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N-062 カゴ漁の準備


 リーザとライズにハッパを掛けられながら、せっせとリードルを運ぶ。

 その甲斐あって、初日の魔石は8個を手に入れた。中位が3個入ってる。2日目に9個だが中位は2個だった。海底が少し濁ってしまい、模様が良く確認できなかったこともある。

 濁りの原因が気になるところだが、今は頑張るしかないな。

 最終日には少し濁りが消えたが、俺が狙うのは大物だからな。あまり濁りは気にならない。

 4匹突いて、その中の3個に上位の魔石が入っていた。

 4日目に島を離れて氏族の島に帰る。


 そんなリードル漁の帰りの道中で、エラルドさんからの宿題である小型のカタマランの概要を考えた。

 基本の形を同じにすれば、一回り小さいって事で良いだろう。

 左右のフロートとなる船の大きさは横幅1.5m、長さを10.5mとすれば……。

 ザバンを置くのに1.8m。小屋を4.2m、甲板は3mと言うところだろう。1.5mほど余るからそれで操船櫓を作れるし、小屋の扉の反対側にはカマドだってできる。

 このカタマランに使っている魔道機関の魔石は6個だが、ラディオスさん達の船で使っている6個の魔道機関でも十分じゃないか?

 横幅は、左右のフロートの間隔を少し短い2.1mとすれば、カタマランの横幅は5.1mになる。左右に回廊を設けずに、船首への移動は操船櫓から屋根を伝って行けば良い。これで、小屋の横幅は4.8mを確保できるぞ。

エラルドさんが乗っていた大型の動力船よりも小屋が大きいから、大家族でも十分に寝られるんじゃないかな。


待てよ……。何も屋根を伝って前に行かずとも、小屋を丈夫に作って屋根にザバンを乗せるという手もありそうだな。小屋の屋根を前傾にして、操船櫓に滑車を付ければ、ザバンを動滑車で屋根に移動する事は簡単だろう。この場合は更に小屋を大きく作れる。操船櫓は更に高くしないといけないかも知れないが、元々カタマランは安定した構造だからな。この2種類で皆の意見を聞いてみるか。


 ところで、ラディオスさん達はちゃんとカゴを編んでいるんだろうか? 1個は作ったと言ってたけど、5個以上は漁に持って行きたいからな。

 

 氏族の島に戻ったところで、氏族に中位魔石を上納し、カヌイのご婦人に低位魔石を1個エラルドさんを通して渡す。

 義兄弟の子供を預かってもらったんだから、これ位は良いだろう。

 サリーネは魔石を数個だけを換金したようだ。動力船の水がめである真鍮の容器に付いている魔石と交換することを考えているらしいが、まだまだ使えるんじゃないかな?


 リードル漁が終わると、雨季の季節が近づく。

 いつものように、昼過ぎから次の漁の話をしていると、突然の豪雨になってしまったが、カタマランの小屋は大きいからな。小屋の中で相談を続ける。

 

「とりあえず、12個の竹カゴを編んだぞ。いつ出掛けるんだ?」

「そうですね……。商船で当座の食料は手に入れているはずですから、明後日にしましょうか? カゴに少し取り付けるものもありますから」

「あのカゴに何が必要何だ?」


 そんなラディオスさんの質問に、メモ用紙を取り出して説明を始める。

 カゴを沈めて、カゴの中にロデナスを誘うんだから、餌が必要だ。それに、竹製のカゴを海底に安定させるにはある程度の重さが必要になる。更に沈めた竹カゴを引き上げるロープとロープの場所を示す浮きだって必要だ。浮きに竹で旗を立てておけば遠くからでも見つけられるだろう。


「そういうことか。石は南の島から運んで来てる中から選べば良い。それと竹カゴに付けるロープは水深より長くする必要があるな。それは俺とラスティさんで受け持つ」

「なら、俺達は浮きを作れば良いな。カイトのゴムボートの中に入れた位の大きさなら10個位は直ぐにできる。それに竹の棒を差して天辺に赤い布でも巻いておけば、カイトの欲しいものになるだろう」


バルテスさんは、ちゃんと俺の説明で必要品を理解できたみたいだな。

 となると、俺の仕事は餌を釣るってことになる。待てよ、少し大きなパレットを板で作っておく必要がありそうだ。

 竹カゴの中に何が入っているか分らないからな。いったんパレットに中身を出して選別した方が良さそうだ。


 突然の豪雨は、しばらくして止んでしまった。2時間も降ってはいなかったんじゃないかな。これが段々と長くなるんだよな。

 皆が帰ったところで、サリーネ達に次の漁の説明をしたんだけれど、カゴでロデナスを獲るというのがどうも信じられないようだ。

 まあ、俺も上手くいくかどうかは、やってみないと分らないんだけどね。


「出発は明後日だから、明日は餌を釣るのと、平たい箱を作るつもりなんだ」

「平たい箱なら父さんに頼んで上げるにゃ。どんな箱にゃ?」

 リーザの言葉に、簡単な絵をメモ用紙に書いて説明すると、直ぐにリーザが小屋を出て行った。早速頼んでくるのかな?

 その他にも必要な物を考えると、トングがいるかも知れない。まあ、竹を切ってクサビ状の木の両端に縛り付ければ良いから、俺にでも出来そうだ。

 箱の中を探すための棒は、短い竹竿で良いだろう。長さを変えて2本ずつ用意しておくか。


 夕食を終えて、甲板でワインを飲みながら夕涼み。

 さすがに一雨来たから、過ごしやすいな。

 そんなところにやってきたのは、エラルドさん夫婦だ。手に持っているのは、俺が頼んだベンチだぞ。ビーチェさんが持っているのは、天板が1m四方ほどの小さなテーブルだ。


「これでどうだ。カイトのところは皆が集まるからな。後でもう2つ程作ってやる」

「済みません。やはり、甲板に座るよりもベンチの方が良いですからね。テーブルも助かります」


 俺とエラルドさんがエラルドさん謹製のベンチに座り、ビーチェさんは船尾に作り付けのベンチに座る。俺達の真ん中にテーブルを置くと、サリーネがエラルドさん夫婦の酒器を持ってきた。


「昔、グラストと一緒に、大陸近くの島にまで行ったことがある。その島の酒場はこんな感じだったな」

「あまりベンチを利用する氏族はいないにゃ。でも、こうやって飲むのも良いものにゃ」

 ビーチェさんは気に入ったようだな。

 甲板に座って食事や酒を飲むのも良いけれど、ずっとテーブルでの食事で暮らしてたからな。この世界にもテーブルはあるのだろうが、船での生活はそんな余分な品物を置く場所がない。そんなわけで甲板に料理を並べて食べてるんだろう。

 サリーネ達が好む方で構わないが、たまにはテーブルを囲んで食事をしよう。


「リーザに頼まれたものは、明日の夕方までには仕上げるぞ。カゴの中身の分別だろう。4隅は補強しなければなるまい」

「あれで、分かったんですか?」

 ちょっと驚いてエラルドさんに聞いてみた。

「カゴや竹筒を使って漁をする氏族もいる。やり方はその氏族内で受け継がれているらしい。俺が聞いても教えて貰えなかった。だが、同じような箱を使っていたのを離れた場所で見たことがある」


 なるほどね。となると、バル用の餌木やリードル漁のやり方も氏族の秘密なんだろうな。他の氏族にはそれなりの漁の仕方をしてるって事になる。

 釣り針や銛は共通なんだろうけど、銛の大きさやシャフトの太さに微妙な差異があるのかも知れないな。


「餌を目当てに、何が入るか分かりませんからね。とりあえず木箱に入れれば問題は無いと考えました」

 俺の話に頷きながら酒を飲んでいる。ビーチェさん達はおしゃべりに興じているな。

 こんな生活がいつまでも続くならば良いんだけどね。


 翌日は、朝早く竹を切って来て、トングを3つ作る。竹を使って50cm程のヘラも作ったから、これで箱の中を探れば良いだろう。

 昼からは、桟橋で釣りをする。何とか10匹以上釣らないと、カゴに仕掛けられないからな。

 何とか20匹程釣り上げたけど、大きいカマルを3匹ほどおかずとして取り上げられてしまった。

 カタマランのベンチの隅で、餌用の魚を釣っていると、ラディオスさん達が竹カゴや浮きを持ってやってきた。さすがに広い甲板でも1m四方で高さが50cm近い竹カゴを10個も置けないから、屋根に乗せて行く事にした。操船楼からの操船の邪魔にならないように左右に振り分けてロープで結ぶ。

 浮きは、まとめて甲板の端に結んでおけば落とすことは無いだろう。

 最後にエラルドさんが木箱を持ってやってきた。1m四方で高さは15cm程だが、1つの板が取り外せるようになっている。その反対側には30cm程の棒が左右に突き出ていた。


「中身を捨てる時にはこの板を外して棒を使うんだ。この船の船尾の板も外せるんだったな。そこから捨てれば良いだろう」

「そうですね。気が付きませんでした。ありがたく使わせてもらいます」


 夕食は皆で一緒に取る。

 リーザ達が奥さんや子供達も呼んで来たみたいだ。浅いザルにご飯やおかずを入れたお皿を持ってきてくれたんで、たちまち宴会みたいになってきたな。

 同じ料理でも味が微妙に違うのがおもしろい。これがお袋の味になるんだろう。サリーネの作った野菜炒めと、ビーチェさんの野菜炒めの味が同じなのも、ビーチェさんの味付けが元になっているからだろう。


「それで、誰と行くんだ?」

「一応、手伝って貰った人達を考えてたんですが……」

 俺の言葉に、ラディオスさん達が頷いている。絶対行くって感じだな。

「ゴリアス達を乗せてやってくれ。バルテスは俺の船で良いだろう。ラディオスとラスティはそれぞれの船で良いな。それと用意するものはあるのか?」

「そうですね。仕掛けたカゴからあまり離れるのも問題ですから、根魚でも釣りますか?」


 サンゴの崖近くなら根魚も有望だからな。夜釣りをして、昼間は寝てれば良いだろう。

 本来ならば、素潜り漁をしたいところだが、カゴ漁をする者達の多くがそれ程深く潜れない連中だ。ならば彼らに出来る漁の成果を確認する意味で、根魚釣りをする方が理に適っていると考えるべきだろう。

 

「カイトの考えた通りで良いだろう。上手く行けばと長老も結果を楽しみにしている」

 それも、ちょっとプレッシャーが掛かる話だな。

 だが、これでダメなら外にも方法がある。先ずは1つずつ試していくか。

 


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