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N-039 石運び?

 2日間の漁をして釣れた魚はシーブルが6匹だった。

 急いで氏族の島に帰ると商船が来ている。サリーネ達がビーチェさん達にも手伝って貰って獲物を商船に担いで行った。

 売値は1割を氏族に上納して、残った金額を6人で分配する。

 1人124ドムは、まあ、大漁と言って良い数字じゃないかな。


 他の船も5匹以上釣り上げてはいたが、俺達が最初に釣ったシーブルを超えた物は無かったようで、ラスティさんは上機嫌だ。


「銛を準備しとかないといけないな。それに銛に付けた紐はもっと長くしとかないと使い難いぞ。銛先は兼用出来るが紐の長さは変えねばならないな」

「銛を打ったのか? よくも咄嗟に思いついたものだ」

「カイトが銛を持てと言わなければ使わなかったよ。だが、あれほど大きいと銛は必需品だな。海中での銛と違って投げ下ろす感じに打ち込むから深く刺さるんだ」


 実際に銛を打たねば分からないな。

 それでもラスティさんの説明を聞く限りでは、水中よりも容易に聞こえるんだが……。


「カイト。大物を持ってきたな。ラスティから聞かせて貰ったぞ。銛を打って引き上げるなど、誰も考えもしないだろうな」

「ラスティさんの銛の腕を見せて貰いました。俺も頑張るつもりです」


 そんな俺の返事に肩をポンっと叩いて、グラストさんが俺達の輪に加わった。グラストさんの声にエラルドさんまでやって来る。

「カイト。つまみを釣って来るにゃ!」

 ビーチェさんが酒のビンを抱えて俺に頼み込んで来た。まあ、昔から俺の役目のような気がするけど、この船の主は俺なんだよな。

 3匹程ベンチの外れで釣り上げたところで、ライズが代わってくれた。

 急いで輪に加わる。たぶん次の漁の相談に違いない。


「という事で、石を集めねばならん。幸いにも南の小島には石がごろごろしている。それを運んで来るのがお前達の仕事になる」

 漁では無くて石集め?

 そんな疑問を持ちながらワインの入った酒器を傾ける。


「全ての動力船の持主が10日、石運びをするんだ。早めに終えて漁に出るんだな。近場で仕事をするから次の商船を待つにも都合が良いだろう?」

 うんうんと頷く俺達だったが、何を作るんだろう?

「とりあえず10日は確定だ。その後もあるだろうが、先ずは石が無ければ何も出来んからな」

「石なら、ジャングルの奥にゴロゴロしてたと思いますが?」

「あれは大きすぎるんだ。小さいのはすでに使い切ってる。残ったのはノミで小さくしたいのだがハンマーでたたいても中々割れんからな。あれなら隣の島から運んだ方がマシだぞ」

 エラルドさんの体格は俺よりはるかに優れてる。腕も筋肉が浮き出てるぐらいだ。そんな人がハンマーで叩いても割れないってのも問題だな。

 ここは地道に石運びをした方が良さそうだ。


「それでいったい何を?」

 俺の言葉にラディオスさん達も頷いている。今まで誰も聞かなかったのか?

「言ってなかったか? 桟橋と段々畑作りの為だ」

 グラストさんが俺達の前に紙を広げた。そこに描かれたのは確かに桟橋と段々畑だが、かなり大きいぞ。

 段々畑は横100m以上ありそうだし、段の高さは50cm程だ。それを2段に作るらしい。奥行きは30m程だな。

 桟橋は商船が停泊する隣に作るようだが、長さはかなり長いぞ。横幅も2m以上もありそうだ。だが、これを作るとなるとかなりの石を運ばなきゃならないんじゃないか?

 

「段々畑はそれ程問題はないが、桟橋が問題だな。10年近く掛かりそうだぞ」

「ああ、長老もそれを問題にしていたが、始めない限り終わりが来ないからな。子供達の代には完成するだろう」


 石の桟橋を作るって事だな。

 確かに、丸太の上に横木を乗せて板を張っただけだからな。ちゃんとした桟橋があれば荷車だって使えるに違いない。

 時間が掛かるのは仕方がないが、俺にとっての問題はただ一つだ。


「石を接着できる物はあるんですか?」

「あることはある。値段は高いが、それは大陸の奥で取れるからなのだ。魔石の利益を使って氏族で買えないことは無い。どうするんだ?」

「この桟橋ですが、石で作った場合に2つの問題が出てきます。1つは砂泥に石を積むんですからかなり沈みますよ。もう1つが、石組を作る時に崩れる事をいかに防ぐかです」

 

「最初の沈みの防止だが、杭を打つことになるな。表面を焦げるまで焼いた杭を打つんだ。何本も打ってその上に石を積む」

 地盤強化の方法は知ってるんだな。

「桟橋の石積みは、カイトの言った石をくっ付ける物がいるんだ。樽【たる】で買う事になるだろうが、2つの液を混ぜるとドロリとした粘土のようなものが出来る。それを石と石の間に埋めるのだ。一晩で固まるのだが、1樽で銀貨10枚近くになるのが問題だな」

 

 使える物があるなら、買う事になるんだろうな。

 次のリードル漁も頑張らねばなるまい。

 外の石組さえしっかり出来れば、中に砂利や砂を詰め込めば何とかなりそうだな。簡単では無さそうだが、氏族への奉仕作業が多くなりそうだ。

 それも、この島に永住することを考えての事だから、誰も反対はしないだろう。


 前方の島までおよそ10kmだから、ザバンで動力船に運べば良いな。氏族の島には桟橋を使えるだろう。一輪車が欲しくなるぞ。


「桟橋に動力船を停めて、甲板から石を下ろせば良いんでしょうが、石運びは背負いカゴで行うんですか?」

「一輪車がある。木製の車が荷台の下についてるから、運ぶのが楽だぞ。2台購入したそうだ。だが、ザバンから動力船の甲板まで上げるのは骨だぞ」

「滑車がありますから大丈夫ですよ。丈夫な網があれば良いんですが……」


 滑車の話をすると、皆が俺の動力船の甲板の梁に付いている滑車を見上げた。

 納得したのか、うんうんと頷いているぞ。


「明日までに作らせよう。だいぶ楽になりそうだ。後は、丈夫な手袋を用意しとけよ。しばらくは石運びが続くからな」

「その代り、1日3食は氏族が用意してくれる。交代で作業を行うから、先ずは10日間だ。20日後にまた作業を10日やるからな」


「カイト。この船を使わしてくれ。俺とラディオス、それにラスティで石をザバンに運ぶ。嫁達3人でザバンで動力船まで運ぶから、滑車でそれを引き上げるのがカイト達4人で出来るだろう。父さん、桟橋からの石運びはこの島の連中に任せられるんだろう?」

「ああ、それで問題ない」


 バルテスさんの言葉にエラルドさんが答えてくれた。

 俺達の仕事は南の島との往復って事だな。滑車があるから簡単に持ち上げられるだろう。

 だが、ザバンの中に石を乗せても、簡単に積み替えが出来るだろうか?


「バルテスさん。ザバンの大きさは皆同じなんですよね?」

「ああ、そうだが……。何かあるのか?」


 それならと、紙に簡単な絵を描いた。ザバンを2艘並べて板で繋ぐのだ。

 ザバンの大きさは長さ5mで横幅が60cm程だ。連結すれば1.2mの横幅を持つ。

 石運びも1艘より多く運べるし、網に包むにしても転がすだけで良い。ザバンの船底だと持ち上げなくてはいけないし、それほど多くは積めないだろう。


「そういう事か。板とクギがあれば簡単だな。俺とラディオスのザバンで良いだろう。動力船で引いて行けば大丈夫だろう」

 

 そんな相談をして俺達は解散する。

 結構やることが多いな。滑車の具合を確認して、ロープを用意しておく。サリーネ達は厚手の手袋を準備しているようだ。俺は確か軍手があったな……。


 次の日。朝の水汲みを早めに行い、4人で浜辺に向かうと、すでに世話役達が食事を用意している。老人やおばさん連中の仕事って事なんだろう。

 ラディオスさん達が近くの浜で食事を取っていたので、俺達もご飯とスープを受け取って近くに座って朝食をとる。

 ようやく東が明るくなってるぐらいだが、出発する頃にはすっかり明るくなってるに違いない。

 

「これがロープで編んだ網だ。石を引き上げるならこれで十分だろうと言ってたぞ」

1.2m四方の網の目は5cm程も大きさだ。ロープの太さは親指程もあるから、確かに十分だろう。

「ありがとうございます。この中に石を転がせば滑車で甲板に引き上げられます」

 俺の答えに、ラディオスさんがにこりと笑う。嫁さん連中にやって貰う仕事だからな。ラディオスさん達だって無理はさせたくないだろう。


「なに、俺達だってありがたい話だ。3人で持ち上げるような事をオリー達が話てたからな。カイトがちゃんと考えてると教えてやったぞ」

「滑車があると便利にゃ。私達の動力船にも付けようって話してたにゃ」


 無いよりはあった方が良いだろうな。大物を引き上げるのにだって使えるしね。

 そんな事でシンプルだった動力船に、色んな物が増えていくんじゃないかな? ある程度は仕方がないにしても、その内、原点に帰ろうなんて運動が出て来るかも知れないな。俺は便利なように改造を進めようと思ってるけどね。


 バルテスさんとラスティさん達も集まって来た。早々と食事を終えた俺達はお茶をご馳走になりながら一服を楽しむ。

 次にやって来る時は石を満載して桟橋になるな。

 お茶を終えて、俺達は2隻の動力船に乗って南の島に向かった。10km程だから30分も掛からずに島に近付いた。南に回り込んで渚を探して錨を下ろす。

 バルテスさんが引いて来た2隻を横に並べたザバンと、俺のザバンに乗って島に向かう。サリーネ達は動力船に残って、おかずを釣ると言ってたな。それも重要な仕事には違いない。


 島はジャングルの規模も小さく、標高も低い。渚にたくさんの石が転がっているが、かなりゴツゴツした感じの石だ。氏族の島はやはり火山島だったに違いない。山腹を削ったように見えるのは噴火口の後なんだろう。その時の噴石がこの渚にたくさん転がっている石なんじゃないのかな? かなり重いし表面が融けたような跡まで残ってるぞ。


 軍手をした手で30cm程の大きさの石をどんどんザバンの上に張った板の上に乗せていく。

「これ位で良いんじゃないか? カイトを送りながら動力船に運んでくれ」

バルテスさんがケルマさんに頼んでいる。20個ぐらい乗せた石をとりあえず動力船に運ぶことになった。パドル3本で動力船まで漕いで行き、動力船の甲板の直ぐ脇にザバンを停める。滑車でロープを結んだ網を下ろして、動力船の3人が上で引くと簡単に甲板に移動することが出来る。

 網の中に転がすだけだからケルマさん達にも簡単に出来るだろう。途中から動力船に上がって、甲板に取り込むのを手伝う事にした。

 作業が終わると、ケルマさん達は帰っていく。

 次の石が運び込まれるまで、甲板に並べた石を動かないように寄せておく。後数回分は乗せることが出来るだろう。



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