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 どうも、軽肌和差です。

初投稿です。これからよろしくお願い致します。投稿が滞ってしまうこともあると思いますが、目を温めて、どうか温かい目で見守ってください。

 話には幾つかの職業が出てくるのですが、私はどれも経験したことがありません。想像で書いています。ご容赦ください。

 私は、しがないコンビニ店員だ。

店長ではない、店員だ。

アルバイトの店員だ。

兼業としてではない、本業としての店員だ。

学生でもない、店員だ。


 店員だ。


 題名から既に予想がついているだろうが、この小説(と言ってよいものかどうかわからないこれ)はコンビニに設置されている電子レンジで何かを温める物語となるだろう。私は作者でない以上これ以上のことは何も分からないということにされている。所謂「主人公補正」というものだろう。これがバトルマンガ等であるならば主人公は悪を滅するほどの凄まじい力をその「主人公補正」で手にいれることだろう。しかし、前述した通り私はコンビニの店員だ。もし私がそのような力を手にしてしまったら、器の小さい私のことだ、制御しきらずにキャッシュレジスターを跡形もなく破壊してしまうはずだ。コンビニの存在も危うい。つまり返せばコンビニの店員であるには何も必要ない、何も持っていてはならないのだ。しかし、主人公である以上何もないわけにはいかず、仕方なしにこの世界が小説の世界であることを敢えて教えてくれたのだろう。

 また、私には解説の能力も備わっているらしい。どうやら筆者は誰の思想でもないものを筆者自身が語ることを嫌っているようだ。お陰でその役は私に回ってきたのだが、私自身はこのような仕事が嫌いではない。生来の堅苦しさ故だろうか、それとも主人公という意識からだろうか、これから起こされることが楽しみで仕方ないのである。

 そもそも私の生い立ちは、――おっと、誰か来たようだ。時計の針は短い方が12寄りの1、長い方は8辺りを指している。

「今は――えーと、十二時四十分か。」

 ドアが開き、軽快な入店音が静かだった大部屋に響く。心地の悪い風が店内に溜まる。暑い。暑いというより熱い。全身の毛穴からマグマが噴き出しそうだ。

「いらっしゃいませ。」

声が低くなった。客にはいい影響を与えなかったらしく少ししかめっ面をされたような気がしたが、いかにもそんなことを気にしている暇は無いといったようにそそくさと棚の奥へ消えていってしまった。

 彼は見た目30代で、青い作業着を着ている。恐らく建築関係の仕事なのだろう。タオルを首もとに掛けてはいるものの、汗は流したままであった。見ているだけで暑い。そもそもコンビニのアルバイトの分際で涼しさを求めることが間違っているのかも知れないのだが。

 目の前が少し暗くなった。カウンターを挟んで背の高い彼が目前に立っている。暑い。やはり暑い。近くにいるだけで熱気が漂っている。彼の筋骨隆々な見た目も影響しているのだろうか。そんな彼が挟まれて一番暑いであろうカウンターの上に置いたものはピーチティーだった。

 ピーチティーはピーチティーである。あの500ミリリットルボトル詰めのピーチティー。私は背中こそ震えてしまったものの、彼には悟られずに済みそうである。それにしても可愛らしいものを飲むものだ。私も気が向けば飲むことはあるのだが、普段は細いからだにスーツ姿で行動している私である。周りにはどこぞの執事風に見えているのではないだろうか。それはないにしろ、明らかに高身長筋骨隆々の彼が飲むには可愛らしく見えるものである。

 いつになってもバーコードを読ませない私に何かを感じたのか、一度見たような顔をされ、私は焦りきってしまった。急がなければ。

 暑い。暑い。暑い。暑い。暑い。暑い。暑い。暑い。暑い。暑い。そんなことを考えていたのがいけなかったのだろう。何を思ったのか、私はこんなことを口走る――


 「温めますか?」


あっ、と思ったときには既に遅かった。

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