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ぼくは雷の子  作者: ふらののこ
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雷様の婚礼

 今日の空は、どこまでも真青に晴れ渡っています。この日は地球上のどこの国も好い天気です。というのは世界中の雷様が太平洋の雲上で一堂に会し、宴会をしているからです。

 「日本の若い雷様よ、いい体をしとるが、もう嫁っ子はもらったのかね?」

 黒い顔のアフリカの雷様が声をかけてきました。

 「いえ、まだです・・」

 日本の甲斐の雷様が顔を赤らめて言いました。九州の神様がすかさず口をはさみます。

 「うちの娘はどうだ? かわいいぞ」 

 ブラジルの神様も言います。

 「うちのは、踊りが上手いぞ」

 あわてて甲斐の雷様は断りました。

 「まだ父から任されたばかりの身ですから」

 「結婚式を開いたら、わしも呼んでくれ」宴会好きのアフリカの雷様が言いました。もちろん、と甲斐の雷様はこたえます。

 実は、彼には好きな人間の娘がいました。

 子供の頃、父について山々を雨雲で回っていました。山間の農村の上空に来た時に、木の下で泣いている少女を見つけたのです。

 ドドドドドーン!

 父が大太鼓を鳴り響かせると、人間はちりぢりになって逃げまどいます。ところが、その少女は逃げるどころか、大きな目で稲妻をうっとり見ていました。その時から、ずっとその少女が気になっていました。

 そのうちに、少女が仲間の人間の子供たちからいじめられていることに気づきました。そんな所に出くわすと、子供の雷様はいじめっ子たちの上にバケツの水を引っくり返してやりました。一瞬でびしょぬれになったいじめっ子たちは泣きながら逃げていきました。

 少女が娘になり美しくなると、雷様は娘に恋しました。アフリカの雷様に結婚の話をされてから、娘との将来を考えるようになりました。昔、人間と結婚した雷様の話を聞いたことがあります。自分も人間の娘と結婚できるかもしれません。

 ある日意を決すると、布をかぶって角を隠し、人間の衣を着て娘の下に降り立ちました。

雨の中、娘は一生懸命畑仕事をしています。雷様が声をかけても振り向きもしません。となりで雷様も一緒に草抜きを手伝いました。

 そのうちに二人の手がぶつかりました。

 娘が雷様ににっこり微笑みました。そして、唇を「あ・り・が・と・う」と形作りました。

 娘は、耳が聞こえなかったのです。

 それから、雷様は毎日娘の下へ通うようになりました。

 娘も雷様が来ると、うれしそうにしています。雷様はいつ結婚の申し込みをしようか、と考えていました。

 ところがある日、いつものように雷様が娘の所に行くと、娘の前に娘の母親が立っていました。そして、雷様の頭にかぶっていた布をつかみ取りました。すると見事な角が現われて、母親は息をのみます。

 「やはり雷様だったか。あなた様のおかげで、ほれ、見てくだせえ。作物がみんな腐っちまった。ここは水はけの悪い土地じゃ。こう毎日雨に降られたら、みんなだめになる。米も日照不足で実にならん。あなた様はおらたち母娘を飢え死にさせるおつもりか?」

 母親の言葉に、雷様は愕然としました。

 「この娘のことを思うなら、もうこの土地に足を踏み入れないでくだせえ」

 雷様はよろめきながら、出て行きました。

 娘が泣きながら後を追おうとするのを、母親が止めます。

 雷様は自分の軽はずみな行いが、この貧しい母娘を追い詰めていたことに気づき、打ちひしがれました。もう娘に会いに行かぬと決意します。

 それから一月余り経った頃、娘の村から遠く離れた山道に一人の女が倒れているのを雷様は見つけました。旅の途中生き倒れたようです。まだ生きているようですが、これから雨にぬれると死んでしまうかもしれません。

 雷様が様子を見に降りると、驚くことにその女は雷様の恋した娘だったのです。雷様を追いかけて、山を越えてきたのです。

 雷様は急いで雷の国に連れて帰りました。雷様の母親や祖母、姉妹たちが大切に介抱したため、次第に娘は元気になっていきました。

 雷様は娘に心をこめてお願いします。

 「わしの嫁になってくれぬか?」

 娘は目に涙を浮かべて、うなづきました。

 二人はすぐに、娘の母親の所に行きました。

 行方知れずの娘を探し歩いていた母親は、幸せそうな娘の顔を見て泣き伏しました。

 「これが娘の幸せなら、おらは何も言えねえ。どうか娘をよろしく頼みます」

 こうして雷と人間の結婚が決まったのです。


 空の上で、盛大な婚礼が開かれています。時おり風に乗って太鼓や笛の音が山間にも聞こえてくるようです。


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