16話「色魔王……そして」
「テンガ様、捕らえました」
「お疲れさん。さってどうすっかねえ」
「処刑しましょう」
「こええよ」
俺の前に四人の男女が並べられていた。
全員が憔悴しきっており、目も虚ろだ。
可哀想に……よほど怖いめに合ったのだろう……。
『ほぼほぼテンガ様のせいですね!』
「えっと……君らは誰さん?」
「俺らは……【金色の杯】だ……頼む、命だけは」
リーダーらしき男がそう
金色の杯? そういう名前なのかな?
『冒険者達の集団……通称クランの名前かと。誰からか依頼を受けたのでしょうが』
あー、なるほど。
「で、誰から、何を依頼された? 嘘ついたら……怖い目に合うと思うなあ」
「テンガ、こやつらは、帝都でも有名な冒険者だ。そう簡単に口を割るまい」
「あ、多分コーン卿からの依頼で、とある要人を救い出せという依頼でした」
「口軽っ」
リーダーらしき男がペラペラとそう喋ってくれた。
「んーやっぱりそのコーン卿を何とかしないとまた何やら送られてきそうだな……」
「私もそう思うぞ」
リシアも同意してくれた。
『さっさとそのコーン卿をぶっ殺した方が話は早そうですね』
「だよなあ……受け身なのはどうも性に合わん」
「あ、あの……」
「ん? 何? ああ、君らはちゃんと無事に返すよ」
「良いのですか?」
「ここの秘密がバレたところで、だろ? だけど条件が一つ。冒険者ならコーン卿の居場所ぐらい探れるだろ?」
「全力で協力します!!」
こうしてどうやら有名で実力のある冒険者4人が仲間になったよ!
☆☆☆
「こ、コーン卿!!」
「騒ぐな。分かっている」
コーン卿が、あったはずの天井が吹き飛ばされているのを見つめ、自分が何処で間違ったかを繰り返し繰り返し考えていた。
コーン卿の視線の先には一体の魔蒸機竜が飛んでいた。空を飛べる魔蒸機竜なぞついぞ聞いた事はないが、現に目の前に浮いている以上はこの状況を受け入れざるを得ない。
「おっすロリコン卿」
「貴様は……何者だ」
コーン卿の目の前に降りてきたのは、いかにもうだつの上がらなさそうな青年だった。
しかし手に持つ杖に妙に惹かれる。
「あーサキュバス村の賢者だ。困るんだよねー軍とか冒険者を何度も送られると。ネルスだっけ? あいつから始まってさー。冒険者のあとは、違う国の軍も来るし、勇者とかいう奴等もくるし。んでそれ全部あんたの引き金だろ?」
「そうだ」
「そっか。悪いけど、大人しく捕まってくれるか? リシアは殺せ〜ってうるさいんだけど」
「そうか……リシアは貴様の手の内にあるのか」
「物みたいに言うなよ」
「……提案がある。取引どころか、俺が大損するだけのいわば、献上品だ」
「言ってみ?」
「……俺は……今の帝国の先は長くないと思っていた。なので色々と手回しをして、既に帝国を崩壊させ、リシア様を女帝とした新生帝国を作る準備はもう整っている」
「それで?」
「それを全てやる。あんな森の奥でいつまで引っ込んでいるつもりだ? ここでリシアを女帝にして貴様が支えれば最強の国が出来上がるだろう?」
「なるほど。で、あんたはどうなる?」
それに対し、コーン卿は剣を抜いて、自らの喉を貫いた。
「お、おい!」
「あとは……任せたぞ……賢者よ」
☆☆☆
「勢いのままやっちまったが……どうしてこうなった……」
俺はため息をついた。
「……だって女帝なんて嫌だもん」
「だからといって俺を王にするのはなあ……」
新生アークベルク帝国、玉座の間。俺は、村の俺の部屋にあった玉座を持ってきて、もとからあった玉座の横に置いた。隣に座るのは勿論リシアだ。
結局自害したコーン卿の私室からは、本人の言っていた通り、反乱の手筈やら何やらが全て揃っていた。なので遠慮無く使わせてもらった。
サキュバス達を引き連れ、帝都に乗り込み反乱を起こす。とはいえ、ほとんどコーン卿の手筈通り、無血で全て終わった。あいつロリコンだけど優秀だったんだな。勿体ない。
「テンガ様」
「ん? どうしたメリッサ」
「ミールディア女王国より、使者が参りました」
「ミールディア女王国?」
「最近隣の大陸を征服した超大国よテンガ。確か女王についた名が“鮮血女王”」
「なんでそんなやばそうな国と関わりたくねえ!」
とはいえ、使者をむげにするわけにはいかない。
『まあ余裕ですって。なんせこのリリスさんが開発、運営する魔蒸軍がいますから!』
「まあなあ」
俺は窓の外を見つめた。
そこには、
何百機という、飛行型魔蒸機竜が並んでおり、それに魔蒸兵達が乗り込んでいく。
ぶっちゃけこれだけの戦力で負ける気は一切しない。
「さってじゃあ、王らしくやりますか」
俺がそういうと扉が開いた。
扉から現れたのは、青髪の騎士みたいな男と、フードを被った女性だった。
お、雰囲気でエロいと分かるぞ!
『はい、性欲吸収』
「ごきげんよう……色魔王様」
そう言って、フードを脱いだその女性がにっこりと笑いながら俺に話しかけたきた。
「私はミールディア女王国の女王ルーチェ・クロイツ・ミールディアです。単刀直入に申します。服従か戦争か」
「面白いジョークだな。そちらの大陸のセンスは俺には理解不能だ」
「冗談ですよ。ただの軽いジャブです」
「しかしまさか女王自らとは……」
俺はこの食えない女王と腹の探り合いをする羽目になった。
こうして後にこの2国が手を組み、この世界を統一すべく協力していくのだが……それはまた別の物語だ。
というわけで一旦完結です!
ルーチェとテンガの冒険はまだまだ続きますが一旦ここで筆をおろさせていただきます
またいつの日か……