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花束に銃弾  作者: 狗山黒
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 俺は今、猛烈に泣きたい。どっちかっていうと、穴掘って埋まりたい。お客様の中にシャベルをお持ちの方はいらっしゃいませんか。

 俺の母はシングルマザーだ。聞いた話では、なんでも父親が結婚するには危険は身分らしく、籍を入れていなかったらしい。俺が生まれてからも一緒に住みはしなかったので、俺は父親の顔を知らないはずだ。そう、はず(・・)なのである。

 しかし、俺は父親の顔を知っていた。正確には、実は父親だけどそんなことは露とも知らず俺はそいつと付き合っていた。

 ここで問題です。そいつは誰でしょうか。いち沈海さん、にズッパイングレーゼボスさん、さんアラビアータボスさん、よん闇医者さん。本命沈海さん、対抗闇医者さん、大穴大佐さん。そうです、俺の父親は大佐でした。

 今日は、その我が母と我が父の結婚式である。ぶわっ。

 母はとっても嬉しそうでそれはとっても良い事だし、父親ができることで家計の負担が減るのも良い事だ。しかし、母親の女の顔は見たくないというか、今更どんな顔して付き合えばいいのか分からんというか、とにかく非常に複雑だ。

 そして、複雑な心境になる理由がもう一つある。結婚式が大変盛大なものなのである。

 お分かりだろうか。この結婚式を催したのは、あのである。マフィアさんってこわーい。

 大佐はどういう親戚かは知らないが、レオンカヴァルロと血の繋がりがあるらしい。母のいう「獅子」とはレオンカヴァルロのことであった。俺はてっきり母親がマフィアと知り合いなのだと思っていた。

 俺は今日レオンカヴァルロと共に結婚式の警備をしている。何が悲しくて両親の結婚式の警備をせねばならんのかとは思うが、どっちにしたって気持ちは曇りなので構わない。

 披露宴の最中、高砂の遠くから両親を悲しく眺めているとレオンカヴァルロさんの女ボスが来た。あの晩の、最強お姉さんである。名前はヴェロニカだそうだ。勝利をもたらす者って意味らしいよ。

 ヴェロニカさんは沈海さんが好きらしい、心を盗みたい的な意味で好きらしい。今現在の沈海さんの様子を見るにあちらも満更ではない様子。よかったね(棒)。

 ズッパイングレーゼはドミヌスを従えさせ、シフォンを牛耳るという高尚な目標があったらしく、そのためドミヌスを誘拐したり双子の父親と手を結んだりしてたらしい。アラビアータ襲撃依頼も、あそこのドミヌスを手に入れるためだったらしいよ、怖いね。ところが、何の因果かズッパイングレーゼはレオンカヴァルロの傘下だか同盟だった。しかし、レオンカヴァルロはドミヌス保護派のマフィアさんだ。つまり、ズッパイングレーゼはレオンカヴァルロを裏切らねばならなかった。でも、レオンカヴァルロは強いのですよ。で、ヴェロニカさんの大事な大事な沈海さんをうにゃうにゃしようとしたようです。双子ちゃんが狙われてたのは、俺達の勘違いだったらしいテヘぺろ。

 まあ、でもレオンカヴァルロさんとこは強大なだけあって、情報網のそれなりですよね。ズッパイングレーゼさんの裏切りとか知ってましたよね、っていう話。そこに確信ができたから沈海さんを守るようにこっそりひっそり依頼を出したらしい。丁度俺の力量も見れるしって、ひどいね。何かあったらついでにズッパイングレーゼさん潰すつもりだったらしい。それって沈海さん含めて俺達囮ですよね、ひどいっすね。

 とひどいひどい連呼したが、ヴェロニカさんは沈海さんがドミヌスなのを知ってたようで、なんとかなると思ってたみたいだ。でもね、にゃんともにゃらずー、でしたよ。

 という旨の世間話をして、ヴェロニカさんは去って行った。あの人、何しに来たの。

 他は知らないが、シフォンでの結婚式でブーケトスはしない。その代わり、ブーケを撃ち抜いた奴(女限定)が次に結婚できるという謂れがある。物騒な話だ。

 ヴェロニカさん初め幾人かの女性陣がひしめき合う。ある意味とっても恐いよ。

 俺の母親がそこへブーケを放る。林檎の花を使ったブーケだ。

 次々と銃声が響く。これ本当に結婚式なのって感じだ。

 ブーケは銃弾をくぐり抜け、放物線の頂点に向かい、格好つけて落ちていこうとしていた。そこへ、鳴り響く銃声。弾丸はブーケを射抜く。赤と白の花びらが、頭上に降り注いでいる。

 花びらが落ち、穴の開いたブーケを拾ったのはヴェロニカさん。周りはマフィアさんだらけだ、誰の銃弾かくらいはすぐに分かるし、もしヴェロニカさんの銃弾でなくても誰も何も言わないだろう。

 心底大事そうに、宝物のように、ブーケを抱えてヴェロニカさんは沈海さんに抱き着いた。沈海さんは少しよろめいて彼女を抱き締めた。砂吐きそう。



「俺達結局何だったの」

誰かさんの掌の上で踊っていただけなような気がする、とアンが言う。俺もそんな気分だよ。

「依頼をこなしただけって気もする」

悪刀が言う。

「いつも通りの?」

俺の言葉に悪刀は首を振る。ちなみに左右に振った。

「恋のキューピッドの依頼」

しばし、沈黙。ぽくぽくぽくちーん。

「「ああ……」」

結婚式なのに、披露宴なのに、美味しい料理が目の前なのに、いまいち盛り上がれない男三人の溜息が、虚しく木霊した。

 父親の名前はスティーブ・マッカーサーです。マッカーサーって愛称マックになるらしいよ。つまり、そういうこと。

 今回はふざけました。でもふざけきれてません。だから、またやります多分。

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