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第3話 賢姫登場

ドラゴンを倒し、10日ほどたった。翔たち3人は夜の街を歩いていたところ衛兵に保護され、場所もないので牢屋にいた。レオは目立つといけないので指輪型にしている。

野宿させるのは危険である。不謹慎ではあるが災害の後には、窃盗や強姦が多発してしまうことが多いからだ。

かといって、身元の分からない3人を民家に預けるのは危険だ。そう考えた衛兵はとりあえず、牢屋で待機するほうがよいと考えたのだ。

「俺たちからしたらありがたいよな、金もない身寄りもない俺たちが三食寝床付さらに防犯面もばっちりなところで生活できるんだから」

「でもまぁ、いずれは、出たくはあるわね。つかまってるって思うとちょっと、気分悪いし」

「脱獄はよくしてもらった衛兵さんに悪いし、とりあえずは、復興終わるまでは無理じゃないかしら」

あれから、2人にはこの世界のことをゆっくりと説明した。人類は魔族に追い込まれていること、魔族は内乱が激しくこちらにはあまり攻めてこられないことや、魔法の概念についてもいくつか説明した。

「お前さん方、全員出てくれ」

と、言いつつ衛兵の一人が扉を開ける。現在の復興は、王国の兵士や、魔法を使い慣れた人などが指揮を執り、住民が全員、復興に当たっている。よっぽどの凶悪犯ではない限り、囚人も例外ではない。もちろん俺たちも半日近く復興に協力している。

「ん?もう仕事ですか、時間がたつのも早い」

代表で話をする場合は、最年長である咲が対応することになった。

「いや、今日は呼び出しだ。国王様直々のな」

三人ともその言葉を聞いて固まっていた。


***


復興は進んでいるが王城はそれでも、安っぽいテントだった。

政治的なことは娘である姫が行い、普段はあまり民衆に顔を出さないことで噂の王だ。3人とも息を吸いテントの中へ踏み込む

「「「失礼いたします」」」

頭をさげ、かがみこむ、その時翔は

(漫画とかで見るとこんな感じだったけど合ってるのか?)

と、だらだら汗を流していた。

「よい、表をあげよ」

3人とも顔を上げる。確かに厳格な王だ。

「では、あとは娘のミリアに任せる」

3人は思った。挨拶すら、してないのに…

「お父様!もう!」

すると、王と入れ替わるように美しい、というより可憐な少女が現れた。年齢は、翔や雫と同じくらいだろうか。

その後、ミリア姫に連れられ、テーブルについた。

「皆様、失礼いたしました。お父様は極度の人見知りで…しかしながら、皆様をお呼びしたのは実はわたくしでございますの」

「そ、そうですか、事情は把握いたしました。それで、何のご用でしょうか」

「うふふ、わかっていながら」

少し笑ってミリア姫が立ち上がる。その瞬間ミリア姫から笑顔が消え、真剣な顔つきになった。

3人もつい身構える。

「この度は、我が国、ラークロンを救っていただき、ありがとうございました。予想外の事態で我が国は混乱し、ドラゴンの討伐は後手後手になっていました。ショウさんあなたがたった一人でドラゴンを討伐されたと、我が国は救われました。重ねて、お礼申し上げます」

ミリア姫は深々と頭を下げる。

「な、なぜ、私と分かったのですか?」

たじろぎながらも翔がミリア姫に聞いた。

「そうでした、もう一人紹介しなければならないものがおりました。」

そういうと、隣接したテントから、男が一人現れ、2人は絶句した。

「名乗りが遅れ、申し訳ありません、私はラークロン王国騎士団第8部隊隊長のハザク・スワンと申します」

その男は、あの日、魔族に憑依された男だったからである。

「な、なるほど、それで、その、ハザクさんに情報をもらったということですか」

「はい、失礼ながら調べさせていただきました。名前と風貌しかわからなかったため10日もたってしまいましたが」

少し顔を下げ、ミリア姫は椅子についた。


「ここまで、隠れられていたので公表は必要ないと思いますが、なにか報酬と必要なものはありますか」

「それに関しては—「まって、姉さん、ここからは俺が」」

濁そうとした姉の言葉を遮り、翔が発言する。

「実は、ここに来るまでの間、考えていたんだ。あんたは、この国の事実上トップだよな?どこまでできる?」

翔は、身を乗り出し、ミリア姫に高圧的な態度で詰め寄る。

「ちょっと、翔ちゃん何言ってるの!?」

焦ったように翔を止めに入る雫、しかしそれを無言で抑える咲

「翔にも考えがあるみたいだ。見てみよう」と、雫にだけ聞こえるようにつぶやいた。

「あなたからは、この国を救っていただきました。ただし、この国の今後の未来が危うくなるような要望は受け付けられません」

ミリア姫は凛とした態度で対応する。

「じゃあ、俺自身この国を危うくするんじゃねえか?俺はこの国から聖剣を奪ったぞ?」

そういって、翔は指輪を本来の形へ戻し姫へ向ける。

「ハザクよりあなたはその聖剣の正式な契約者と伺っております。それを、切り離すことは誰にもできません」

一度息を吸い、立ち上がってミリア姫は続ける。

「しかし、その剣を悪用しこの国を陥れると考えるのならば、それはこの国の長である私が一切許しません」

彼女の肩は小さく震えている。しかし、今までよりも強く、ミリア姫は否定する。

そして、しばらく流れる沈黙。

「では、俺たちは一般レベルの住居の提供と一定期間の資金援助を要求する」

ぽかんとする雫、クスリと笑う咲、驚きを隠せないハザク、それぞれ違う反応を見せた。

しかし、ミリア姫は落ち着いて答えた。

「わかりました。その要求を受け入れましょう」

2人は一度椅子につき落ち着いた。

「では、もう一つ質問。あ、でもこれは姫様じゃなく、俺ら以外にこの部屋にいる奴に、だ」

その一瞬、ミリア姫の顔がこわばった。

「それは、どういうことでしょうか?」

その反応を見て、翔はにやりと笑い。

「いるよなー。あんた等は、姫様の護衛か?もしくは、俺たちの監視や…場合によっては暗殺もたくらんでいるだろう?」

その問いかけに次は確かにミリア姫の顔がゆがんだ。

「盗み聞きする無作法な奴は俺が聖剣でまとめて吹き飛ばすぞ?」

そう言葉を続け、聖剣に魔力を込める。

「…あなたたち、出てきなさい」

そうミリア姫がつぶやいた瞬間さまざまなところから4人の女性がでてきた。

「ほう、全員女性とはな、しかも思ったより数が多いな」

「気づかれていたのでは、無いのですか」

驚き翔をみる。

「悪いね、姫様、全部はったりだ。肝が据わって決意が固いように見えたからな、諜報や暗殺にたけた部隊があっても不思議じゃないと思ってな」

次は、咲と雫が驚く

「え、じゃあ私たち、こんなにお姫様に啖呵切って殺されても不思議じゃなかったんじゃ…」

「あ、それは気になった。なんでだ?」

すると、隊長らしき女性がおずおずと話し始めた。

「えーっと、その、このような場合わたくし共が手を出すと姫様のご機嫌が悪くなってしまうのです…」

「え、それってどういう…」

翔は動揺した。理解ができなかった。ただ、答えは簡単だった。

「ふふふふふふ、もう、笑いがこらえられませんわ」

ミリア姫は口元を抑えつつも大胆に笑い始めた。

彼女が震えていたのは、恐怖でも怒りでもなく、ただただ笑いをこらえていただけなのだ。

「久しぶりの舌戦で楽しめましたわ、私にはったりを咬ませたことは驚きましたが私が一枚上手でしたわね」

「いやいや、ここは俺のかちでしょ、姫様最後には驚いたが…」

「さぁ、それはどうでしょうか?」

ミリア姫は怪しげな笑みを浮かべていたが、その場を後にした。


***


ふう、と息をつく。異世界で知識をほとんどない状態で、報酬をごまかされたり、国の長にだまされたりしないために、必要なことだったが、どちらかというと善人の翔にはしんどかった。さらに、はったりに気づかれていたということで恥ずかしさもある。まぁ、それでもミリア姫は好印象だった。安心した。しかし、それはそれとして

「あの、姫やりやがったぁぁぁぁぁ!!!!!」

一般的な住居が提供され翔は一人、絶叫した。

「なるほど、そりゃあ姫様の勝ちだよ!くっそ!侮れねぇな!!!」

「ほんっと、あんた甘いよねぇ…」

すると、扉の奥から声がする。

「翔ちゃーん、うるさいよー、というか仕事探しなよー、姫様からの資金援助、今日までなんだから」

翔が見落としたのは一定期間の資金援助といっただけでその期間を指定していなかった。結果、ミリア姫に一日のみとされた。


「はいはい、俺の負けですよ…」

そういって外に出る。街の復興は五割ほど進んでいた。日本に比べて早いのはやはり魔法の存在が大きく影響を与えているだろう。重機の準備がいらないのだ。超楽だ。

「求人はもう結構出てるな…」

街の中心部で求人の張り紙が大量にはってある壁を見る。

「…?」

そこから、一つ手に取る。

「これだ!!姫様に1杯食わせられるぞ!!」

その後、家に帰り2人に説明した。


***


コンコン

ドアの戸が鳴る。開けると衛兵が一人立っていた。

「姫様より、コウトラートの申請が来ております。お受け取りください」

「ん?」

衛兵は、手鏡を渡した後、そさくさと帰って行った。翔は、疑問を抱きつつ、渡された手鏡を見る。

「やってくれましたね!!!!」

すると、自分の顔ではなく姫様の顔が写っていた。

(おお!鏡でのビデオ通話!異世界っぽいじゃん!)

翔は一人感動していた。

「ちょっと聞いてますの!!!」

「ああ、これはこれは、麗しき姫君よ、本日は何用でしょうか?」

「白々しいのよ!!!わかってるんでしょうが!!」

(なるほど、姫様は怒りが限界に来るとしゃべり口調が変わるのか、おもしろい)

「国に、すごい請求が来たんだけど!!600万ラン馬鹿じゃないの!!」

ちなみにランというのはこの国の単位で、円とほぼ同じ価値観だ。

「いやぁ、ちょっと魔法の勉強がしたくって!魔法学校に一年ほど!」

「嘘だ!仕返ししたいだけでしょうが!学費に学食、一括払いなんてやる奴いないわよ!」

「そうともゆー」

ミリア姫の言葉を流しつつ煽る。

「………!!まぁ、今回はもういいわ、あなたたちは国を救ってくれたんだし、これぐらいは安いものよ」

言いたいことが言えてすっきりしたのか、ミリア姫は落ち着いた。

「まぁ、このコウトラートはあなたに預けておくわ」

「コウトラートっていうのはこの手鏡のことか?」

「そう、って知らないの?」

ミリア姫は驚く。

「あー言い忘れてたわ、俺この世界の人間じゃないんだわ」

「…………」

沈黙が流れる。

「…あー、これまだつながってるか?」

「…ちょっとまってください。なぜ、今それを」

「え、忘れてたから、姫様にはもともと話すつもりではいたんだが」

「そう、でございましたか」

ミリア姫は整理が追い付いていないように感じた。

「では、あとはそこのエルに聞いてくださいまし、私はこれで」

「おーい、大丈夫かー?って切れてるな」

ん?エル?

「エルって誰—「お呼びでしょうか?」」

唐突に女性が現れた。

「だ、誰!?」

「あれ、お忘れでございますか?では改めて」

一息吸いまっすぐこちらを見る。

「ラークロン王国騎士団第0部隊所属、エル・ニルバルドと申します」

翔は頭をかく。

「思い出した。お前昨日の諜報部隊にいたやつか」

エルはうなずく。

「で、なぜ俺の部屋にいる?」

「姫様からショウ様の監視の命をうけ、馳せ参じました」

「えーっと、俺が不審な動きをすると殺すってことか?」

恐る恐る聞く

「はい、そうなります!」

めっちゃいい笑顔で答える。なぜに、その笑顔…

「そ、そうか、でもまぁ俺は何かする気ないし、昨日の全部はったりだからな」

「はい、重々理解しております」

エルのその答えを聞き安心しつつ少し考えて、

「俺からお願いがあるんだが、あんまし、こそこそされてもむずがゆいから変に隠れなくていいからな?」

「はい、そのつもりです」

その時翔は思った。

(この人、割と図々しいのか…?)

「しかし、わたくしからもお願いがございます」

「なんでしょう」

エルからのお願いとは驚いた。

「姫様と、今後共々仲良くしてはもらえませんでしょか?」

翔は困惑していたが、エルは続ける。

「姫様は、国を一人でまとめる方、お父上があれなこともあり、その責任の重さと精神力のすり減りは並じゃないと思うのです。そして、友人の存在は心をいやすと私は思うのです。姫様直属の部隊である我々も、姫様と話をしようとしたのですが、立場上主従の関係にあるためか、姫様は深くかかわろうとしませんでした。しかし、昨日姫様があんなに笑っているのを久しぶりに見ました。そこで我々は気づいたのです。姫様に必要なのは単なる話し相手ではなく、対等の話し相手であると」

目を伏せ、エルは語った。翔はその姿を見て、忠実心の塊のような人だと、思った。

「それくらいだったらいいぜ、個人的にあの姫様は好きだし、あと俺の友達と姉にも言っておくよ」

「ありがとう、ございます」

半分泣きそうな返事を聞いた。姫様、愛されてるなと、思った。あと、この国の国王の扱いひどいな…

「あ、しかし、姫様に求婚するのならば私を倒してからにしてくださいね。私も好きですから」

急にキリッとした姿勢で言われ、翔は困惑した。

「しねぇーよ!てか、お前、好きって主人として?」

「一人の女性として」

即答だった。

(ほんっとに愛されてるな…姫様…)


***


それから、少したって街は8割方復興が終わっていた。すごい、ほとんど壊滅状態だった町が、たった1月で戻りそうだ。と、窓から空を眺める。

「こら!ショウ!何をしている!ちゃんと授業に参加しろ!心ここにあらずか?ああん?」

魔法学校では入学時に魔力検査がある。ばかげた数値が出てしまうと何が起こるかわからないということで、レオから「契約はそのままで、魔力のパスだけ切り離すよ、まぁいい機会だこの一年間私の助けなくやりきって見せな」と言われた。

「ショウ!聞いているのか!またか、また無視なのか!?」

ちなみに平均的な魔力量は3000、鍛えれば8000、騎士団クラスになると10000〜15000というのが相場だ。そして、翔の魔力は

「魔力量がが1500しかない、雑魚が魔力量をあげようとは思わないのか?」

魔力量で左右されるこの世界で、平均の半分程度の魔力しかない翔は虐げられていた。

「あー、あの先生、この理論を僕は理解していますし、座学でも魔力は上がらないのでここで勉強しても変わらないと思うのです」

そう、正直に言った。

「そうか、なら教室の隅でバケツ2つを授業が終わるまで魔法で浮かせておけ!魔力を上げることもできるだろう、こぼしたら学校全てを清掃だ!」

あ、こういうのあるんだ。異世界バージョンだけど、とワクワクしながら立ち上がった。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

前回のあとがきで言ったことを全く守れなかった男です。

姫編は短めにして早めに学校編に入りたかったんですけど、姫に思い入れができてしまいましたw

次回は、流石に学校編メインになります。

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