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髪の毛

作者: Light

はじめまして。僕はアキちゃんの髪の毛。

アキちゃんはとっても可愛い中学二年生の女の子で、特に髪が綺麗って言われてるんだ。いつも僕たちを丁寧にお手入れしてくれているからだね。

雨が降ったら傘をさして守ってくれるし、毎日トリートメントでつやっつやにしてくれる。

今や家族よりも身近な最高のパートナーさ。


夏休みにはアキちゃんの友達と一緒にいろいろな所に行った。海や川、ちょっと遠くまで行ってお泊まりもした。三年生のイケメンな先輩とお祭りデートもした。その時のアキちゃんはお饅頭?みたいな名前の髪型にしていて暑かった。あ、お団子だったかも。

どれも楽しいことばかりで、僕たちは誰の髪よりも綺麗で嬉しかった。


夏が終わって寒くなり、空気が乾燥してきたある日、急に別れの刻はやってきた。

アキちゃんが学校から家に帰ったとき、僕たちはボサボサだったのでくしをかけることになった。

こいつがなかなか怖い。真っ直ぐ綺麗になれるのはいいんだけど、しっかり耐えないと体ごと奴に持ってかれてしまうんだ。

僕たちは『悪魔の試練』って呼んでた。耐えた者だけが綺麗になれるんだ。

僕はもう何度も耐えてきた。今回も耐えてやる。

アキちゃんがくしをかけだした。遠くの方で悲鳴が聴こえる。

悲鳴が近づいてきた。いよいよ僕の番だ。

「ぐうう…」

体を引き伸ばされながらも必死に耐えた。ヤバイ、これ以上はー。

そう思ったときくしが過ぎ去って行った。よかった、生き残ったんだ。

ほっとしたのも束の間、再び悪魔がやってきた。まさか二回も来るなんて思ってなくて、ぎりぎりのところで僕は、ブツン。抜けてしまった。

ああ、駄目だった。ごめんよアキちゃん。僕なりに頑張ったんだよ。

今回の試練が全部終わって、アキちゃんの視線がくしに残った僕たちに向けられる。どうか、他に抜けてしまった仲間たちと一緒に、小さな土のお墓でいいから埋めてくれ。

また、アキちゃんの髪に生まれ変わることを祈っておくよ。

すると、アキちゃんがこう言った。

「うわっ…汚なっ」

え?何言ってんだよ、僕だよ、アキちゃん。あんなに大切にしてくれたじゃないか。まだ艶だって残ってるよ。僕のどこが汚いんだ?ねえ。

しかし、アキちゃんは何も言わず、僕たちをつまんでゴミ箱に捨てて部屋を出て行った。


髪の毛って頭に付いているときには大切にするけど、抜けたらただのゴミだよね。

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