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かにづくし

作者: 坂東太郎

さわがに さわがに しおまねき

蟹の甲羅は鉄のよう

蟹のはさみも鉄のよう

蟹のはさみで散髪できるか


行きつけの床屋の親爺が

蟹のはさみで散髪しながら

鼻歌まじりに歌いだす


祇園精舎の蟹の声 諸行無常の響きあり


何か違う 何か違う


ししやおへる蟹のごとし


また何か違う


朝、目を覚ますと大きな蟹になっていた

昨日のはさみの所為か

それともなにかの因果応報か


外に出てみる

好奇の目が肉をついばむ禿鷹のごとく蟹となった俺の身体に突き刺さる


怒号と悲鳴が入り混じる


行きつけの床屋の親爺が


蟹と聞いたら黙ってられねぇ


そう言って店を飛び出す


俺を見るなり親爺は

店のドアーに飾りたい

そう言って俺を連行した


店のドアーに飾られた

大きな蟹を一目見ようと

多くの人が詰めかける

好奇の目がまた突き刺さる


俺は蟹じゃない

俺は蟹じゃない

俺は蟹じゃない


そうしていくらか年を経て


いろんな蟹がいるけれど

俺は世界で一番

不幸な蟹だ


そう言って蟹は息絶えた


さわがに さわがに しおまねき

ニーチェ「蟹は死んだ」

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