プロローグ
サラサラと緑の揺れる音に混じって、水の流れる音も聞こえます。
近くに小川でもあるのでしょうか?
そよ風が気持ち良いですね。
目を開けます。
青空です。
抜けるような青空です。
五月でしょうか?
気持ち良いですね。
空が高いですよ。
うん?
向こうに誰かいますね。
ほら、あそこの丘の上です。
金色のワンピースをはためかせています。
女の人でしょうか?
不思議な形の仮面を被る、髪の長い女の人が立っています。
「あっ! キ・リリカ・キンローブ!」
懐かしいですね。キリリカさんですよ。
でも、どうして、こんなところに居るのでしょうか?
キリリカさんは残ったはずですよね?
そして、キ族の仮面は……、誰でしたっけ?
赤い帽子が好きなオコイ人。学者と一緒にいたあの娘です。
えーと、顔は思い出せるのですが、名前を思い出せませんよ。
確か、私のル族の仮面と一緒に、途中で彼女の船となったはずですが……。
約束通り、今もあの灯台に保管されているのでしょうか?
いえいえ、違いますね!
そろそろ船を離れる頃だったはずですが……。
無事に目覚めることができたのでしょうか?
うーん、心配ですね。
ああ見えて、なんだか子供っぽいところがありましたもんね。
しかたないですね。キリリカさんとの約束もありますし、私も一緒に起きますかね。
「その方がいいですよね? キリリカさん!」
あれ? キリリカさんじゃないですね!
あの仮面は……、まさか、ク族の仮面ですか?
――
嫌ですね……。
また、これですか……。
しかも授業中に居眠りをして、この夢ですか?
大学生にもなって、こんな妄想のような展開なんて……。
うーん、自分でも情けなくなりますね。
それにしても目が痛いですね。
もしかして私、目を開けたまま眠っていましたか?