自転車
自転車を漕いでいる。
ボロボロの自転車に乗っている。
あちこちから軋む音が転がり落ちて、アスファルトの道で響いている。
キィキィ鳴れば、曲がりにくくなった膝を思いやり、ガタガタ鳴れば、上がりにくくなった肩を思いやり、ギリギリ鳴れば、力強さが無くなった腰を思いやる。
午後の日射しはまだまだ暑い。
望まない目的に走らされれば、遠くの空を見る他ない。
同じ遠くで同じ音が響いているようだ。
重なる夢が救いになる。
望まない目的の終着点は、まだまだ先。
乗りこなしているとは言えない自転車を停めてみる。
子供だった頃よりは、安心して停められる。
走ることをやめたなら、老いと摩耗の身体が余計な荷物になって、終着点の道程を霞めてしまう。
くの字より曲がる膝、なんとか両腕を上げられる肩、嫌がらせのように引っ張りあう腰、まだなんとかなる。
上り坂は誰でも辛い。
下り坂には下り坂の使いようがある。
絵にはならないけど、飛び散る汗も悪くない。