プロローグ
初投稿です。よろしくお願いします。
目の前には誰もいない廃墟となった建物ばかり立ち並ぶ空間が広がっている。
この場所は、この前までは活気に満ちた人々の往来の激しい街だった。
でももうそんな活気はどこにもない。
――――終焉の街
アイツらに侵された街はそのように呼ばれている。
終焉の街になってしまった所はもう二度と人が訪れることがない廃墟の群と成り果ててしまう。
自分はそんな街を幾つも見てきた。
時にはアイツらが残した残酷な爪痕が残ったままの街の姿も。
そう物思いにふけていると、不意に彼女の視界の隅に通信サインが浮かび上がった。
「見つけたの?」
『ああ。時計塔の右手にアイツらが居た。これから作戦に移る』
「わかった。私もすぐに向かうから」
通信を切るとすぐに、腕に巻き付けている電子機器を慣れた手つきで操作した。
突如身体中から噴き出した赤い光の粒子が渦巻くように彼女の両足に纏わり始める。
そんな不思議な現象にも、彼女は慣れた様子ですぐさま地面を蹴って宙に飛び上がった。
その高さおよそ100メートル以上。生身の人間には絶対に不可能な動きだ。
それを何でもないことのようにやってのけた彼女は、近くにある建物の屋根に飛び乗ると、すぐに次の跳躍に移る姿勢に入った。
垂直にではなく前方に飛ぶ姿勢。
彼女は数百メートルの距離を一気に飛ぶと、もう一度地面を蹴って目的の方向へ移動し始めた。
すぐに見えてきた時計塔に思いっきり最後の跳躍をして着地した彼女はすぐに標的を見つけた。
ゾンビのようにぞろぞろと武器を持った異形の者達の集団の中心で絶え間なく上がる黒い光の粒子は、仲間が今現在戦っているということだろう。
今回の彼女達の任務は、さっきから彼女がアイツらと呼んでいる憑依寄生生物【ヴァルキリア】の集団を殲滅することである。
静かに目を瞑ると戦闘前のいつものあの感覚が身体中に広がっていくような錯覚を覚えた。
瞳を開けた彼女の目は既に自分の標的に注がれていた。手には武器の銃がいつの間にか握られてある。
僅かに息を浅く吸い込むと、引き金を引くのと同時に彼女の口から零れるようにその言葉が紡ぎ出されていた。
「”紅の弾丸”」
――――銃口から放たれた一つの赤い弾は、残像を残しながら敵を5体貫いていた。
既に次の引き金を引き、真紅の髪をたなびかせながら彼女は呟いた。
「標的数残り81体。作戦完了まであと1分32秒」