プロローグは追放から
「ミレス。お前は今日からソロだ」
俺がそう告げたのは、一人のパーティメンバーに対してだ。
「え? 急になんで……」
ミレスは俺の言葉にショックを受けているのか、少し顔が硬っていた。周りのパーティーメンバーは「当然」といった顔をしている。
魔法使いのユーシィ、重戦士のガルッゾ、格闘士のマリア、そしてーー魔剣士である俺ことレイジ。
ここにさっきまでは回復士のミレスが加わっていたが、もう今日からは違う。
「そんなの決まってるだろう。俺が回復魔法、ユーシィか補助魔法を扱えるようになったからな」
ということだ。
その言葉を聞いたユーシィは笑顔で頷き、反対にミレスの顔はドンドン青ざめていく。
「け、けど……まだ二人の魔法は僕よりレベルが低いじゃないか!それだと危険な事にーー」
「もういい。言い訳は家族にでも聞いてもらうんだな。……もう一度言おう。ミレス、お前は今日からソロだ」
俺はそれだけ言うとパーティーメンバーを連れてダンジョンに向かった。
ミレスをチラリと見たが、膝をついたまま俯いていた。もう俺の知ったことではない。せいぜい死なない程度に頑張るんだな、元パーティーメンバーのミレス。
俺たちはダンジョンに向かうために町外れの森の中を抜けていくことにした。
「やっとあの役立たずを叩き出せたね、レイジ!」
嬉しそうな顔で俺の腕に自らの腕を絡ませてくるのは、魔法使いのユーシィ。多彩な魔法で後方支援を行ってくれるメンバーだ。と言っても、たまに誤射をするのが難点だ。
「ああ。アイツの回復魔法と補助魔法は便利だったが、それだけだ」
「ガハハ! 接近戦もできん、かといって魔法の攻撃もできない! あんなヘタレはさっさと冒険者なんぞやめて、村の司祭でもやっとればええんじゃ!」
よく通る声で喋っているこの大男は、重戦士のガルッゾ。その有り余る腕力と体力で重鎧と大楯で前衛の守りを担っている。しかし、声がデカくて猪突猛進過ぎるのが玉に瑕か。
「…………」
そしてこの無口な少女は格闘士のマリア。自慢のスピードを生かして、無数の打撃を武器に戦う前衛だ。
ただ、無口なせいで戦闘中のコミュニケーションが取れないというのが困り物だ。本人は戦えているので問題ないと言うが、俺たちは冷や汗ものだ。
「さて、ミレスのことはもういい。これから向かうダンジョンだが、少し説明をーーッ!?」
唐突な鋭い頭痛。ーー迫る地面。
一体、何が……。思考は途中でプツリと途切れる。最後に俺の耳に聞こえてきたのは、パーティーメンバーの誰かの声。ドサリという音。それぞれが暗闇の中で木霊して、消えていった。