7話「そしてバニーは突然に」
「着る物これしかないのか……? というかあの男はいつまでここにいる! 女人の湯浴みを覗くとは不届きだ!」
「それしかないわ。元々着ていたドレスはもう着れないだろうし、そもそもここは基本的に客の来る場所ではない。でも似合っているわよ? あとここはテンガ様のお部屋よ。態度を弁えろ小娘」
「っ!……分かった」
ぎゃーぎゃー言いながらお風呂から上がった銀髪少女がメリッサの用意した服を着ているようだ。
いやどうせ碌な服じゃないに決まっている。俺は詳しいんだ。
ちなみに俺は既に新しいバスローブを装着済みだ。服を着るだけで安心感が段違いだ。
「どうですか? テンガ様」
メリッサの声に俺は振り向くと、そこには——
「じろじろ見るな馬鹿っ!」
赤面して涙目になりながら控えめな胸元を隠すバニーガールがいた。
ぴっちりと、銀髪少女の細いボディラインに沿った衣装に網タイツ。流石にうさ耳は付いていないが、きっと尻尾はあるに違いない。
はい、落ちました。なにあれ、可愛すぎる。この世の可愛いを全て注ぎ込んでも、こうはならないぞ!
「あー、メリッサ」
「はっ!」
「褒めてつかわす」
「ありがたきお言葉……先々代の賢者様が好まれた衣装でございます。なんでも異界の兎人族を模した物だとか」
膝を付いて頭を垂れながら説明するメリッサに、少女がドン引きした視線を送る。
うんうん、この子、この衣装着て恥ずかしがっているみたいだし、感性はまともなようだ。
そういえばあの夢を見て以来、少女を可愛いとは思うが性欲は感じなくなったな。
なんだろう……女兄弟はいないが、実の妹を見る時はこんな感じなんだろうか。
それよりも、メリッサの方が目に毒だ。無駄に揺らすの止めろ! そのたびに、杖に性欲吸い取られてるんだぞ!
おっとしまった。まずは褒めてあげないと。やっぱり脱ぐとか言いだしたら大変だ。
「うん、凄くよく似合ってるよ……ええっと何ちゃんだっけ?」
「ち、ちゃんだと!? いいか聞け! 私の名はリー——痛い痛い!」
「我らがテンガ様に横柄な口をきくな小娘」
立ち上がったメリッサに頭を掴まれ、バタバタともがくバニーちゃん。
よく見るとちょっとバニーちゃんの足浮いてないか? メリッサはどんな筋力してんだ?
……もしかしなくてもサキュバスって……実はめちゃくちゃ強い? アマゾネス的なあれ?
っと、そんな事はともかく一々俺に気を遣われてたら進む話も進まない。
「あー、メリッサ、いいよ別に。メリッサ達も別に俺には敬語じゃなくていいし……」
「うう……噂に聞く通りやはりサキュバス族は野蛮だな……母上とは大違いだ!」
「黙れそして寛大なるテンガ様に感謝しなさい。本来なら不敬罪で地下牢獄にぶち込んでタイマニンの刑に処すところよ」
なんだその刑。今度見学させてくれ。
「じゃなくてだ。一度自己紹介しているが、改めて、俺は井上典雅、この村の賢者として召喚されたらしいがそこは気にしなくていい、呼び名はテンガでいいぞ」
みんなそう呼んでるしね。
「……私は、リーシルヴィア・リス・アークベルクだ……です」
メリッサの目線が怖い。これこれ、あんまりいじめたらいけませんよ?
「よろしく……あー、リーシル——」
「リシアでいい。特別に」
“特別”にスタッカートを置いて、ぷいっと横を向きながらそう言うリシアたんきゃわわ。
「じゃあリシアちゃんだな」
「っ! 貴様! 調子に乗……ってもいい。ここは帝国領どころか人の領域ではない事を失念していた」
「お、おう」
こっそりメリッサがリシアの背中つねっているのが見えるぞ?
「じゃあリシア、貴女には私達にここまで来た経緯を説明し——いえ、それは後回しのが良さそうね」
メリッサがそう言って窓へと視線を向けた。
見ると、バルコニーから一人のサキュバスが焦りながら入ってきた。そこ、入口にもなるのね。
「緊急時ゆえに窓からの入室をお許しください! 賢者様、メリッサ様、魔蒸兵による軍が迫ってきております!」
バニーひゃっほうううううう
リシアちゃんはコスプレ担当なので着せたい衣装あったら感想にでも投げてくれたら採用するかも?