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第7話 吸血鬼は血を吸いたい

13

学長との特訓が終わり、自宅についた。

「あのおっさん手加減位しろよ…イタタタ」

頭が痛み、手で撫でる。

「ほんとにそこまでやる必要あるの?」

咲が問いかける。

「ああ、魔族皇子相手だからな、ゲームとかだったら中ボスレベルのはずだ。もし戦闘なんかになったら、今の俺じゃ経験が圧倒的に足りない」

「そう、でもぼろぼろになる弟の姿をあまり見たくない姉心も少しは分かってほしいな」

悲しそうに咲は目を伏せる。しばしの沈黙が流れる。

「ごめん、今のは意地悪だったね。頑張ってね、翔」

「……うん」

この世界に来て自分のことしか考えずに行動することが多かったが、巻き込まれた2人はとても不安だったろうになんでも自分1人で進めてしまった。

「じゃあまた明日ね、おやすみ」

「おやすみ…姉さん」

異世界の生活を楽しみすぎた、絶対に2人とも生かして元の世界に返すことを、最初の思いを忘れていた。それを自覚した。


***


「準備はよろしいですか?」

「もちろん」

この日までにできることは何でもやった。準備ができないわけがない。

「では、行きましょうか」

「おう」

ここは町の端、馬車の中。これから東の国境付近まで行くところだ。

「姫様も緊張とかしていないか?交渉のほとんどは姫様になるぞ」

「もちろんです、とても楽しみですわ」

さすが姫様、でもその答えを聞いて安心できた。


国境付近、石造りの建物が見える。

「ショウ様、先に申しあげておきますと、あの建物は今回の交渉のために作られた建物ですので、もし何かあれば派手に暴れまわっていただいて構いません」

「…了解した。でも、もしもがないよう姫様も頑張って」

「はい!もちろん、楽しみます!」

ほんっとつくづくだな、姫様は!

石造りの建物にはテーブルが1つ、対面式に椅子が並んでいる。

「ショウ様はこちらにおつきになってください」

翔が椅子に座るとその隣に姫様が座る。

「そろそろ、時間です。先方の方々が参られます」

すると、突然黒い霧のようなものが立ち込め無数のコウモリが窓から入ってきた。それから、だんだんと、人の形になっていく

「お初にお目にかかります。ガータ国第1皇子ディール・ガータと申します。ミリア姫、貴女のお噂は私の耳にも届いております。国をお1人でまとめておられるとか、まだお若いのに素晴らしい」

「おほめに預かり、光栄でございます。しかし、ここは交渉の場ですので、改めて紹介をさせていたできます。私はラークロン王国第1皇女ミリア・ラークロンと申します。そして、彼が聖剣との契約者、コバヤカワ・ショウというものです」

「ほう、なるほどそちらの少年が聖剣の契約者ですか。貴殿には聞きたいことはたくさんありますが、先に今回私が面談を持ち掛けたわけをお話ししましょう」

それから、一度深呼吸をし、語り始めた。


我々、魔族の国にも人間は多く存在します。しかし、その者たちから生きる権利は剥奪され、まるで家畜のように扱われています。死ぬまで休みなく働かせられたり、魔術の触媒や人体実験に使われたり、欲求を満たすためにさまざまな肉体改造を行う者もいます

そして、我々は吸血鬼、人間たちの血を吸い生を得る存在です。吸血鬼だから分かるのですが血には人それぞれ様々な個性があります。吸血鬼にはその個性が存在しないため少し頂いて己の体に組み込み生を得ることができます。しかし、人間は我が国においてとても無碍な扱いを受け、犯行をしないようにするためほとんどが産まれてすぐに心を殺されます。つまり、個性が存在しないのです。我々吸血鬼に必要な個性が存在しないため生を長く保つことができないのです。それから、吸血鬼の領土ガータは退廃が訪れました。痺れを切らしほかの魔族を襲ったものもおりましたが、血の力が強すぎたため体の中で血と血が喰い合いをおこし、その者はそのまま絶命しました。


「心を殺されていない人間の血が我々には必要なのです。貴国にはわが国民に血の提供を要求したい」

頭を下げるディール皇子。

「理由は理解しました。しかし、貴殿の国の者たちが我が国の国民をただの食い物にし、惨殺するようなことがない保証はできますか?」

「国と国との行き来は厳重に規制し、我が国の民が貴国に渡らないようにし、血の供給のみの関係になります」

「わかりました。では、一番重要な点である。血の供給を行った場合、我が国が得る利益はなんでしょうか?」

「我々ガータ国はラークロン王国とともに戦うことを誓います」

交渉のテーブルに衝撃が走る。

「そ、それは、魔族の国、ヴィジット連邦を裏切るということで違い有りませんか?」

「違い有りません」

動揺したミリア姫に比べ、ディール皇子ははっきりと答えた。

「どうでしょうか?貴国にとっても悪い条件ではないはずです。先に明言させていたできますが、我々吸血鬼の誇りにかけてこの同盟を反故にはしません」

彼から、うそをついている気配はない。国の代表として、同盟という言葉を使い、この交渉に本気で臨んでいることがわかる。

「わかりました。その話を受けましょう」


***


14

それから、調印など同盟に必要な公的手続きを全て済ませた。

「ディール皇子。この会談は一度幕を閉じました。ですので今から私が聞く質問には皇子としてではなく、1人の吸血鬼として答えていただきたいのです」

「いいでしょう、では質問とは?」

「はい、今回の同盟あなたには主な動機は別にあったのではありませんか?」

その言葉を聞いて、今日初めてディール皇子は動揺した。

「いつから…気づいておられましたか?」

「まずは、なぜ人間より力の強い吸血鬼がこの国を侵略し自分たちの植民地として使わず同盟という形をとったのか、そして、なぜ魔族の国の中での人間の扱いをあのように悲しい目で語られたのか、大きくはこの2つからですね」

すると、ディール王子は顔を伏せ震えていた。

「ふはははははははは、私が人間に足元をすくわれるとは、侮っていたことを謝罪しよう。しかし、全部ばれていたのか…」

彼の顔が少し赤い

「あら、顔が赤いですわよ」

「ここまでやられたのは初めてだ。人間と手を組んだのは正解だったな」

「ご称讃、感謝いたしまわ」

2人は笑い合う。先ほどまでの雰囲気が嘘みたいだ。

「そして、君、何か私に言いたいことがあるのだろう?」

そこで、ディール皇子が1人の人間を見る。

「わかりますか?」

「分かるとも、分かるとも、私も同じ気持ちなのだから」

翔は答える。

「では、お手合わせをお願いします」

「受けてたとう、がその前に条件を1つ、終わってからでいいのだが君の血を一口飲んでもいいかい?」

顔がニヤついている。はっきりいって気持ちわるい。

「吸血鬼というのはね。目の前に珍しい存在がいると血を飲みたくなるのでね」

絶えず顔が気もち悪い。

「わ、わかりました。では、始めましょうか」

「よろしい、では始めよう」

次の瞬間、2人の姿がぶれた。

最後まで読んでくれた方、感謝いたします。

今回は吸血鬼の登場です、だいたい翔達が入学して2ヶ月後くらいになります。

次回 吸血鬼皇子との対戦

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