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第4話 魔法の石

 和彦が夕食前の空いた時間書斎で手持ち無沙汰にしていると、『領主のステータス』が光り輝く。


(お、更新されたか)


 どうやら『領主のステータス』は毎日、午後5時頃に更新されるようだった。


 ページを開くと、領主2日目の項目が更新されていた。


 文字も読めるようになっている。


(やっぱり、資産については認識した時点でステータスに更新されるんだな。文字が読めるようになっているという事は、スキル『文字読解』の『1日』っていうのは、夕食前のこの時間を起点にしているってことか。それにしても……)


 和彦は前領主のステータスを見て、収支をチェックしていた。


 財政は常にカツカツであった。


(一体何にこんなに使うんだ?)


 毎月の館の維持費や人件費などを払っても毎月の収入が消えてなくなるほどではなかった。


 和彦は首をひねりながらステータスを閉じる。


 その日は、それ以上特に何も起こらず夕食後、就寝した。




 和彦はスキル『文字解読』のレベルを上げるため、書斎で読書していた。


 スキル『文字解読』のレベルを上げるには、どうも限界まで文字を読む必要があるようだった。


(突然、資料を読む必要に迫られるかもしれないからな。『文字解読』のレベルは上げれる時に上げとこう)


 文字数が5000文字に到達したところで、扉がコンコンと叩かれる。


「失礼します。よろしいでしょうか。領主様」


「? はい」


 和彦が許可すると入室して来たのは女中長ハウスキーパーだった。


 黒髪のメイドを一人伴っている。


(あの娘はいつもお茶を持って来てくれる……)


「お仕事中、申し訳ありません。この娘がどうしても領主様にお渡ししたいものがあると言って聞かなくて」


「俺に?」


 彼女は行儀良くちょこんと前で手を組んでいる。


 和彦がメイドの方を見ると無表情に見つめ返してくる。


「ほら。自己紹介しなさい」


 ハウスキーパーがせっつくように彼女に促した。


「メイと申します。この館には来たばかりです」


「えーっと俺に何か用事かな?」


「はい。実は今日、休憩時間、お散歩に出掛けたらこんなものを拾って来まして」


 彼女はエプロンのポケットから石を取り出して渡す。


 ジャガイモ程の大きさの石だった。


 一見、灰色でザラザラした普通の石だったが、一箇所だけピカピカと光り輝く部分が剥き出しになっていて、緑色の光を放っている。


 その部分を擦ると灰色の表面がパラパラと崩れて、さらに緑色の部分が広がる。


(これは……?)


「とても珍しいアイテムのように見受けましたので領主様にお届けした方が良いと思って……」


「この子ったら何かとガラクタを拾っては持って帰ってくるんですよ」


 女中長は忌々しげに言った。


「あの……ご迷惑だったでしょうか」


 メイは不安そうにして上目遣いで領主の方を見た。


 無表情とは裏腹に内心では心細いようだった。


「……いや、ありがとう。この石はきっと役に立つものだと思うよ。預かっておこう」


 そう言うとメイはホッとしたように顔を綻ばせた。


 どうやら先ほどまでの無表情は無感情というよりも緊張からくるものだったようだ。


(不思議な光だ。『領主のステータス』の放つ光と似ている。この石も何か特殊な効果があるのかもしれない)


 和彦はこの緑色の石について詳しく調べてみることにした。


 倉庫にあった10万ノーラ同様、この石もステータスに反映されていないだけで、なんらかの資産価値があるかもしれないと思って。


「この魔石についてはこちらで調べておくから。もう仕事に戻ってもいいよ」


「はい」


 二人の女中は書斎を後にした。


 一人はニコニコと弾んだような表情で。


 もう一人はぶすっとして不満げな表情で。


 和彦はメイの持って来た魔石について調べてみる事にした。


 幸い書斎の本棚を当たってみたところ『魔石全集』という資料が見つかった。


(魔石……翆色……あったこれだ。『ルネの魔石』)


『ルネの魔石』の欄には以下のように書かれていた。


「一見、ただの石に見えるが、内部は翆色に光り輝く宝石が入っている。

 手でこすると表面の石は簡単に剥がれ、内部の宝石が顔を出す。

 放っておくと表面は石化する。

 魔法使いが『ルネの魔石』を持ちながら風魔法を唱えると魔力の節約になる上に威力が倍増する。

 魔石を月の光に当てると増殖する。

 相場価格は1ジェムにつき1000ノーラ」


 和彦が魔石の重さを調べると丁度200ジェムだった。


(このまま売れば20万ノーラになるってことか。20万÷90=約2000。2000人を1ヶ月の間、養えるってことか。しかも月明かりにかざせば勝手に増える。あのメイとかいう女の子、結構なお宝見つけてきたな。)


 和彦は『ルネの魔石』を光にかざしてみる。


 魔石は緑色の光をキラキラと反射した。


(いいのかなー。こんな高いもんもらっちゃって)


 和彦はいたいけな少女から、無知なのをいいことに高価な代物を取り上げた悪代官になったような気分だった。


(ま、いっか。どの道あの子では商人と交渉できないし)


 この領地で遠方からやってきた商人と交渉することができるのは和彦だけだった。


(お金に変わったらあの娘になんか買ってあげるか。残りは手数料ということで……)


 和彦は石の表面を磨き、魔石の輝いている部分をむき出しにすると、月明かりの降り注ぐ窓辺に安置しておいた。


(それにしてもあの女の子。こんな高価なアイテムを見つけてくるなんて。可愛いだけじゃなくて、何か特殊なスキルを持っているのかも)



 ▲ ▽ ▲ ▽ ▲ 領主3日目 ▲ ▽ ▲ ▽ ▲


 ・『ルネの魔石』を手に入れました。

 ・新しく2万文字を読んだため、スキル『文字解読』がレベル3に上がりました。

 1日3万文字読むことができます。


【資産】

 穀物:39万8千ノーラ

 魔石:『ルネの魔石』200ジェム

【領地】

 100万エーヌ

【領民】

 3000人

【スキル】

 『文字解読3』


 ▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽


 次回、第5話「商品作物」

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