第5話 商品作物
午後になると、出入りの商人はやって来た。
和彦は彼に未開発の土地の使い道について相談した。
「商品作物を栽培するのが良いでしょう」
「商品作物?」
「はい。商品作物なら貨幣と交換できますよ? 今なら菜種がオススメです」
「はあ……」
「時代は貨幣です。今までは穀物が貨幣の代わりとなっていましたし、前領主様には毎回、穀物で支払っていただいてましたが、正直なところそれも限界でしてね。もう穀物は供給過剰で大した価格にならんのですよ。商品作物で収めていただければ貨幣と交換することができます。 何にしてもこれからは領主様も貨幣を蓄えておかないと下手すりゃ破産しますよ」
「なるほど」
「手始めに菜種などはどうでしょう」
「菜種?」
「ええ、菜種の種子からは油が取れます。都会では油の需要が高まっていましてね。小麦では1ノーラ当たり1リーヴ(通貨)にしかなりませんが、菜種なら1ノーラ当たり2リーヴの収入になりますよ」
(ふむ。どの作物も土地1エーヌ当たり1ノーラ収穫できるから、同じ面責でも、菜種は小麦の2倍通貨を稼げるというわけか)
「なるほど。他には何か商品作物は無いのか?」
「少々お待ちください。こちらが作物のリストになります」
商人は紙を取り出して和彦に渡した。
・小麦(穀物)
栽培期間1ヶ月、1ノーラ当たり1リーヴ
・菜種(油)
栽培期間1ヶ月、1ノーラ当たり2リーヴ
・亜麻(織物)
栽培期間2ヶ月、1ノーラ当たり5リーヴ
・茜(染料)
栽培期間3ヶ月、1ノーラ当たり9リーヴ
・紅茶(嗜好品)
栽培期間4ヶ月、1ノーラ当たり16リーヴ
「なるほど。栽培期間が長い方が収入が高くなるというわけか」
「まさしくその通りです。栽培期間が長くなればなるほど栽培におけるリスクは増加し、資本回収が困難になります。そのためまずはリスクの低い菜種から始めてみてはいかがかと。どうです? もし菜種を5万ノーラ育てていただけるなら、苗を無料で提供した上、穀物1万ノーラまで貨幣で買い取りさせていただきますよ」
「無料で?」
「ええ、5万ノーラ収穫できれば十分利益は出るので。ただし1年以内に1万ノーラ以上収穫できないようでしたら、違約金として2万リーヴ支払っていただきますがね。いかがなさいます?」
(リスクもあるってことか。さて、どうしようかな)
1、菜種の苗を買う
2、亜麻の苗を買う
3、茜の苗を買う
4、紅茶の苗を買う
5、何も買わない
(まだ領主になったばかりだし、ここは商人の助言に従って手堅く行くか)
「分かりました。では菜種の種子をいただきましょう」
「ありがとうございます。では菜種5万エーヌ分を領地に配送しておきます。穀物1万ノーラは1万リーヴと交換させていただきます」
和彦は商人が帰った後、鈴を鳴らして執事を呼び出すと、領民に商品作物栽培を奨励する布告を出すよう指示した。
税率は収穫分の3割。
菜種の種子は領土各地の役所に分配され、希望者は申し出ればいつでも栽培できるようにした。
上手くいけば、月々の収入30万ノーラに加えて、菜種によって貨幣3万リーヴを手に入れられる。
(さて、上手くいけば良いんだがな)
▲ ▽ ▲ ▽ ▲ 領主4日目 ▲ ▽ ▲ ▽ ▲
・穀物1万ノーラを売りました。貨幣1万リーヴが手に入ります。
・昨夜、月明かりに当てたため、『ルネの魔石』が1ジェム増殖しました。
・新しく3万文字を読んだため、スキル『文字解読』がレベル4に上がりました。
1日に4万文字読めるようになります。
・領民2人が盗賊化しました。
【資産】
穀物:38万8千ノーラ(−1万)
貨幣:1万リーヴ(+1万)
魔石:『ルネの魔石』201ジェム(+1)
【領地】
100万エーヌ
【領民】
2998人(−2)
【スキル】
『文字解読』LV4
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次回、第6話「配給政策」