第一話 転生したけど、なんか違う
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「……ジ! ……イジ!」
なんだよ母さん。まだ目覚ましがなってないんだから、もう少し寝かせてくれ。
「ーーレイジ!」
「なんだよ煩いなぁ……あ?」
まぶたを開くと、目の前には涙目の美少女が……いやユーシィか。そのユーシィは俺が目を開けたと同時に抱きついてきた。
「よかった! 急に倒れたからみんな心配したんだよ!?」
あたりを見渡すが、ユーシィ以外いないようだ。そしてどうやら俺が寝ているのは、冒険者御用達の宿で俺たちが借りている部屋だった。
「……みんなは?」
「えっと、3人は薬とか食料を買いに商店通りに、ってそれより! 体は大丈夫なの?」
「ああ……ちょっと頭がボーッとするくらい、だな」
「そっか。……じゃあ私、お水もらってくるね。喉乾いてるでしょ?待ってて」
そう言ってユーシィは部屋を早足で出ていった。
そして部屋で一人になった俺はというと……。
「……マジで現実なのか? 記憶が戻ったタイミングは……明らかにあの頭痛だよな? 」
俺の名前はレイジ。魔剣士のレイジだ。ーーそして前世での名前は京介。男子高校生の京介だ。
そう自覚した瞬間、膨大な量の記憶が頭に流れ込んでくる。もう一つの人生。17年間生きた記憶が、濁流のように流れ込んでくる。
「うっ……くぅ」
これは、中々辛い。例えるなら、全力でヘドバンした後全力疾走した感じだ。気持ち悪くて吐きそうだった。
最期の記憶は、赤い車が俺にぶつかる直前だった。
はぁはぁと荒い息をなんとか鎮め、深呼吸してから息を吐く。
「……死んだのか、俺は。実感はあんまりないが、そんなもんなんだろうな」
17年間生きた京介は、この世界でレイジとして20年生きてきた。精神的には大人だから、余裕がある……という事にした。そうでもしないと、パニックになりそうだったからだ。
「……だけど、なんであのタイミングで前世のことなんか思い出した? もしかして記憶にないだけで神様に転生でもさせてもらってたか……?」
いちおう、この世界には神様がいる、らしい。
高位の神官のなかには、神からの啓示を受け取ることができる者もいると聞いたことがある。つまり神がいる確率は高いってわけだが……。
「まあ、記憶が戻ったのは偶然だろうな」
そう結論が出る。なんせもう20歳だ。変なタイミングで記憶が戻ったんだから、神なんておそらく関係ないだろう。
それに俺は神なんて信じていない。もしいたとしたら、俺の前世の記憶を消してくれ、と頼む。
「レイジとしてクールに生きてきたのに、前世の記憶が入ってきたせいで俺の頭と心はめちゃくちゃだ」
レイジと京介はどっちも俺だが、その自我は元々別人だ。記憶の統合がされてないからか、頭と心はしっちゃかめっちゃか。
「……疲れたから寝るか」
人間、眠るのが一番いい。取り敢えず寝て起きた時には、心も記憶も整理されているだろう。……おやすみ。