏谷夕陽の姿があった。
「何やってるんだ!夕陽!」
「テメェ、また関係ねぇ奴を…つーかなんで此処にいるんだよ!夕陽!」
幽鬼が彼女の名前を呼んだ瞬間、彼女は幽鬼の目の前に居た。親に甘える子猫のような目をしながら。だがその奥は底の無い永遠に続く奈落のように黒い目で。
その目は幽鬼にとって、最も忌むべきものだった。
「ッッッッッッッッ!!クッ!」
(動け!俺の体!)呼びかけるが全く体が動かない。
「会いたかった。“こっち”で、ずっとずっと望んでいた事だったから。やっと貴方を思い通りにできるようになる。これで…やっと…フフフ♡」
その表情は、恍惚としていて、恋しているようで、獲物を視る目であって。
幽鬼は本能的に恐怖を抱く。彼女は幽鬼のトラウマの一部。それも四分の一を占めるほどの。そのトラウマの塊が目の前にいるのだ。
怖い、恐い、恐ろしい、その感情の根元。幽鬼にとって彼女はそれに当たる人物。
「はやく質問に応じろ!」
「ちょっとぐらい話をしていただけですよ。なにも問題ありませんよ、幽鬼君。」
いけすかねぇ態度だなっ!と思い、ギリッ、と歯が折れるぐらい強く奥歯を噛んでしまう。
「なんでこっちにもいるんだよ。なんで、いつもいつも俺の近くにッッ!」
彼女は一瞬、キョトンとした顔をしてこう言った。
「だって私がこうなるように仕組んだんですよ?」
「あ”?どういう事だよっ!なんでこんな事をした!もうお前とは俺は関わる気はねえってのに!」
「え?無理ですよ。私が呪い付けておいたので。一生貴方とは一緒ですよ?」
「はあ?なにが呪い…ッチ!クソが!そういうことかよ!あのステータスは!」
「クフフ♡焦ってる顔もカワイイですよ♡クフフフフ♡入学手続きはしてありますよ。これで安心して学園に行けますよね?寮も付けてるので食と住は安心してくださいね!もちろん幽鬼君と私は同じ部屋ですよ?爽太君は隣の部屋ですけれど。制服は私が用意しますので大丈夫ですよ。採寸も私がしますよ(下心全開)。これでもう安心できますね?」
「そういう問題じゃ無え!つかまず彼女に謝れや!」
「ん?」
一瞬ポカンとした顔をして、その後すぐに真っ青な顔をして、
「さっきは申し訳ございませんでした!もうしません!だから許してください!」
とチミっk、ゔゔん、少女(仮)に謝った。きっと彼が前に言った言葉を思い出したのだろう。
その変わりようを見て、ある者は戦慄を、ある者は憤怒を、ある者は呆然としていた。
そして彼女が、
「一緒にあそこに…!」
急に開き直った瞬間、
「それはダメだって。」
ふざけてるような、注意しているような、それでいて圧倒的な威圧感のある声が聞こえた。