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P-240 白米が出来た


 トウミを使って籾柄と玄米を分ける。

 適当に回しながらやってみたんだが結構うまく分けられるようだ。

 ザネリさん達が作業を行ってくれるから、出口の玄米を手に載せて出来を見る。

 このまま玄米ご飯で食べても良さそうだけど、商船で扱っている白米に慣れているからなぁ。やはり精米は必要だろう。

 分離できていない籾もかなりあるようだ。ザルに受けて再び臼に戻している。

 籾殻はトウミの服出し口から勢いよく吐き出されているが、トウミの使い方がまだよくわからないからなぁ。分離されていない籾もいくらか混じっている。

 そんな籾は籾殻よりも重さがあるからトウミの吹き出し口近くに溜まっているようだ。これも臼に戻すことになりそうだな。


 酒盛りをしているカルダスさんのところに戻ると、すぐにカップが渡される。

 あまり飲むと、次の作業に支障が出そうだからパイプを取り出して、あまり飲まないようにしよう。


「結構上手く行くもんですね。思った以上に上手く米に分路しています」

「俺も見たが、買い込む米とは少し違うんじゃねぇか? なんか色が違っているんだが」


「まだ精米していないからですよ。もう1度臼で突くことになるんですが、まだ脱穀の最中ですからね。昼すぎに始めましょう」

「米作りは手間が多いとは聞いたが、確かに面倒だな。米なら買えば良いという連中も現れそうだ」

「それは仕方がねぇだろうよ。確かに手間だ。だが、考えてもみろ。これは俺達だけでも作れるんだぞ。手間ではあるが、大陸の商船との取引を止めても米を他b得られるということだからな」


 国の自立は食料自給の確率にも深く関わってくる。

 確かに貿易にも見える大陸の商会ギルドとの取引は盛んではあるが、その取引に大陸の王国が横槍を入れてくる可能性だってある。

 過去には何度も漁獲量や魔石の数について何度も横槍を入れてきたようだし、軍船をニライカナイに出してきたこともあるようだ。

 新たな大陸の王国との約定では、大陸の王国同士がある程度俺達の独立を認めてくれたようにも見えるが、そもそも国力比が比べ物にならないからなぁ。

 とはいえ、大陸の王国と対等に近い付き合いができれば問題はないだろうし、いざとなればさらに東に逃れるということもできそうだ。

 大陸の連中は魔石をどのようにして得るかを知らないはずだから、下手な手出しをしたなら水の魔石を長く手に入れることができなくなる。

 そんな事態になったとしても、大陸との交易を10年以上停止しても俺達が暮らしていけるニライカナイを作れねばなるまい。

 ニライカナイの版図は広大だからなぁ。オラクル以外にも米作りができる島があるかもしれない。

 

「なにを考えてるんだ?」

「漁をしながらもっと大きな島を探そうか……、なんて考えてました。さすがにこの島の田圃だけでは俺達が食べるだけの米を作るのは無理でしょう」

「案外近くにあるかもしれんぞ。俺達が漁をしているのはオラクルから片道2日程度だからな。バゼル、片道3日で漁をしてみないか? 新たな漁場も見つかるだろうし、ナギサの欲しがる島だってあるかもしれん」


 たちまち男達が盛り上がってしまった。

 だいぶ酒も回っているからだろうなぁ。このままここにいると、それこそ酔い潰されそうだ。

 カルダスさん達に頭を下げて、酒盛の場を後にする。

 だいぶ時間が過ぎてるから、そろそろ脱穀作業の終わりが見え始めるはずだ。


 昼食はトーレさん達が作ってくれた。料理を運ぶのはタツミちゃん達若い嫁さん達だ。

 ココナッツの椀に入った回線スープを頂きながら、バナナの炊き込みご飯を頂く。やはり皆で一緒に食べるといつもより美味しく感じるんだよなぁ。

 高台から大海原を見下ろしての食事だから、何となくピクニックでお弁当を食べる雰囲気だ。

 ザネリさん達が、まだ頑張って臼を突いているけど、あれは脱穀が上手く行かなかった籾を集めた物だろう。

 もう1つの臼では、いよいよ精米作業が始まろうとしている。


「ガリム達に任せても良かったのか?」

「ただ杵を上げて落とすだけですからね。後でカルダスさんもやってみたら良いですよ。何と言っても初めての米作りですからいろいろと体験したほうが良いと思います」


 それでも、カルダスさんは「心配そうにガリムさんを眺めているんだよなぁ。実の息子なんだからもう少し認めてあげても良いように思えるんだが。


「とは言っても、杵を落とすだけで米の色が変わるとは思えんのだが?」


 どうやらバゼルさんも同じ思いらしい。

 玄米の表面に付いている薄い膜のような代物が糠と呼ばれるものだ。玄米同士が強く擦られることで表面の糠が落とされる。

 しばらくあのまま突いてもらって、精米が上手く行っていないときにはもう少し臼の中に杵を突きいれるようにすれば何とかなると思うんだけどね。


 食後のお茶を飲み終えたところで、カルダスさん達と一緒に精米の状況を確認しに出掛けた。


「どうだ! だいぶ突き続けたんだが?」


 ガリムさんの問いかけに頷きながら臼の中に手を入れて米を手に掬う。

 広げた手の中を周囲の男達が覗きにやって来た。


「ほう! 確かに白米になってるぞ。だがまだ色が付いてるのもあるなぁ」

「もう少しってことか! 同じようにやるより、もう少し深く突いた方が良いかもしれねぇな」


 カルダスさんの言葉に、ガリムさん達が少し力を入れて突きはじめた。

 若者達が大勢いるから、30分ほど交代しながら突けば全て白米になるだろう。


「あれを救って、トウミに掛ければ白米だけを取り出せそうだ」

「細かい粉があったでしょう? あれも使い道があるんです。出来ればフルイに掛けた後でトウミを使いたいですね」

「フルイだと! オォーイ! ちょっと来い。急いでフルイを持ってくるんだ。米を分けるからあんまり粗くてはダメだぞ」


 カルダスさんが順番待ちをしている若者に声を掛ける。

 直ぐに走って行ったから、突き終わるころには用意されるはずだ。


「ところで、あの粉を何に使うんだ?」


 気になったのか、カルダスさんが問いかけてきた。

 

「そうですね。先ずは漬物に使えます。トーレさんに上手く漬けることができるかやってもらおうと思ってますが、その他には……」


 考えられるのはサビキ釣りでの呼び餌かな。余れば肥料にも使えるだろう。

 商会ギルドにカイコの蛹があれば3袋ほど購入したいと言っておいたから、手に入れば粉にして糠と混ぜれば呼び餌として極上の物が作れそうだ。

 ニライカナイでは漁網を使った漁をしないんだが、カゴ漁は行っている。呼び餌を団子にしてカゴに入れれば小魚だって獲れそうだ。


「ナギサ! 来てくれないか」


 ガリムさんが呼んでいる。どうやら精米の終わりを確認して欲しいということなんだろう。

 直ぐに腰を上げて臼まで行くと、再び米を手に掬う。

 今度は良さそうだ。人掬いした手の中のk目は全て白米になっている。


「これで十分です。このままザルに入れて、次の玄米を精米してください」

「分かった。そっちのザルを持ってきてくれ!」


 仲間が持ってきたザルに臼の米を掬い取って、次に移るべく臼に新たな玄米を入れて突きはじめた。


さて、これをフルイに掛けて……。

ゴザの上で作業を始めたら、トーレさん達がやってきて作業を替わられてしまった。

そんな俺を、笑みを浮かべたカルダスさん達が手招きしている。


「ナギサは指示を出しておけば良い。後は皆がやってくれるさ。それで、上手く行ってるのか?」

「思った以上に、上手く行ってます。これも竜神のおかげなんでしょう」


 不思議に思えるほどだ。最初から上手く行くとは思わなかったからなぁ。麻袋に数袋の米を収穫できれば十分だと思っていたが、どうやら20袋近い収穫を得ることができるに違いない。籾は1袋別にしてカヌイのお婆さんに預けておいたから次の雨季が始まったなら再び田圃に撒くことができるだろう。今度はあらかじめ苗床を作ってきちんと会揃えて植えてみようかな。

 刈り取りも楽になるだろうし、何と言っても収穫が上がると聞いたことがある。


「上手く行ったなら、田圃を増やしたいところだな。ここから見るだけでも、3倍には増やせそうだぞ」

「少しずつ増やせば良いだろう。先ずは今の田圃の南にもう1つ作ることで良いんじゃねぇか。入り江に砂浜も作ってるからなぁ。漁の合間の仕事だからあんまり働かせて漁に影響が出るとも限らねぇぞ」


 すっかり寄っているかと思ったんだが、案外まともな意見をカルダスさんが言い出した。


「カルダス……。お前、だいぶ酔ってるんじゃないか?」


 笑いだしたいのを必死でこらえて居るような表情でバゼルさんが問いかけている。


「よせやい。ココナッツ酒の5、6杯で俺が酔うわけがねぇだろうに」


 カルダスさんの同僚たちが笑い声をあげたところを見ると、やはり酔っているんだろう。カルダスさんは酔うとまともなことを言い出すってことなんだろうな。


「まあ、それはさておき俺もカルダスの意見に賛成だ。やはり砂浜作りも大事だからなぁ。子供達が海で泳ぎを覚えるのは、遊びを通してだ。今でも磯場で遊んではいるようだが、ちびっこたちの怪我が多いと嫁が話していたぞ」


 擦り傷ぐらいなら問題はないだろうが、磯田と岩がごつごつしているからね。確かに砂浜の完成は皆が望んでいるだろう。

 

「だいぶ運んではいるんですが、まだ砂浜には程遠いですね」

「数年は掛かるかもしれねぇぞ。ザネリ達がハンマーで出張った岩を砕いたようだが、それでもまだ岩が頭を出しているからなぁ。運んでくる量も麻袋2つでは足りんかもしれん」

「運ぶ量を増やすってことか? 袋2つを3つにするだけでもかなり捗るだろう。長老と相談してみるか」


 カタマランの甲板なら麻袋5つでも問題なく運べるが、急いで作るより、海流が砂を広げるのを見ながら砂浜を広げようということなんだろうな。

 ザバンでナギサ近くに運んで行っても、麻袋2つの砂は海流で風呂がってしまう。

 さすがに小さな台船で大量の砂を運んだ時には海の中で山になったが、翌日には山が無くなってしまったからなぁ。

 入り江の岸辺を全て砂浜したいところだけど、さすがにそれは無理な話だ。



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