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P-169 やはり保冷船が足りないようだ


 今回から5日ごとに宴会が行われている気がする。

 俺達の出漁順番は20日ごとに回ってくるんだけど、シドラ氏族との定期船がほぼ10日ごとにやってくる。

 大きな保冷庫に積み込んで帰って行くんだが、さらに人が増えると持ち帰る許容量を上回りそうだ。


 オラクルの長老とシドラ氏族の長老間で何度か文をやり取りして、新たに燻製小屋と保冷庫を増設することになった。

 材料は定期船が運んでくるからバゼルさん達は、高台で組み立てるだけで良いらしい。

 定期船は食料などとともに、島の開拓に必要な品も運んでくれる。

 俺が頼んだセメントのような接着材も3樽が運ばれてきたから、いよいよ排水路と感慨用水路を作ることができそうだ。


「なにを作るんだ?」


 太い竹竿と板で作った箱を見て、バゼルさんが問いかけてきた。


「水を流すパイプを作ろうとしてるんです。飲料水は竹の節を抜いて繋いでありますよね。用水路も同じように作ろうと考えてるんですが、土の中に埋めようと考えてますので、この枠で砂を固めようとしてるんです」

「砂を固めたところで、竹竿を引き抜くのか……。排水路も同じように作るのか?」


「雨季の雨を考えると、こんなパイプでは足りないでしょう。こんな形に道沿いに掘り下げて板で固定して接着剤を混ぜた砂を流しこめば水路ができると思ってるんですが……」

 

 メモを取り出して形を見せると、バゼルさんが感心した顔で頷いてくれた。


「畑は、このメモのように作られているはずだ。ならこの作業は俺達に任せておけ。やり方が分かったからな。砂はガリム達が運んでくるものを分けてもらおう」


 思わず苦笑いが浮かんだのは仕方がないことだろう。

 石の桟橋作りに、大量の砂や砂利が必要だからね。バゼルさん達の水路作りが始まると、半分ほどがそちらに使われてしまいそうだ。


 夕暮れ時に集まった若者達の中に入って、ガリムさんにバゼルさん達が水路作りを始めることを伝えたんだが、意に反してガリムさん達は嬉しそうな表情を見せてくれた。


「それなら、頑張って運ばないといけないな。嫁さん連中が畑の水撒きに苦労している話をしてたんだ。今季は我慢するとしても毎年では可哀そうだ」

「俺達も水撒きを手伝った方が良いんじゃないですか?」


「それはそれだ。あんまり陸の暮らしに手を出すと、嫁さん達の取りまとめから苦言が出るぞ」


 嫁案達の取りまとめというと……、トーレさんtくぁちになるのかな?

 トーレさん達から見ると、俺達は漁ができるだけの男達ということになるらしい。

 俺の場合は少し評価が上がって、さすがな龍神様の姿を背に持つと言われることもあるんだけど、確かにいろいろと思い当たることがあるんだよなぁ。


「でも、石の桟橋だって燻製小屋だって俺達が作ったようなものですよ」

「それぐらいはできるだろう、ってことなんだろうな。とにかく、あまり陸の仕事に手を出すんじゃないぞ。とはいえ便利に仕事ができるようにするのは別だ」


 陸の仕事はギョキョーと小母さん達に老人達が仕切っている感じだからなぁ。

 その上に長老がいるんだが、全体の調整を図るのが役目のようだ。

 まだシドラ氏族の長老になったわけではなく、『候補』という言葉が付くのだが、オラクル内では長老として位置付けられている。


 島が大きくなってから今年で3回目の乾季だ。

 さすがに石の桟橋も、浜からおおよその形が分かるまでになってきた。

 まだまだ完成までには時間が掛るようだけど、石積のために海に潜ると小魚が寄ってくることある。

 サンゴもうまく根付いたし、今でもたまにサンゴの欠片を植え付けているから、将来は綺麗なサンゴの海になるに違いない。


「ところで、もうすぐ俺達の出漁になりますけど、次はどこに向かうんでしょうね?」

「それなんだが、近場であれだけの漁をすると、燻製小屋が足りないと聞いたぞ……」


 バゼルさん達が新たに作ると言ってたからなぁ。

 バゼルさんに計画を話すと、うんうんと頷いている。


「だろうなぁ。それで、少し遠くで漁をすることにしたのかもしれない。漁場まで1日ではなく1日半ということらしい。

 漁の期間が2日になるんだが、夜釣りは3日できるはずだ。2割ほど減ると思ってはいるんだが、どうなるかだな。明日には最初の船団が帰ってくるはずだ。どれぐらい減るかを見て、漁場を考えるとエルマスさんが言ってたよ」


 すでに候補をいくつか絞っているのだろう。

 狙いは大物かな? トウハ氏族の血を引く連中が多いから、大物狙いはいつものことだからね。


 翌日、いつものように桟橋の石積を終えて、浜で焚火を囲んでいると西の方から浜に近づいてくる船団の姿が見えてきた。

 帰ってきたようだ。明日は石積を止めて俺達の出漁準備しないとな。その前に、獲物の運搬も手伝わないといけない。


「どれぐらいの漁果だろう? 長老やバゼルさん達も気にしてたからなぁ」

「素潜りの得意な連中ばかりだからなぁ。夜釣りは期待できないだろうから、大型ぞろいってことかな」


 そんな噂をしながらココナッツ酒を飲みかわす。

 今夜はこのまま宴会になりそうだから、あまり飲まないでおこう。

 そうじゃないと、明日の準備がタツミちゃん達だけになってしまいそうだ。

 宴会のココナッツ酒に、何とか量の制限を設けたいと思ってるぐらいだけど、そんなことをしたらカルダスさん達に海に放り投げられそうなんだよなぁ。

 

 ある意味、シドラ氏族の連帯を深める儀式なんだろうけどねぇ。俺みたいな下戸に勧めるのは何とか勘弁してほしいんだよなぁ。


 宴会の翌朝は皆で獲物を燻製小屋へと運ぶんだが、昨夜が宴会だったからなぁ。飲み過ぎてげんなりした連中ばかりだ。

 とはいえ、いつものように高台へと竹のシャロを使って背負いカゴを引き上げる。

 

 ブレーキのようなものを考えないと、その内にカゴをひっくり返しそうだ。


 何とか昼前に全てのカゴを高台に上げると、俺達の役目が終わる。

 どんな具合かと魚を選り分けている小屋に向かうと10人ほどの小母さんの賑やかな話声が聞こえてくる。

 あの感じだと、漁の日数が減ってもそれほど大きく漁果が減っていないということなんだろう。


「引き上げは終わったのか? それなら俺と一緒に来てくれ」


 手際よく選別される魚を見ていたら、バゼルさんに肩を叩かれた。

 なんだろうと思いながらも、バゼルさんの後について行った先は長老の小屋だった。


 3人の長老が大きな囲炉裏の奥に座っている。

 囲炉裏を挟んで長老と向かい合っているのは、壮年の男達数人だった。いずれも良い漁師に違いない。

 長老が笑みを浮かべて、囲炉裏の左手に腕を伸ばして俺に座るように指示してくれたんだが……。

 良いのかな? シドラ氏族の長老のログハウスと伊那路場所じゃないか。

 俺の反対側にも2人座っている。俗に世話役と呼ばれる人達だ。

 シドラ氏族の島では専業化されているんだけど、オラクルでは壮年の男達が交代で行っているらしい。


「今日は、珍しくナギサまで来てくれたか……。ナギサの席はそこじゃ。いつやってきても構わんぞ。

 我らオラクルの長老役を仰せつかったが、シドラ氏族に属することには間違いないからのう。

 それに、我等の相談役としても適任じゃろう。オラクルをここまで開拓してくれたのじゃからな」


「オラクルを開拓したのはシドラ氏族の人達であって、俺もその中の1人です。まだまだ開拓途上ではありますが、皆で暮らすといろいろと見えてきますね」


 うんうんと長老が笑みを浮かべて俺の話を聞いている。

 やはり、思うところがいろいろとあるのだろう。それなりの人生経験を積んだ人たちだからなぁ。老人を敬う文化がネコ族にはあるのだろう。


「確かにシドラ氏族の暮らす島とはわけが違う。その理由もわかっては来たが、ある意味贅沢な悩みとも思えてしまうのう」

「最大の原因は、島が大きいということですね。島が小さければ全てが近くにありますが、これだけ大きいとなると、施設間の距離が問題になってきます。

 将来的には木道を整備して魔道機関で動くトロッコも視野はありますが、かなり先になるでしょう。あまり急ぐと碌なことになりません。

 今期はオラクルで漁が続けられることで良しとするべきです。シドラ氏族の島との定期便の数が増やせませんから……」


 長老達が俺の話を聞くと、今度はバゼルさん達に厳しい目を向けた。


「ということじゃな。やはり我等とは違って先を見る目が出来ておる。オラクル周辺の漁場が豊漁続きであっても、この島の住民を急に増やすということには出来ぬじゃろう。

 漁果を運ぶ船に限界があるということをよく知って欲しい」


「次の保冷船を作るということか? ここまでにだいぶ蓄えを使っているはずだ。新たな保冷船となれば大型になるだろうし、運行するための住民もいるだろう」


「シドラ氏族の島を発つときに長老からの確認事項があった。それが保冷船の4隻目についてだったが、この前の連絡船に文を書いておいたから、長老達が最終判断をしてくれるじゃろう。

 長老達が考えていたのは、かつての外輪船じゃった。

 2隻を並べればかなり大きな船になる。速度は遅いが燻製にすれば魚の傷みはほとんどないからのう」

 

 外輪船がかつて使われていたと聞いたことはあるんだけど、どんな代物か見たことがないんだよなぁ。

 構造上、速度はそれほどでもないのだろうが、それなら外輪で動かさずにスクリューを使っても良さそうだ。

 通常のカタマランほどの速度はでなくとも、半分には下がらないだろう。

 のんびりした航海では嫁さん達がストレスをため込むに決まってるからなぁ。それが俺達男衆に向けられるのは考えものだ。


「さすがに外輪船での定期運航は考え直した方がよろしいかと……。外輪船を動かす動力は魔道機関でしょうから、カタマランと同じようにスクリューが使えるはずです。

 現行の保冷船並みの速度が出なくとも、月に2度ほど行き来できれば、保冷庫に燻製が溢れることはないと考えます」


「たぶんそうなるじゃろうな。とはいえ、カタマランの船体よりも横幅の広い船じゃからあまり速度は出せんじゃろうなぁ」


 燻製小屋と保冷庫だけではなく、輸送の問題も考えていたようだ。さすがは島の重鎮だけのことはあるな。

 そうなると、もう1つ気になるのはカヌイのお婆さん達だ。

 何も問題がないとは思えないんだよなぁ。


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