第11話 一期目の決算
勇者が立ち去ってからというもの、和彦はというと盗賊から奪還した『荒廃した土地』を検分したり、訪問者をもてなしたりと、領主としての仕事をつつがなくこなしていた。
しかしそうしたゆったりした時間の折々に、すぐに彼女、エレナのことが思い出されるのであった。
エレナと一緒に盗賊と戦ったこと、領内の菜の花畑を見て回ったこと、そして一夜を共にしたこと。
それらの思い出はふとした瞬間に蘇ってきた。
例えばそれは一仕事を終えて休憩している時間に、例えばそれは夕食までのちょっとした隙間の時間に、隙を見ては和彦の思考にするりと入り込んできて、和彦のことを捕らえて離さないのであった。
そうこうしているうちに時間は過ぎて、収穫の日がやってきた。
以前同様に穀物と、そして菜種が領主の館に運び込まれるのであった。
菜種は問題なく育ち、商人との契約通り、5万ノーラ納品することができそうだった。
「やりましたね。領主様。これで貨幣を手に入れることができますよ。軌道に乗せればさらなる税収も期待できます」
ベヤはつつがなく進んだ商品作物事業を祝して和彦を祝った。
「ああ、そうだな」
しかし和彦は収穫でき菜種の山を見ても浮かない顔だった。
彼の頭の中にはまだエレナのことがあった。
菜種を売って貨幣を手に入れたとしても、一面の菜の花畑を見て目を輝かせていてたエレナはもうここにはいない。
それを思うと心のどこかに虚しさが残った。
やがて商人が菜種を買い取りに来る。
「素晴らしい。品質も全く問題ありません。これなら全て貨幣と交換できますよ」
「そうか。それはよかった」
「では今後のことですが、いかがです? 商品作物の旨味は分かっていただけたでしょう? もっと畑の面積を広げてみては?」
「それなんだけどさ。菜種以外にももっと色んな品種を植えてみたいと思ってるんだよね」
「はあ。それはもちろんこちらとしても願ったり叶ったりですが。また急なお申し出ですね」
「ん、ちょっとな」
和彦は言葉に詰まった。
まさかエレナのことが忘れられなくて仕事に身が入らないから、何か新しく打ち込めるものを探している、などと言えるはずもなく。
「盗賊から土地を奪還して懸念事項も払拭したことだし、せっかくだから新しいことを始めたいと思ってね」
「なるほど。では早速打ち合わせしましょう」
商人はまた作物のリストを広げて打ち合わせを始める。
今回はどの作物を育てようか。
1、菜種の苗を買う
2、亜麻の苗を買う
3、茜の苗を買う
4、紅茶の苗を買う
5、何も買わない
商人との打ち合わせの結果、今回は亜麻(織物、栽培期間:2ヶ月、1ノーラ:5リーヴ)を5万エーヌ分育てることにした。
苗は無料、穀物2万ノーラ買取り、一年以内に1万ノーラ以上出荷、違約金は4万リーヴを条件に契約を結んだ。
和彦が『荒廃した土地』の住人について調べたところ、彼らは『未開発の土地』の住人同様、一日パン一食で生活していたため、前回同様、給付政策を餌に商品作物の奨励を行うことにした。
商品作物を育てれば、一日2ノーラの穀物給付を受けられるとする。
順当に行けば2ヶ月後、25万リーヴ手に入ることになる。
これだけの元手があれば騎士団も創設することができるだろう。
(もし、騎士団を創設したら、エレナは入ってくれるかな)
和彦はそんなことを心の片隅で考えた。
▲ ▽ ▲ ▽ ▲ 領主17日目〜31日目 ▲ ▽ ▲ ▽ ▲
・イーストン公とウィルフォード公のもてなしに20万ノーラ支払いました。領民に6万ノーラ給付しました。
・屋敷の使用人に給与を1万ノーラ支払いました。
・税収として穀物が40万ノーラ入りました。
・商人が菜種を5万ノーラ買い取りました。
貨幣10万リーヴ手に入ります。
・商人が穀物を2万ノーラ買い取りました。
貨幣2万リーヴが手に入ります。
・『荒廃した土地』5万エーヌで亜麻の栽培を始めます。
・ルネの魔石が15ジェム増殖しました
【資産】
穀物:34万8千ノーラ(+11万)
貨幣:12万8千リーヴ(プラス12万リーヴ)
魔石:『ルネの魔石』237ジェム(+15)
【領地】
総面積:150万エーヌ
穀物畑:58万エーヌ
菜種畑:5万エーヌ
亜麻畑:5万エーヌ(new)
未開発:82万エーヌ(−5万)
【領民】
総人口:4000人
開発済みの土地:1000人
未開発の土地 :2000人
荒廃した土地 :1000人
【スキル】
『文字解読10』
▽ ▲ ▽ ▲ ▽ 勇者4日目 〜18日目▽ ▲ ▽ ▲ ▽
・特に無し
【ステータス】
レベル1
攻撃力?
防御力?
素早さ?
体力?
【スキル】
『回避』
『重心斬り』
【アイテム】
『勇者の剣』
▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽
次回、第12話「冒険の扉」




