第二話 あれ、俺やらかしてる?
こちら2話です
さて、目が覚めると俺の頭は晴天の空のようにスッキリしていた。
いつの間にか他のパーティーメンバーも戻ってきており、しきりに俺を心配してくれた。
それを何とか笑顔……とは言わないが、柔らかい表情で、心配させたみんなには大丈夫という旨を伝えた。
そうして夜も更けて深夜。俺は一人宿を出た。静かな夜の街を歩いて少し考え事をしたかったからだ。
どうやら俺の自我はキッチリと融合を果たしたのか、記憶には少しの違和感もなかった。人間の頭って、すごいんだなぁ。なんて、的外れな感想を抱きながら歩く。
少し整理しよう。俺の前世は地球育ちの日本人。簡潔に言うと、高校に行く途中で車に轢かれて生を終えたのが前世の俺だ。
だが、何故かこの異世界に転生。農家のレイジとして二度目の生を得た。そんでもって、約20年経ってから何故か前世の記憶が甦り、今に至る、と。
……ああ、一つさらに思い出したことがある。この世界。俺が前世でプレイしていたRPGのゲームそっくりなのだ。ちなみに、俺たちのパーティーメンバーもしっかりゲームに登場していた。
主人公を追い出したパーティーとしてな!!
「はぁ……」
俺は噴水広場のベンチに座り、一つ溜息を吐いた。
そう、俺たちが追い出した回復士のミレスは、後に才能をメキメキと発揮して、誰もが認める最強の勇者になる予定の有望株だったのだ。
まだそうとは限らないって? いいや、俺はほぼ確信した。街を散策していたのはそれを確認するためでもあったからだ。ゲームと同じ建物はいくつもあり、屋台のおっちゃんのセリフも同じ。やり込んでいたゲームなだけあって、よく覚えている。
ゲームと同じ世界と認識した瞬間、俺は絶望してしまう。
「やらかした……!」
あまりの絶望に顔を手で覆い、呻き声が出る。
俺たちが行った行動は、後の勇者を追放するというお馬鹿な行動。その結果がどうなるかは、俺は知っている。
最初の頃はダンジョンの攻略に支障が出始め、途中でパーティーは解散に。そして、俺はミレス達勇者一行をを襲う盗賊として現れ、最後にはミレスから哀れみの台詞を言われ、俺は撃退されて死んでしまう。
「……詰んでる? 完全にやらかしてるな? どうすんだよ俺……!」
ゾンビのような呻き声が出てしまう。周りから変な目で見られ始めていたが、知ったことではない。
これから起きる転落人生を考えると、頭を抱えたくなる。ていうか、抱えてベンチで寝転んでいる。
「これからどうするかぁ……」
ポツリと呟く。俺の頭に浮かぶのは、どこか欠点を抱えている3人のパーティーメンバーと、青ざめた顔をした実は勇者なミレスだった。