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P-048 漁には工夫と疑問が大事らしい


 サディさんに俺達の漁果の運搬を手伝ってもらい、タツミちゃんと2人でギョキョーに出掛けて行った。

 今日は商船が島に停泊しているから、ついでに買い物ということになるんだろうな。


「シメノンの群れに遭遇したとは、運が良いな。あの漁場では滅多にシメノンは現れないのだ」

「運が良いということなんでしょうね。何時シメノンが現れても良いように、仕掛けを付けたリール竿を夜釣りの時には常に傍に置いておきました」


「シメノンが釣れる時間は短いからなぁ。俺は手釣りでやるんだが、直ぐに取り出せる状態でベンチの中に入れてあるぞ」


 長くとも1時間半に満たないのがシメノン釣りだ。多くは1時間に満たない時間だからぐずぐずしていると群れが去ってしまう。

 ガリムさん達はどれぐらい上げたんだろう? ちょっと気になるところだ。


「ナギサのようにシメノン用の竿を2本用意する連中は少ないだろうな。だが、リードル漁で得た魔石で手に入れるなら、それほど無理は無さそうだ。漁は準備が大事だからな。長老達にも聞かせてやろう」


 竿を使わないでシメノンを釣れるなら面倒ではないんだが、俺の場合はリール竿を向こうでも使っていた。

 手釣りでは、数を減らしてしまいそうだが、長い目で見ればバゼルさんのように手釣りを中心にすべきなのかもしれない。

 

「漁の仕方は大別できるが、皆それぞれ工夫をしているようだ。ネコ族は余り工夫とは縁のない種族なんだが、アオイ様の妻であるナツミ様が学校を作ってくれた。読み書きと計算を今ではカヌイの婆様達が教えてくれる。

 それら以外に、1つ大事なことを教えてくれる。疑問を持つこと、その疑問をどうしたら解決できるかを考えることだ」


 それって、自然科学の基本じゃないのかな?

 夫であるアオイさんの偉業は色々と聞かされているけど、ナツミさんも頑張ってたんだな。

 ナツミさんの思いがどこまで通じたのか疑問はあるけど、少なくともよりよい世界を作ろうとする考えは受け継がれているようだ。


「曳き釣りも竿を2本とせずに、数を増やす者もいるし、左右の竿の道糸の長さを変える者もいる。応用というのだろうが、そんな考えを持つことができるのもカイト様達のおかげだと長老達が話しているぞ」

「時間や、海域の深さも関係しそうですね。ただ仕掛けを曳くということが無いようにします」


 ポン! と俺の肩をバゼルさんが叩く。

 それが分かれば十分だということに違いない。


「ナギサ、大漁だったな」


 大声で褒めてくれたのはカルダスさんだ。

 づかづかとバゼルさんの船に乗り込んできたから、バゼルさんがココナッツ酒を作って俺達の前にカップを置いてくれた。


「ガリムも運が良い。友人達の腕も良いし、新たに船団に加わった連中もそれなりの腕だ。ギョキョーを覗いてきたが、全員が銀貨を手にしたらしい」

「ガリムが喜んでいるんじゃないか? 数回続けば中堅達からも一目置かれるだろう」


「あまり舞い上がらないように、1発ぶん殴っておいた。船団の漁果を自分のことのように誇るのはまだ早いとな」


 殴らなくても良さそうだけど、ガリムさんの将来を思ってのことだろう。

 口で言うよりも手が速いのかな? 

 ガリムさんの今後の苦労が思い浮かぶ。

 豊漁は船団を組んだ連中の腕を褒めて、不漁ならガリムさんの指導不足と言われたらねぇ……。


「それでもナギサが抜きんでているぞ。船を手にして、初めての船団に参加して2カゴをギョキョーに運んだのはお前が初めてだ」

「上手くシメノンの群れが来たからだと思います。とはいえ、俺としては満足していないんですよ。明日はオカズを突こうと考えてます」


 俺の話にカルダスさんがバゼルさんに顔を向ける。

 今更何をするんだという感じだな。


「銛の訓練だ。ナギサの銛の腕は、トーレが別の意味で喜んでいる」

「オカズが増えるってか? 素潜りでは致命的だが、それであの仕掛けを使うんだろう?」


「あれでは数が出ん。大物も5YM(ヤム:1.5m)程度までだろうな。それ以上となると、やはり銛が一番だ」

「だよなぁ……。なら、南の突先で練習するんだな。少し潮の流れが速いが、子供じゃねえんだから何とでもなるだろう。それに魚が動いていた方が練習には都合が良い」


 カルダスさんが腕を伸ばした先は砂浜の終点部だ。

 西に岩礁が延びているから魚はいるだろうけど、潮の流れがあるのか……。


「オケに浮きを着けてロープを結ぶ。ロープの先に石を結んでおけば、獲物を入れるには都合が良いぞ。オケの上にバナナの葉を乗せておけば魚も傷まねぇ。どうせ夕食にするんだからなぁ」


 なるほどねぇ。今日中に作っておくか。

 明日の昼下がりは、オカズを突いてみよう。


 買い物から帰ってきたトーレさん達が夕食の準備を始める。

 すでにカルダスさんは帰ってしまったが、オカズ突きに使うオケを買いに行くと言ったら、タツミちゃんがカヌーで同行すると言ってくれた。

 カヌーなら、ザバンの積み下ろしのように面倒ではないから、ありがたい話なんだけどね。


「オケは1つ買ってきたにゃ。夜釣りの獲物を甲板に掘り投げておくのは良くないにゃ」

「クーラーボックスや保冷庫に入れるのも面倒だし、カゴではねぇ。オケなら良いんじゃないかな」


 これにゃ! と言って見せてくれたのは結構大きなオケだった。伯父さんの家にあったご飯を入れるオヒツに似てるけど、両脇に持ち運べるように手を差し込む穴が開いてるし、蓋まで付いている。

 氷を入れれば獲物の鮮度を保てるに違いない。


 夕食を頂いていると、明日にバゼルさん達は漁へ出掛けると教えてくれた。

 乾期が終わりに近付いているから、リードル漁の前に魚をたくさん獲っておこうということなんだろう。


「そう言うことだから、一端この船から離れて、改めて桟橋に留めればいい。俺達は6日で帰ってくるが、ナギサ達は4日の漁だ。頑張って銛を使ってみろ」

「ダメもとで頑張ってみます」


 若手の漁は2日間を目途にするようだから、次は少し近場になるのかな?

 船団を解く前に、次は航程が1日だと言ってたからなぁ。

                 ・

                 ・

                 ・

 翌日の朝早く、バゼルさん達は数隻の船団を作って東の漁場に向かっていった。

 西に低い雲があるから、日が傾く頃には雨が降るんじゃないかな。

 タツミちゃんは明日出掛けるために食料を仕入れに行ったから、その間にカタマランの水ガメを満たしておこう。

 

 昼前に蒸したバナナを頂いて、雨が降る前にオカズを突きに出掛ける。

 俺の身長ほどの銛はmb何となく頼りなく思えるけど、狙うのが小さい魚ばかりだからねぇ。船首に結わえてあったカヌーを下ろしてクーラーボックスを乗せる。

 ココナッツジュースを入れた水筒が氷で冷やされているから、途中で休憩したときにでも2人で味わうつもりのようだ。


 水着に着替えたタツミちゃんが麦藁帽子にサングラスを掛けてカヌーに乗り込んだ。

 目的地まで300mぐらいあるんだが、俺は泳いでいくことになるんだろうな。

 銛をカヌーの舷側に結わえたところで、先に泳いでいく。

 浜の近くでは子供達が小さな銛を持って遊んでいるんだけど、かなり離れているから子供達への危険はなさそうだ。

 

 しばらく泳いでいくと水底が砂から岩とサンゴに変わる。

 サンゴ礁にまで発達するのはかなり時間が掛りそうだけど、同じ海域なんだよなぁ。

 どうしてサンゴの生育に乱れがあるのかわからない。

 同じようにサンゴが繁茂していてもおかしくはない。

 何らかの外乱があるんだろうが、今のところはそんな海域だと割り切ることにしよう。


 いつの間にか水深が5mを超えている。

 海底はゴロゴロした岩が転がっている。島を見るとどうやら砂浜の南端近くになるらしい。浜からせり出した岩がちょっとした岬を作っているのが分かる。


「この辺りで良いにゃ。たっぷりおかずを突くにゃ」

「明日は漁に出掛けるから、餌にもつかえそうだ。それじゃあ、始めるよ」


 タツミちゃんと話をしながらカヌーの舷側に結んであった銛を取り出す。

 手を振ってカヌーを離れると、シュノーケリングをしながら獲物を探し始めた。


 大きい魚は単独行動をするけど、小さな魚は群れを作るようだ。

 だけど、見るからに小さいんだよなぁ。

 桟橋でオカズ釣りをした時の魚とそれほど変わりはない。大きくとも20cmを超える程度だ。

 焼き魚には丁度良さそうだが、3枚に下ろして夜釣り用の短冊を作るとなると数匹は必要に思える。

 

 大きいのを探すより、ここは数をこなすか。

 となれば、どこで潜っても良さそうだ。


 銛のゴムを引いて左手で握る。

 息を整えて、銛を前に出して静かに潜っていくと、岩の間に魚がいるのに気が付いた。

 横からではなく上からだからな。

 慎重に頭を狙って、左手を緩める。


 握った手に中を銛が勢いよく滑り、魚に命中した。

 狙いは……、やはり外れている。頭を狙ったんだが背中に当たってしまった。

 海面に顔を出して、銛から獲物を外すと高く掲げる。

 すぐにタツミちゃんがカヌーを漕いでやってきた。


「背中にゃ」

「頭を狙ったんだけど……。次は上手くやるよ」


 ちょっとタツミちゃんが、呆れた顔をしてるのが気になるところだ。

 だけど練習なんだからね。最初から上手くいくようなら練習は必要ないってことになる。


 ひたすら潜って、魚を突く。

 2時間ほどの練習で、20匹ほどの魚を突いたところで今日は終わりにする。

 西の雲がだいぶ近づいてきたらしい。

 早めにカタマランに戻ったほうが良さそうだ。


 甲板にタープを広げて、タツミちゃんが魚を捌いても濡れないようにする。

 次に船首に向かってカヌーを引き上げるとザバンの横にロープで固定した。

 甲板に戻ると、タツミちゃんがオカズ用と餌用に獲物を分けていた。


「半分はおかずにならないにゃ。餌にするにゃ」

「相手が小さいし、動くんだよねぇ。もっと練習しないといけないみたいだ」


 漁で生活する以上、無駄な魚を取るべきではない。

 それを考えると水中銃を使うことになるんだが、大きな魚だっているらしい。

 前に突いた1.5mのハリオが水中銃の限界だろう。

 突けても、引き上げることができないならやめるべきだ。

 水中銃でスピアを次々に撃つことができれば良いのだが、あまり撃つと売れない魚になってしまいそうだ。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 訂正ありがとうございます…が、もう一カ所あります。 「中略、カイト様の妻であるナツミ様が学校を作ってくれた。読み書きと計算を今ではカヌイの婆様達が教えてくれる。」 ここもお願いします。…
[良い点] ほのぼの南国漁生活なところ [気になる点] さすがに待って、カイトの妻ナツミは無いでしょう。
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