第7話 訪れた勇者
配給政策を打ち出してから一週間後。
和彦は書斎で難しい顔をしていた。
目の前では執事が申し訳なさそうに佇んでいる。
和彦の机には左右に二種類の書類が載っていた。
左側は早く盗賊対策をしてくれという領民からの陳情書。
右側は『荒廃した土地』の売却打診に対する返事の手紙。
全て断りの返事だった。
和彦は初め、古くから付き合いがあるというメイトリー領の領主に対して売却の打診をしたが、断られた。
そこで今度は複数の領主に対して打診したが、そこでもさらに断られた。
ついには無料で譲り渡すという譲渡契約を打診したがそれすらも断られる。
「なぜ隣国の領主達は誰も話に乗ってこない? おかしいじゃないか?」
「どうも『荒廃した土地』の噂は周辺の領地にも広まっているようです」
執事が申し訳なさそうに言った。
「無料で譲渡すると言ってもか」
「領地を手に入れる収入よりも管理にかかる手間とコストが重みだと思っているのかもしれません」
「後手後手に回ってしまったということか」
(無駄に金を浪費しちまったな)
和彦は溜息をついた。
(前領主のおっさん……どんだけ問題を放置してたんだよ)
「領主様。マズイですよ」
執事が恐る恐る言った。
「『荒廃した土地』の領民は続々土地を捨てて盗賊稼業に身をやつしています。このまま領土内で盗賊が増え続ければ、せっかく軌道に乗りつつある商品作物事業にも差し支えが……」
「うーん。どうしようかな」
(参ったな。領主の仕事、結構難しい。何が楽勝だよ。あのおっさんいい加減なこと言いやがって)
二人がしばしの間、気まずい沈黙を共有しているとおもむろに書斎のドアがノックされる。
「失礼します。よろしいでしょうか?」
「どうぞ」
和彦が入室を許可するとメイドのメイが入ってきた。
「お客様が玄関にお見えになっています」
「客? 今日は特に来客予定はなかったはずだが……」
「旅の勇者を名乗っています。なんでも盗賊対策のことで話があるとかで……」
「旅の勇者?」
「はい。女性の方です」
▲ ▽ ▲ ▽ ▲ 領主7〜13日目 ▲ ▽ ▲ ▽ ▲
・毎日たゆまず読書し続けたため、スキル『文字解読』がレベル10に上がりました。1日に10万文字読めるようになります。
・他領の領主に5件使いを出しました。1万ノーラの費用が発生しました。
・未開発地帯の領民に2万8千ノーラ給付しました。
ルネの魔石が7ジェム増殖します。
・領民が4人盗賊になりました。
【資産】
穀物:25万ノーラ(–3万8千)
貨幣:1万リーヴ
魔石:『ルネの魔石』219ジェム(+7)
【領地】
総面積:100万エーヌ
穀物畑:45万エーヌ
菜種畑:5万エーヌ
未開発:50万エーヌ
【領民】
2990人(−4)
【スキル】
『文字解読10』(才能限界)
次回、第8話「盗賊退治」