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六話 さぁ、ボス戦だ

休みはいいですね、お待たせしました。

「ここのボスはキングタウロスという大型の魔物だ」


「え、調べてたの? レイジが?」


「……ほう」


ユーシィとガルッゾが意外そうな声を出しているが、以前の俺とは違う。ここ(ダンジョン)はもう既に踏破済みのダンジョンだ。つまり他人から情報を得ることができる。ゲームの時は初見の心でやるのが一番楽しいが、今は現実だ。死んでしまっては元も子もない。


……と言っても、俺はゲームでこのダンジョンは攻略済みだ。なので確信が欲しかった。その時の操作キャラはミレスだったが、道中はゲームの時とそう大差はなかった、と思う。


事前に調べた情報と俺の記憶が正しければ、ほぼ同じダンジョン構造、出現する魔物の種類。やはりゲームと同じ世界観なんだろうな。


「俺だって調べるさ。みんなの命を預かってるんだ。当たり前だろ」


というリーダーっぽい返しをしておく。するとみんなキョトンとした顔になり、次の瞬間に苦笑する者、無表情の者、笑顔の者に分かれた。


…………なんだよ一体。




「《プロテクション》《ハイストレングス》」


青と赤の光の帯が俺たちを一瞬で覆い、光が弾ける。


ユーシィの補助魔法だ。最初は《プロテクション》しか使えなかったが、レベル2に上昇したことで《ハイストレングス》も使えようになった。


本来ユーシィは攻撃魔法を得意とする魔法使いだが、今は補助に集中してもらっている。まあ、この陣形にみんなが慣れれば攻撃に参加することも出来るはずだ。


「――よし、準備はできたな? 」


最終確認。前衛の二人は装備の点検はバッチリのようだ。後衛の俺たちも魔力を回復するポーションを飲んでいる。


ついでに俺の回復魔法リジェネレイトをみんなに付与した。これで少々の擦り傷程度ならすぐ治るはずだ。微々たる回復量だが、保険としては優秀だろう。


各々が頷いたのを確認した俺は扉に手を当て、ゆっくりと開いていく。




ソイツは入口から少し離れた場所に背を向けて座っていた。椅子などではなく、直に地面に。


だが、それでも俺たちより遥かに大きい巨躯。分厚い筋肉。しかし、それよりも目立つのはピンク色の肌だ。ファンキーな色に似合わない体型に思わず苦笑が漏れる。情報にはなかったな、あんな派手なピンクは。


「おっきい……」


「あのデケェのが、キングタウロス……か?」


「ああ、どうやらそうみたいだ。気を付けろよ。陣形は崩すな、いくぞッ!」


先手必勝。座っているのなら好都合。奴の最初の対応次第では、俺も攻撃に参加する。


元々俺は魔法剣士。攻撃してなんぼのアタッカーだ。回復魔法だけ使っていても宝の持ち腐れ。


「ウオオオッ!」


まずガルッゾが雄叫びを上げながら突撃していく。盾役としてはマイナスだが、大目に見よう。俺はすぐさま回復魔法を発動できるよう準備をする。



キングタウロスはゲームと同じボスだ。だが、ゲームの時のあいつは座らず、ボス部屋で俺たちを待ち構えていた。その差が気になったが、戦いは始まっている。


「くらえェい!《パワースイング》!」


ガルッゾの片手斧が赤いオーラを纏い、キングタウロスの無防備な背に襲いかかる。ガルッゾは好んでその技を使う。片手斧の取り回しの良さに、威力のある武技。本人曰く、「一番使いやすい」らしい。


その使い込まれた武技がキングタウロスの背に当たる――その時だった。


「ッ! 下がれガルッゾ!」


「な、にィ……!?」


ガルッゾの武技は命中しなかった。否、()()()()()()


座っていたキングタウロスは驚くべき速度でその身を回転させ、巨大な斧を片手にガルッゾの武技をその膂力を持って防いだ。なお、今も座ったままだが、それでも見上げるほどの体高はある。


「ブルオオオオオオオオオ!!」


下から上に武技を弾いた巨大な斧はそのまま振り下ろす構えになっていた。


「耐えろ、ガルッゾ!」


「ヌゥ……!《シールドフォートレス》」


振り下ろされる巨大な斧。それは人の目から見ると鉄塊と言われてもなんら遜色もない得物。


ガルッゾは防御系武技を発動させた。だが、普段は使わない武技だ。慣れてないものほど危ない。


俺とマリアはすぐさまフォローするために行動を開始する。このボス……やはり勇者であるミレスがいるといないとでは全く違うと確信が持てる。



キングタウロスとガルッゾの大楯が衝突。鉄同士がぶつかり合った音は凄まじく、ボス部屋に反響する。


「ぐ、お……ォ」


ガルッゾは苦しげな表情で呻き声を上げた。巨大な斧を受け止めたガルッゾの腕の軋む音が聞こえてくるようだった。


 俺はすぐさま予め準備していた回復魔法をガルッゾに飛ばす。これでいくらかマシになったはず。


もうすでに陣形は崩れている。だが、立て直せる状態まで持ち越すには俺とマリアがどうにかするしかない。


「マリア、あいつの側面から攻めてくれ。俺は正面からガルッゾの援護に向かう」


「……」


軽く肯き、素早く側面に回っていく。



「『宿すは炎。切り裂くは魔。此の鉄に偉大なる火の力を』」


俺の鉄剣の表面に幾何学的な文字が走り、発光する。


エンチャント。これは魔法剣士だけが使える武器に属性を付与する魔技。魔法と似て非なるものだ。


火炎を纏った鉄剣を下段に構えながら疾走する。


「ガルッゾ、斧をどうにか逸らすんだ!」


「ぐぐぐぐ……」


苦悶の表情で俺に視線だけ向けているが、キングタウロスの斧は微動だにしない。


逸らす余裕はないか……? ならこのまま斬りかかるしかない。リスクはあるが、ガルッゾがもう持たない。

キングタウロスもガルッゾを一撃で潰せなかったせいか、武器を持っていない片手を振りかぶりガルッゾに狙いを定めていた。


「グモォウ…?!」


「ヌゥゥ……むっ! 《インパクトシールド》!」


俺が攻撃を開始する直前。キングタウロスの顔が仰反る。……いや、不可視の一撃。


「ユーシィか!」


振り向くことはしないが、ユーシィの攻撃魔法による援護もいうことはわかった。


ガルッゾはすぐさま防御系武技で斧を逸らし脱出。斧は地面に激突し、重厚な音が鳴り響く。


この大きい隙。逃さない……!


「《火炎十字斬り》」


「……!」


俺の武技がキングタウロスの体を切り裂き、十字の火線が表面を走る。本来の武技プラス、俺のエンチャントも合わさっている。


そしてマリアが繰り出すは真下からの強襲。トンッという音が鳴り、次の瞬間には打撃音が残る。


縦回転をしながら飛び上がり、その勢いのままキングタウロスの頭にかかと落としを喰らわしていた。


「グモオオオ!?」


キングタウロスは叫び声を上げながらがむしゃらに暴れ俺たちと距離を離した。その目には、憎悪滾らせながら。


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