ようこそノロノロ事務所へ
目が覚める。
「今回もダメだったか」
そう呟き、俺はベッドから起き上がる。
ふと、時計を見るともう午前9時前になってる。
「クッソ、二度寝しくじった。」
そう言いながら、一階の事務所へ向かう。事務所には鎌田がすでにいる。
「斎藤さん、罰金ね。」
「頼むよ、悪気はなかったんだって。」
「いや、さっき 二度寝しくじった って言ってましたよね?悪気しかないじゃないですか。」
「あ、聞こえてたか。」
仕方なく鎌田に千円払う。
「今度から気をつけて下さいね。社員の方が早いって社長失格ですからね。」
「はいはい、分かりましたよ。んで、藁人形何個とどいた?」
「10個です。」
「了解です。よっしゃ今日は気合い入れて10個分売ろうぜ。」
「はい」
ある街にある人通りの少ない路地裏にノロノロ事務所という小さな建物がある。俺たちは毎日年中無休でとある商売をしている。
それは……呪い代行である。
今のストレスだらけの時代には他人に対する妬みや恨みが数えきれないぐらいある。
だが、今の時代丑の刻参りなどといったあまりにも面倒な呪いをする人はいない。そういった人のため、我々は呪い代行をしているのであった。
事務所は無許可で使用している廃ビルの中にある。そもそも営業した当初は俺もまだ未成年だったので、許可なんかとれるわけもないのだが…
今のところ社員は一人、鎌田詩織という女だけ、
社員はこれ以上増やすつもりはない
あまりこの呪い代行を公にされるのも何かと面倒だからだ。
鎌田との出会いはノロノロ事務所を始めた一日目だった。最初の客かと張り切ったが、いきなり
「ここで働かせて下さい」
だって
どこの千と千◯の◯隠しだよ
と思ったが、彼女の情熱、やる気がハンパなく、逆に呪い殺されてしまいそうだったので、仕方なく働いてもらうことにした。
この呪い代行屋というのは意外にも繁盛している。一日2、3人は来ることもあるし、電話の依頼を入れると、最高7件も入ったこともある。
おかげで金は入るわ、感謝もされる。なかなかいい仕事だと思うかも知れない、だが俺がこの仕事をするのにはもっと大切な理由がある。
「斎藤さん!!」
「え?あ、ごめん、ぼうっとしてた。で、何?」
「依頼人さんがいらっしゃってます。」
「……わかった。すぐ行く」
ノロノロ事務所では事務所とは別に依頼室という部屋がある。そこで依頼主と話し、そこで仕事内容と報酬金額を決定し、実行!!
見事思い通りいったなら、報酬を受け取る。
そういった形式である。
依頼室の前にある服装をチェックし、俺はその中に入っていった……